モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)については過去に「淋しい女」や「シェリフ」を取り上げましたが、いずれも60年代以降の作品で、彼らの作品の中ではやや異色とも呼べる内容です。MJQの王道といえばジョン・ルイスの作り出す室内楽風の典雅なサウンドで、本作「フォンテッサ」はその代表作に挙げられます。録音年月日は1956年1月22日と2月14日。前年までプレスティッジに所属し、「ジャンゴ」や「コンコルド」を発表した彼らがアトランティック・レコードに移籍した第1弾にあたります。メンバーは今さら言うまでもないですが一応挙げておくと、ミルト・ジャクソン(ヴァイブ)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)です。
全7曲。うち1曲目”Versailles”と3曲目”Fontessa”がジョン・ルイスの作曲です。前者はクラシックの対位法を導入して作曲したと解説書に書かれていますが、難しくてよくわかりません。リズミカルで華やかな楽曲です。後者は4部構成から成る11分にも及ぶ組曲で、いかにもジョン・ルイスらしい室内楽的作品です。解説書では絶賛されていますが、正直あまり私の好みではありません。個人的にはミルト・ジャクソン自作の”Bluesology”やディジー・ガレスピーの"Woody 'n' You"のようなバップ・ナンバーの方が好きです。こういった曲ではミルトのソウル・フィーリングが抑えようもなく溢れ出て来るのがわかります。普段は抑え気味のジョン・ルイスのピアノもパピッシュです。残り3曲は歌モノスタンダードで"Angel Eyes""Over The Rainbow""Willow Weep For Me"といった定番曲を演奏します。中では"Angel Eyes"がブルージーなミルトのヴァイブとMJQ的典雅さが融合した好演です。