Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

デイジー

2006-06-20 | 映画(た行)

■「デイジー/Daisy」(2006年・韓国)

監督=アンドリュー・ラウ
主演=チョン・ジヒョン チョン・ウソン イ・ソンジェ

 良質な韓国映画の面白さは脚本だと思うのだ。伏線が緻密に張られ、それを物語として構成する手腕には観る度に驚かされる。「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督が手がけたこの「デイジー」の脚本にもそれは言える。本作は3人の主人公それぞれの視点が見事に絡み合って、ひとつの物語が深みを増していく。ミステリーではないのに謎解きが待っている。

 恋愛映画に欠かせないのはサスペンスだと、僕は常に思っている。心の動きというハラハラ、ドキドキ。そして切なさを募らせる重要な要素は”距離感”だ。「デイジー」が見事なのはその両方を満たしていること。ヒロインと彼女を遠くから見守り続ける殺し屋、声を失ったヒロインが思いを伝えられずにいること、彼女に愛される刑事は待ち人の代役でしかないこと、真実を明かさずにいること・・・彼らの思いは何かによって阻まれ、触れたくとも触れられずにいる。

 この映画はラブストーリーだけでなく、犯罪映画としての顔も持つ。香港から起用されたアンドリュー・ラウ監督の演出はそれらをスリリングにミックスしていく。銃撃戦の激しさは、まさしく香港製犯罪映画だ。こっちがお好きな人には、途中男達がやたらメソメソしているのをじれったく感ずるだろう。確かにこのあたりを整理すれば、もう少し上映時間も短くすっきりできた気がする。でもどちらかに徹するのではなく、二つの要素が絡むから映画として面白い。それにクァク・ジェヨン監督は絶対にジョン・ウーが好きだ。彼の監督作で画面に鳩が飛ぶ度に、僕はそう思ってきた。「デイジー」では、事件を通じてヒロインが声を失い、男達はそれを自分のせいだと悩み続ける。これって「狼/男たちの挽歌 最終章」じゃないのか?。ともかく「デイジー」はクァク・ジェヨンとアンドリュー・ラウの見事なコラボレーションなのだ。

 チョン・ジヒョンが落ち着いた演技を見せてこれまでとは違った魅力を発揮している。台詞なしに感情を表現する難役でもあるのだが、これまで彼女が演じてきた”強い女”(笑)とは違うだけに力演だ。僕は台所で立ちつくす場面の彼女の横顔が忘れられない。オランダの町並みや風景が実に美しい。そこに流れる梅林茂のスコアがこれまた美しい。



実は男二人で観に行ったのです、「デイジー」(汗)。劇場内はカップルだらけではないか?と思って、ハラハラしておりました。実際は老若そろった女性客だらけでありまして、それ程居心地の悪さはありませんでした。よかった、よかった。

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コメント (5)
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