■「ブーリン家の姉妹/The Other Boleyn Girl」(2008年・イギリス=アメリカ)
監督=ジャスティン・チャドウィック
主演=ナタリー・ポートマン スカーレット・ヨハンソン エリック・バナ
歴史を話題にするとき、イギリスのテューダー朝はドラマティックなエピソードがたくさんあり、好きな時代だ。特にヘンリー8世の女性関係をめぐるあたりは、男としてもたいへん興味がある。最初の妃キャサリンと離婚する為にローマカトリックから離脱すると教科書的には教わるし、僕はプログレッシブロックの名盤「ヘンリー8世と6人の妻」を愛聴しているのでなおさら。
この映画は、最初の妃キャサリンとの間に世継ぎが生まれないので、悩んでいる国王の状況を見て、娘を使ってブーリン家がのし上がろうとする様が描かれる。長女アンを王に近づけようとするが、王が気にいったのは妹のメアリだった。さらに他の貴族も娘を近づける。姉妹の愛憎劇を軸にドラマは「大奥」みたいな展開を見せていく。
この物語で思うのは、政治の為に個人の幸福が踏みにじられていくことの悲しさ。ひたすら耐える女メアリを、現実では派手な噂の絶えないスカーレット・ヨハンソンが演ずるのも面白い。一方で実際に2人目の王妃となるアンは、知的なしたたかな女性として描かれる。結局野心故に破滅していく、言うなれば王を手玉にとった悪女だ。王に離婚をせまるようなことがあったか、史実がこの映画通りなのかはわからないが、男子を産めなかった後からの悲劇の展開は彼女自身の招いたことではなく、あの時代の犠牲者と僕には思えた。姉妹の母親の台詞がその悲しみを端的に言い表していて強く印象に残る。
「メアリにも教養を授けました。でもそれは殿方を喜ばせる為のものではありません。」
ナタリー•ポートマンの演技は、自信に満ちた瞳で王を翻弄する前半と、妃となってからの不安に狂いそうになる後半の対比が見事。「宮廷画家ゴヤは見た」も素晴らしかったが、こちらも熱演。ところで王妃キャサリンはスペインから嫁いできた王よりも年上女性。スペイン映画の名作「ミツバチのささやき」のアナ•トレントが演じているのも、映画ファンには嬉しい。
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