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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

オルランド

2020-05-16 | 映画(あ行)

■ 「オルランド/Orland」(1992年・イギリス=ロシア=イタリア=フランス=オランダ)

監督=サリー・ポッター
主演=ティルダ・スウィントン シャーロット・バランドレイ ヒースコート・ウィリアムズ ロテール・ブリュートー

人間が本当に自由であるとはどういうことなのか。この映画はそれを考えさせてくれる。主人公は「決して老いてはならない」という遺言を受け、時空を超え、16世紀から20世紀まで生き続け、男でもあり女でもある。数々のエピソードを通じて、主人公オルランドは僕らに、人がものを考え行動する上で、それを束縛する様々なものを時代背景と共に見せてくれる。

ロシア特使の娘サーシャとの恋では民族と身分。その恋に破れた後、イギリス大使として訪れたオリエントでは、国(または人が属する何らかのソサエティ)の対立が引き起こす人間性の喪失。そして女性となったオルランドが、社交界で経験する性差別。「ただの言葉遊び」と言いながら結婚しない女性を見下す男たちの醜さ。男子を産まないと相続できない社会。やがて愛を知ったオルランド。しかしその男性についていく生き方を選ばずに、彼の子供を抱いて戦場をさまよう。

描かれるエピソードは、素直な感情や考えを縛る要素として語られる。そしてオルランドは波乱万丈の年月を経て、美しいひとりの人間としてラストシーンを迎える。

原作はヴァージニア・ウルフ。レズビアンだった彼女が恋人に宛てた、イギリスで最も美しい恋文と言われる小説だとか。生きて人を愛するのに男も女もない。時に中性的な魅力を発揮するティルダ・スウィントンの演技はもちろん素晴らしい。それだけでなくポッター監督はさらにちょっとした悪戯なを施した。遺言をするエリザベス1世役は男性が演じており、ラスト近くに声高らかに歌うと天使は、ゲイである歌手ジミー・ソマーヴィルを起用しているのだ。

映画冒頭の16世紀は、男性が女性的に振る舞うことを美としていたとも聞く。この映画が公開された頃までは、性的マイノリティに偏見も多かった時代。今の目線でこの映画を観ると、どう感じられるだろうか。

それにしてもこの映画がすごいのは、これだけのテーマと物語をわずか90分で描ききっていること。映画って長いなら長いなりのテーマと物語が必要だと思う。この映画を観て以来、僕はそのバランスが気になるようになった。

Orlando (1992) Theatrical Trailer


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