◾️「王様と私/The King And I」(1956年・アメリカ)
監督=ウォルター・ラング
主演=ユル・ブリナー デボラ・カー リタ・モレノ マーティン・ベンソン
シャム王家に教師として雇われた英国人女性が、封建制はびこる王政に新風を吹き込む姿を描くミュージカル映画の名作。名曲“Shall we dance“と共に、教養として知っておきたい映画の一つ。
閉鎖的な宮殿の生活しか知らない王やその子供たちに世界の姿を教え、ストウ夫人の「アンクルトムの小屋」を通じてヒューマニズムを語り、やがてそれは奴隷制が続いていた国に一石を投ずることになる。外国の使節に、シャム王国が野蛮な国でないことを示すために「アンクルトムの小屋」の劇を披露するシーンは印象的。
しかし「アンクル…」は黒人社会では「白人に従順な黒人」を指すこともあるし、そもそも白人女がアジア人にあれこれ教える話を白人至上主義だという批判もあるかもしれない。僕は、「王様と私」は純粋に民族を超えて人が理解しあえる姿が自然な姿として語られているように思えて、むしろ好感を抱いたけど、今の目線だと、ハリウッドクラシック映画に不快な思いをする人もいる。この映画もそんな一つになっちゃうのかな。
往年の派手なミュージカル映画とは違うが、華麗なセット、優雅な衣装も見どころ。ユル・ブリナーの力強いシャム王、気丈なヒロインを演ずるデボラ・カーも名演。
そもそもは「アンナとシャム王」という1946年の映画がオリジナルで、リチャード・ロジャースらの手にやってミュージカル化されたもの。こちらは後にジョディ・フォスター主演でリメイク。またミュージカルの舞台では、シャム王を渡辺謙が演じたこともありましたね。