本日は私のフェイバリット・ギタリスト、ケニー・バレルの記念すべき初リーダー作を取り上げます。デトロイト出身のバレルが盟友のトミー・フラナガンらとニューヨークにやって来たのが1956年初頭のこと。サド・ジョーンズの「デトロイト=ニューヨーク・ジャンクション」やサヴォイ盤「ジャズメン・デトロイト」への参加を経て、早くも5月29日にブルーノートにリーダー作を吹き込みます。この当たりの動きの速さはさすが慧眼で知られたアルフレッド・ライオンならではですね。参加メンバーはフラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)のデトロイトコンビに加え、ベテランのケニー・クラーク(ドラム)。さらにはキューバ出身のキャンディドがコンガ&ボンゴ奏者として参加しています。
アルバムはハロルド・アーレンの有名スタンダード”This Time The Dream's On Me”で幕を開けます。のっけからアクセル全開でスインギーなギターを聴かせるバレル。フラナガンの華麗なピアノソロを挟んでドラム&コンガがソロの応酬を繰り広げます。3曲目バレルのオリジナル”Takeela”もラテン調の軽快なナンバーで、ボンゴの野性的なリズムに乗せられてフラナガン→バレルが目の覚めるようなソロをリレーします。この2曲ではバレル、フラナガンだけでなくキャンディドが大活躍しますが、その路線を突き詰めたのが6曲目”Rhythmorama"。ここではリーダーのバレルが登場せず、何とキャンディドとケニー・クラークのデュオです。打楽器オンリーで6分間もズンドコチャカポコと演奏するのは当時としては(今でも?)かなり挑戦的ですが、こう言った音楽的冒険もブルーノートならではですね。とは言え、私はもちろんバレル入りの曲の方が好きです。上記の曲以外では美しいバラードの”Weaver Of Dreams"、ブラウン&ローチで有名な”Delilah"、バレルお得意のブルージーなギターが冴え渡る”Fugue 'N Blues""Blues For Skeeter"と充実の内容です。