■「ビッグ・フィッシュ/Big Fish」(2003年・アメリカ)
監督=ティム・バートン
主演=ユアン・マクレガー アルバート・フィニー ヘレナ・ボナム・カーター
ティム・バートンの最高傑作だと?。そこまでは思わないけど、従来のバートンファンだけでなく一般の方々にも十分受け入れられる秀作となっているのは確かだ。異形のものへの愛情がバートン映画の特徴だった。本作にはそうした要素はやたらたくさん出てくる。身長5メートルの大男、シャム双生児の女性シンガー、湖のほとりに住む魔女・・・しかしこの映画はそこに終わらない。この映画を観た後、最も心に残るのは父子の愛情なのね。そんなバートン映画は今まで1本も存在しなかった。父親が自分の結婚式の日にホラ話で主役を食ってしまって以来、まともに口もきかない間柄になった父と子。父親の死が迫ったことで、息子は次第に父親の真の姿を知り和解に至るのだ。
魅力的な父親役は「トム・ジョーンズの華麗な冒険」のアルバート・フィニー。「エド・ウッド」のマーチン・ランドーもそうだけど、ティム・バートンはベテラン俳優を上手に使う。「トラフィック」のときはパンフに一行も触れられないひどい扱いを受けたアルバート・フィニーだが、やはり名優だった。子供の心を忘れないユーモアある父親を見て、自分ももっと父親と語るべきなのかな、自分も父親としてこれからも息子ともっともっといろんな話がしたいな・・・そう思わずにはいられなかった。子供が聞く父親の話って、どうしても大きくとらえがちだと思う。カッコつけるつもりはなくても、父親も多少誇張した話はするだろうし、子供もいいところしか覚えていない。だから話はますます大きくなる。おまけにこの映画の父親はホラ男爵とまでは言わないにしても、お話が上手な人だ。「親父の話は嘘ばかりだ。僕は本当の親父がわからない。」と息子は言うけど、そんな父親をやはり愛しているんだよね。
それにしても全編に漂う幸福感は何だ。いままでのバートン映画にあった孤独感やダークな雰囲気は微塵も感じさせない。加藤登紀子の歌みたいに一夜にして家の前をお花畑にしてしまうエピソードしにても、感動的なラストにしても、愛し愛されるって素敵だな・・・という気分に酔わせてくれる映画だ。僕が一番涙腺がゆるんだのは、妻ジェシカ・ラングとアルバート・フィニーがバスタブで抱き合う場面。どの世代の観客にもグッとくる場面が用意されている。日常を忘れたくば観るべし。
(2004年筆)
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