■「ジュラシック・ワールド 炎の王国/Jurassic World: Fallen Kingdom」(2018年・アメリカ)
監督=フアン・アントニオ・バヨナ
主演=クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード ジェフ・ゴールドブラム
※注意:ネタバレあります!
前作「ジュラシック・ワールド」で新種のハイブリッド恐竜が登場した。
ドラマ部分はなーんか薄味だったし、それなりに楽しくても、もはや恐竜映画ではない。
理屈抜きの見世物にしか思えなかった。
人間のエゴの醜さは語られていても、
そもそもマイケル・クライトンの原作がもっていたテクノロジーへの警鐘は失われている印象しか持てなかった。
そして新作「ジュラシック・ワールド炎の王国」、僕は前作よりもちょっと好き。
それは前作よりもテーマを深く掘り下げられていたからだ。
前半の人間のエゴで創り出された命が見捨てられていく悲劇的な展開が描かれている。
イスラ・ヌブラル島の火山活動で、パークの恐竜たちに危機が訪れる。
そもそも蘇らせたことが誤りだから、そこで絶えてしまえば良いという意見と、
絶滅危惧種と同様に命を救うべきとする意見の対立が描かれる。
溶岩流が島を覆い尽くす中、大型草食竜の姿が炎と煙の中で消えていくシーンは涙を誘う。
正直なところ、映画はその脱出劇で終わると思っていた。
映画後半は恐竜たちを兵器や商品として利用しようとする悪事を阻む物語が展開される。
新たに産み出された破壊の化身の様なハイブリッド種を中心に、
ホラー映画に近い緊迫感で観客を巻き込んでくる。
お子様にとってはきっとトラウマ映画となりうるレベルの恐怖感。
さらに物語はいろんな要素をぶち込んでくる。
ロックウッド財団設立者の孫娘をめぐる出生の秘密、
そして野に放たれた恐竜たちと人類が共生しなければならなくなる未来を示した結末。
知能の高いラプトル"ブルー"が主人公たちについていかなかったラスト。
いろんなSF映画を観た映画ファンなら、過去の様々な映画と通ずるテーマを感じるのではなかろうか。
丘の上から街を見下ろすブルーの姿に、続編は「猿の惑星」になっちゃう?と思った方は多かったのでは。
僕は往年のホラー映画「フランケンシュタイン」を思った。
創った者に裏切られた創られし者の悲しみ。
テクノロジーで現代に蘇ってきた恐竜をそこに重ねた。
それは原作者マイケル・クライトンが様々な作品で貫いてきた、
テクノロジーへの警鐘というオリジナルのスピリットにも通じやしないか。
蛇足ながら。
邦題「炎の王国」は火山噴火からの脱出劇があって付けたタイトルなんだろうが、
「Fallen Kingdom」(堕ちた王国)はロックウッド財団のことも示している。
うまい表現はできないものだろか。
息を潜めよ!映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』予告編