■「おっぱいバレー」(2009年・日本)
監督=羽住英一郎
主演=綾瀬はるか 青木崇高 仲村トオル
僕が住んでいる北九州市は数々の映画ロケ地として知られる都市になってきた。昨年の夏頃、「綾瀬はるかが撮影に来てるーっ!」と地元ではけっこうな盛り上がりだった。商店街のおばちゃん達も「こんど、「おっぱいバレー」に出るんでぇ」と言ってたっけ。ご当地映画は嬉しいことだが、地元民にとっては映画を観ていてストーリーに集中できない弊害もある。背景が気になって仕方ない。でもそれ故に、地元愛になーんか目覚めてしまうこともある。映画の力って素敵だ。「おっぱいバレー」は北九州の中でも昭和を感じさせる風景をよく選んでるよなぁ・・・と感心する。70年代末という舞台設定は、僕も中学生の時分なので思いっきり感情移入できてしまう。ピンクレディーの「渚のシンドバッド」やら甲斐バンドの「HERO」、挿入歌があの頃の曲ばっかりだし。エロ本隠してるプラモの箱がF1の6輪タイレルだったり、部室に張られてるポスターが榊原郁恵だったり、ディティールまで懐かしさでいっぱい。
綾瀬はるか扮する新任の美香子先生は、バカ部とののしられる男子バレー部の顧問を任される。性にしか興味がない中坊たちの生態。オレはあそこまでやらなかった、と何故か自己反省しつつ(汗)、銀幕を見つめる自分に気づく。あ、それはさておき。美香子先生は、次の公式試合に勝ったらおっぱいを見せると約束させられてしまう。
ガキに振り回される大人を描いたコメディとこの映画は誤解されているように思う。そう、僕ら世代で言う「グローイングアップ」シリーズ(懐!)のようなイメージで。だけどこの映画には、主人公たる新任教師が成長する姿がきちんと描かれている。学生時代にしでかした失敗。その時に出会った原田先生の言葉で、教師の道を選ぶ美香子。そして前任校での失敗・・・。ここの美香子自身が抱えるトラウマがドラマを深くしている。自分が受けた指導の裏にあった恩師の思いを知る重要な場面。恩師が彼女に読ませた高村光太郎の「道程」。それが彼女の運命を大きく変えることになる。
原田先生の奥様から「今度はあなたが生徒を導いてあげたらいいじゃない。」と言われて、試合会場に走る。このあたりから僕の涙腺はそろそろヤバくなってきた。試合場面の挿入歌に永井龍雲の「道標(しるべ)ない旅」が流れるのだが、ここがたまらなく泣かせてくれる。
♪青春を旅する若者よ/君が歩けばそこに必ず道はできる
♪青春を旅する若者よ/君が歩けばそこに必ず道はできる
「道程」との見事な見事な呼応。そうくるとは思わなかったから感動しました。マジで。美香子先生は、間違いなく彼らを導いている。うん。ラストシーンの「微笑みがえし」と、エンドロールの「個人授業」(持田香織×田島貴男)がまた素敵!。バカができるのはあの年頃だからだもん。先生を見送る少年達を見て、何故か嬉しくなったのでした。はい。