本日はジョージ・ウォーリントンの「ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード」です。先日ご紹介した「ザ・ニューヨーク・シーン」、「ジャズ・アット・ホッチキス」の前年の1956年1月に収録されたもので、フロントラインは上記2作品と同じくドナルド・バード(トランペット)&フィル・ウッズ(アルト)。ベースにテディ・コティック、ドラムがアート・テイラーという布陣です。ただ、ジャケットを見るとトランペットを持ったバード以外は全員白人で、テイラーらしき人物は写っていません。解説書にはドラムはビル・ブラッドレーでは?と書かれていましたが、そんなドラマーは知らん!なので結局誰かわからないままです。ちなみにcarriage tradeとは直訳すれば馬車での取引、転じて上得意様とか富裕層とかいう意味らしいです。上得意様のためのジャズ、とは何のこっちゃ?ですが、内容はストレートなハードバップです。
全6曲。アルバムはダット・ダメロンの名曲"Our Delight"で幕を開けます。多くのジャズメンによって名演が残されているバップの古典ですが、本作のバージョンもその1つに数えられると言って良いでしょう。のっけからバードとウッズが絶好調のアドリブを繰り広げ、その後をウォーリントンが引き継ぎます。作品全体を通じてウォーリントンはどちらかというとバンドをまとめる役割に回っており、ソロの目立ち度ではバードとウッズの方が上です。とりわけ素晴らしいのがウッズ作の4曲目”Together We Wail"。ウッズとバードがスリリングなチェイスを繰り広げますが、とりわけウッズのソロが鳥肌の立つ素晴らしさで、さすが白人ながらパーカーの後継者と目されただけのことはあります。同じくウッズ作の6曲目”But George"もエンディングを飾るにふさわしい力強いハードパップです。3曲目”Foster Dulles"はフランク・フォスター作で、彼の名前と当時のアメリカ国務長官ジョン・フォスター・ダレスをかけたマイナー調のバップです。スタンダードは2曲。”Our Love Is Here To Stay"と”What's New”で前者はミディアムテンポ、後者はバラードで、特に後者がおススメです。前半の端正なウォーリントンのピアノソロの後、後半のウッズとバードのエモーショナルなプレイが素晴らしいです。