本日はフィル・ウッズをご紹介します。リーダー作を取り上げるのは本ブログで初めてですが、彼のことについては先日ご紹介したジョージ・ウォーリントン「ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード」等で取り上げています。白人でありながら、当時流行のクールサウンドには目もくれず、チャーリー・パーカー直系のバッパーとして名を馳せました。ウッズといえば必ず触れられるのが、彼の奥さんがパーカーの未亡人チャンだったということ(ただし後に離婚)。パーカーを尊敬するあまりなのか、単に女性の好みが一緒だったのかはわかりませんが、とにかくウッズとパーカーを結びつける一例として必ず紹介されるエピソードです。1957年7月に吹き込まれた本作「スガン」も全6曲中、自身のオリジナルが3曲、残りは全てパーカーの曲で、その傾倒ぶりが如実に表れています。
メンバーですが、テディ・コティック(ベース)、ニック・スタビュラス(ドラム)の2人はジョージ・ウォーリントンのグループで一緒だった面々。となるとトランペットにドナルド・バードあたりが入って来るのが自然な気がしますが、意表を突いてレイ・コープランドが起用されています。たまたまバードが都合悪かったのか、それとも何か意図があったのかはわかりません。コープランドはお世辞にもメジャーとは言えませんが、セロニアス・モンクの「モンクス・ミュージック」等に参加しているので熱心なジャズファンなら名前ぐらいは知っているはず。さらに注目すべきはピアノのレッド・ガーランド。当時マイルス・デイヴィス・クインテットのピアニストとして名を上げ、自身のリーダー作も続々と発表するなどスタープレイヤーとして活躍していたガーランドの参加は作品のクオリティを一段上げています。
演奏内容ですか、まずは3曲のパーカーナンバー"Au Privave""Steeplechase""Scrapple From The Apple"に触れないわけにはいきません。どの曲もウッズのアドリブは絶好調で、パーカーの後継者は俺だ!と言わんばかりです。一方、コープランドのトランペットは乾いた音色のややオールドスタイルな印象。ガーランドは華麗なピアノソロでセッションを盛り立てますが、得意のブロックコードは多用せずやや控え目な気も。ウッズのオリジナル曲もなかなか良いです。"Last Fling"はミディアムテンポの叙情的なナンバーでウッズはもちろんのこと中盤のガーランドのソロが見事。"Green Pines"は何となくスタンダードの"Like Someone In Love"に似た曲調。コープランドはここではミュートトランペットを吹いています。よくわからない謎のジャケット(荒野?)だけはいただけませんが、内容は上質のハードバップです。