Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

幸せへのキセキ

2012-06-03 | 映画(さ行)

■「幸せへのキセキ/We Bought A Zoo」(2011年・アメリカ)

監督=キャメロン・クロウ
主演=マット・デイモン スカーレット・ヨハンソン トーマス・ヘイデン・チャーチ パトリック・フュジット

キャメロン・クロウ監督は大好きな監督。どこかビリー・ワイルダー監督を思わせる優しい作風、センスのよい音楽の使い方。新作の「幸せへのキセキ」は実話を基にした家族再生の物語。単なるお涙頂戴の話ならキャメロン・クロウでなくてもいいはず。どんな映画になるのだろうと期待と不安が交錯する気持ちを抱えて劇場へ足を運んだ。突撃取材で人気を博してきたジャーナリストであるベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は、最愛の妻を亡くしてしまう。二人の子供とともに心機一転出直そうと、郊外の一軒家を購入する。その家は閉園中の動物園の中にあり、購入の条件は動物園を経営すること。飼育員たちはド素人のベンジャミンをいつまで続くかわからないと心配し、ベンジャミンの兄(トーマス・ヘイデン・チャーチ)も無謀だと反対する。飼育員のケリー(スカーレット・ヨハンソン)は次第にベンジャミンの人柄に少しずつ信頼するようになっていく。だが、資金難や役所の検査など数々のハードルが控えていた。やがて彼の資金は底をつくのだが・・・。上っ面のストーリーだけ追えば、この映画は"奇跡"の成功実話の物語だ。だかこの映画で重要なのは、動物園開業というハッピーエンドな結末ではなくて、そこに至るプロセスなのだ。

実話の映画化ということで美談として描かれるのは仕方ない。そりゃ普通、ライターを辞めて動物園の経営に手を出したりはしないだろう。だが、この映画が訴えているのはそういう"奇跡"的な転職の成功ではない。これは家族再生の"軌跡"を描く物語。妻を失って自分も子供も自暴自棄になっている中、息子と父親がお互いを理解していく過程が描かれる。都会から田舎の動物園に引っ越したことを息子は満足してくれないし、父親の思いも理解しようとしない。一方で、現実から逃避して不気味なイラストばかり書くようなふさぎこんだ息子の気持ちを、父親も理解できていないのだった。二人がお互いの思いを叫び合う場面は実に生々しい。そして「ゴメン」と言えない二人が、死にかけている虎の檻の前で初めて他人の気持ちや意見を受け入れる素直さを示す場面はとても素敵だ。それらは、決して一般の僕らにとって手の届かない出来事ではない。だから共感することができる。

この映画の主人公ベンジャミンは、自分を見ているようでイライラするから息子にはキツく接してしまう反面、まだ幼い娘の話にはきちんと向き合っている。この時期の少年の心は微妙だ。自分自身もよくわからない苛立ちを感じていたし、それを親に告げようなどとは決して思わなかった。そんな僕自身も今は二人の子を持つ父親。あの頃実は話を聞いて欲しかったという気持ちと、今子供の話に向き合わないとと思う気持ちが、この映画を観ていて心に湧いてくる。ベンジャミンが「20秒だけ恥をかく勇気をもて。」と息子にアドバイスする台詞がよかった。それは彼自身の信条であり、受け継がれてきた言葉だとわかるラスト。そして息子はその言葉通りに、リリー(エル・ファニング)に思いを告げる。雨が降る中、窓越しに抱き合う場面はなーんか素敵だ。窓越しに思いを告げるなんて、まるでビリー・ワイルダーの「昼下がりの情事」のラストシーンみたい。さすがキャメロン・クロウ監督。そしてベンジャミンの懸命な姿を見てきたケリーの気持ちにも変化が・・・。ちょっと太ったマット・デイモン演ずる主人公が賭ける人生の冒険に、最初は「無謀」と思いながら観ていたのだが、彼の頑張りを周囲がだんだん理解していく"軌跡"が観ていて実に気持ちよい。こんな後味がよい映画は久しぶり。感動作だからと敬遠しないで、世のお父さんたちにこそ、この映画を観て欲しいと思うのだ。

幸せへのキセキ
↑キャメロン・クロウ監督作はサントラも魅力。音楽はアイスランド出身のロックバンド、シガー・ロスのフロントマンであるヨンシーが手がけた。

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コメント (2)
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