■「少林サッカー/Shorin Soccer(少林足球)」(2001年・香港)
●2002年香港電影金像奨 作品賞・監督賞・主演男優賞
助演男優賞・音響効果賞・視覚効果賞・傑出青年監督賞
監督=チャウ・シンチー(周星馳)
主演=チャウ・シンチー ン・マンタ ヴィッキー・チャオ
「アメリカが生んだオリジナルの文化はジャズとウエスタン映画だ」とはクリント・イーストウッドのお言葉。イーストウッドは、今のハリウッドではやや”ダサい”そうした伝統にこだわり続けている数少ない映画作家である。香港映画にとってのオリジナルとは、やはり功夫映画・武侠映画なんだと思う。でも今の香港映画界では、功夫映画など製作されない。ドンパチやるよなアクション映画か恋愛映画やっているかだ。中国武術は”ダサい”過去のものなのかもしれない。一方で皮肉なことに、そんな功夫アクションにハリウッドが夢中になっている。「少林サッカー」はそんな状況に喝!を入れる映画だ。伝統を異質な形ではあれリスペクトを込めて、徹底したエンターテイメントにしている偉大な映画だ。香港で熱狂的に受け入れられたのも納得がいく。
タイトル前のおふざけ(地球・坊主頭・サッカーボール)や、ウッ!ハッ!とか聞こえる躍動的な音楽と少林アニメのオープニングから、もうわくわくしてくる。映像表現はVFXをふんだんに盛り込んで、ほとんど「マトリックス」。監督は日本のコミック(ことに「キャプテン翼」!)が好きな人だそうで、”燃ゆる瞳”なんかマジでやっちゃってバカだよなーと思うけど、ベタなギャグはこれだけでは止まらない。その辺はここで読むよりご覧いただくとして。まぁあるがままに楽しむが勝ち。”少林拳最高!”いやー楽しかった。
サッカー場面もよいのだけれど、饅頭屋の前で、主人公がヴィッキー・チャオに歌うことから、周りの人々が「僕は作曲家になりたかったんです!」(この少年は一度観たら忘れられない!)とか「俺はダンサーになりたかった!」とか秘めた情熱に火をつけられる場面が好きだ。少林仲間もそうなっていくのだが、きっと観客にも火をつけたのではなかろうか。これを観てアメリカ人たちがどういうリアクションしたのか興味あるところだ。
(2002年筆)
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