■「ロボコップ/Robocop」(2014年・アメリカ)
監督=ジョゼ・パヂーリャ
主演=ジョエル・キナマン ゲイリー・オールドマン マイケル・キートン サミュエル・L・ジャクソン
僕はポール・バーホーベン監督のオリジナルに思い入れがある世代。メディアや社会を風刺したクールで、しかも暴力描写満載の奔放な作風は僕らを釘付けにしたものだ。このリメイク版新「ロボコップ」のビジュアルが解禁されたとき、正直なところ「え~?」と思った。だって黒くなってスリムになって、まるでバットマンじゃねえか。アクションは派手になるんだろうけど、オリジナルへのリスペクトが感じられるような映画になってるんだろうか。
映画冒頭、サミュエル・L・ジャクソンがキャスターを務めるテレビ番組が、ロボットによる治安維持を肯定する偏った世論を訴える。映し出されるのは、世界の警察を気取るアメリカが世界各地の政情不安な地域で治安維持目的で投入したロボットの姿。どう見ても現地の人々に畏怖の対象となっているが、それを成果と伝える番組。機械に裁きが下せるか、犯罪が減ることを優先するのか、世論を二分する中、ロボットを開発販売する企業オムニコープ社は世間に愛される製品を出すべく、人間の思考とロボットの行動力を併せ持つものを目指していた。その矢先、ある事件を追っていた警官アレックスは自動車に仕掛けられた爆弾により愛する家族の前で瀕死の重傷を負う。オムニコープ社は遺族の承諾をとりつけ、アレックスをロボコップとして甦らせる。華々しいデビューを飾ったアレックス=ロボコップだが、その裏で犯人逮捕の成果を優先させるためアレックスの人間としての意志は抑え込まれていた。夫を取り戻そうとする妻、体面を保とうとするオムニ社、彼を守ろうとする科学者、そして次第に人間味を取り戻していくアレックス。彼が自分が襲われた事件の捜査に着手したことから、事態は大きく動き出す。
ストーリーの基本はオリジナルをほぼ同様に追っている本作。「お前はクビだ!」のひと言で逮捕可能になるラストのオチが好きだったが、そこは異なる展開が待っている。オリジナルと大きく異なるのは家族愛の要素が加わっているところと、最新のSFX技術であの鋼鉄の体の下がどうなっているのかを明確に見せたところだ。脳手術をする場面なども出てくるので、グロいと感じる人もいるかもしれない。ともかく、いかにしてロボコップが造りあげられたのかを物語のメインに据えている。ロボットと比較した反応速度の遅れをカバーするために、バトルモードに入ったらアレックスの意識をシステムがコントロールするとか、ドーパミンの分泌をコントロールしたりする場面に、ノートン博士(ゲイリー・オールドマン、久々にいい役!)の葛藤が描かれるのも興味深い。右手だけは生身のまま、というところが最後に家族を抱きしめる場面に生きてていいですな。何はともあれ、オリジナル程の残虐描写もなく、万人受けするアクション映画として生まれ変わった「ロボコップ」だと言えるだろう。
銀幕のこっち側では、世界各地の紛争地帯でロボット兵器が使用され始めている。それは紛れもない現実だ。アメリカ兵の被害を出さずに、現地の治安を維持できて問題を排除できる(解決ではない)。この映画でも、海外の紛争地ではそれを押しつけながら、様々な危惧があるからこそ自国では導入しない(できない)状況が描かれる。無人偵察機が飛び交うようなこのご時世で、「ロボコップ」がリメイクされたことにどういう意図があるのだろう。少なくとも映画のラストでキャスターが口汚く叫ぶような「米国万歳」的世論に立っているのではないことを望むのだが。