先日の「ライツ・アウト!」に続きジャッキー・マクリーンのアルバムをご紹介します。ただ、今回はむしろ"ジャッキーの友達"としてジャケットにも写っているビル・ハードマン(左マクリーン、右ハードマン)についてより詳しく書きたいと思います。ハードマンはトランぺッターとしては決してジャズの歴史に残るような大物ではありませんが、地味ながらもハードバップシーンに少なからず貢献しています。実はハードマンはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの第3代トランぺッターであり、1956年から1957年にかけて10枚を超える作品に参加しています。しかしながら、前任者がケニー・ドーハム(初代)、ドナルド・バード(2代目)、後任がリー・モーガン(4代目)、フレディ・ハバード(5代目)とビッグネーム揃いなため、彼の名前は完全に埋没してしまっています。ただ、その後1970年代に入っても再びジャズ・メッセンジャーズに参加するなど、ブレイキーからの評価は高かったようです。ジャズ・メッセンジャーズ以外だとマクリーンとは本作含め3作品で共演、他にハンク・モブレーやマル・ウォルドロン、ルー・ドナルドソンの作品にも顔を出しています。ただ、自己のリーダー作となるとこれと言った作品がない(一応サヴォイにリーダー作があるようですが廃盤のため入手困難)のも日陰の存在に甘んじた要因の一つでしょう。
本作「ジャッキーズ・パル」は1956年8月31日に吹き込まれたハードマンにとってのレコーディングデビュー作。メンバーはリーダーのマクリーン、ハードマンに加え、マル・ウォルドロン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)です。肝心のハードマンのトランペットですが、高らかに吹き鳴らすスタイルではなく、一音一音細かい音を積み重ねていくような独特のフレージングです。なのでリー・モーガンやドナルド・バードのような華やかさはありません。ただ、これがジャッキー・マクリーンのアルトと絶妙にマッチしています。マクリーンもテクニックで聴かせるタイプではなく、哀調を感じさせる独特のマクリーン節が持ち味。マル・ウォルドロンのピアノもきらびやかなタッチと程遠いですし、この3人が醸し出す独特のB級ジャズ感が本作の魅力でしょう。B級と言っても決して否定的な意味ではなく、高級中華に対する町中華的な良さと言えばわかっていただけるでしょうか?6曲中4曲がメンバーのオリジナルで、おススメはハードマン作の軽快バップ曲”Just For Marty”とマル・ウォルドロン作の"Dee's Dilemma"です。後者は2ヶ月後に「マルー1」でも演奏していますが、本作の方がややテンポ速めです。残りの2曲はチャーリー・パーカーの名曲”Steeplechase”とスタンダードの”It Could Happen To You”。前者はマクリーンのパーカー派としての面目躍如と言った曲。後者はマクリーン抜きのハードマンによるワンホーン演奏で、ほのぼのとした雰囲気のバラード演奏です。