ソニー・ロリンズはビバップ期から活躍するいわゆる”ジャズ・ジャイアンツ”の中で数少ない存命人物の1人です。御年93歳。最近はさすがに演奏活動は行っていないようですが、私がジャズを聴き始めた1990年代後半はまだバリバリ現役でした。そんな息の長い活動歴を誇るロリンズですが、全盛期は1950年代中盤というのは衆目の一致するところでしょう。特に1956年は彼のキャリアの中でも最も充実していた年と言ってよく、リーダー作としてはプレスティッジに「ソニー・ロリンズ・プラス4」「テナー・マッドネス」「サキソフォン・コロッサス」、サイドメンとしてもブラウン&ローチ・クインテットの「アット・ベイズン・ストリート」、セロニアス・モンク「ブリリアント・コーナーズ」とジャズ史に残る演奏を次々と残しています。その締めくくりとして1956年12月16日に吹き込んだのがブルーノート移籍第1弾である本作「ソニー・ロリンズVol.1」です。ロリンズにしては珍しいトランペット入りのクインテット編成で、メンバーはドナルド・バード(トランペット)、ウィントン・ケリー(ピアノ)、ジーン・ラミー(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)です。
全5曲、うちバラード”How Are Things In Glocca Morra”を除いて全てロリンズのオリジナルです。全体的にこれぞブルーノート・ジャズといった感じのマイナーキーのナンバーが揃っています。後世に残るような名曲は正直ありませんが、どの曲もロリンズの男性的で太い音色のテナー、力強いバードのトランペット、いつもながらのケリーの名人芸により、聴き応えのある内容になっています。マックス・ローチもラストの”Sonnysphere”でロリンズと2分半にも及ぶスリリングな掛け合いを聴かせくれます。個人的イチ押しは気だるいテーマで始まる1曲目”Decision”。レイジーな雰囲気が"大人のジャズ"って感じですよね。唯一のスタンダード”How Are Things In Glocca Morra"がまた素晴らしく、ロリンズのダンディズム溢れるテナーの音色とケリーのロマンチックなピアノに聴き惚れるばかりです。ブルーノートが誇るリード・マイルスのジャケット・デザインも最高にかっこいいですね。