◾️「劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 2. lost butterfly」(2019年・日本)
監督=須藤友徳
声の出演=杉山紀章 下屋則子 神谷浩史 植田佳奈
「Heaven's Feel」三部作の第2作。オリジナルのゲームにおける"桜ルート"は、最も過激である為、テレビシリーズではアニメ化はできないと聞いていた。その噂に違わぬ残酷描写、エロス、血飛沫に彩られた絶望的なストーリーが展開される。これが実写なら間違いなく「観ない」という選択をしそうな話だが、グロテスクな部分も単なる残酷描写を通り越して、独特の美学まで感じてしまうから目が離せない。されど、これは免疫がないとトラウマ級の作品だけに、青少年の視聴には十分なご配慮をお願いします。
今回特に目を引くのが水の表現。降りしきる雨の中で、それまで隠してきた思いをぶちまける桜。水たまりも踏みしめてまっすぐに進み、彼女を守る決心をする士郎。名場面だ。また、桜の涙は感情の高まりとともに溢れてくる。最も印象に残るのは、士郎と抱き合う真夜中の場面なのでは。一方で血の滴りや飛び散る様子、地面に染みて広がる場面も単なる色彩の変化ではなく、ドロッとした液体を間近で見ているかのような生々しさで迫ってくる。
それにしても第1作同様、次々とサーヴァントたちが倒れていく。12回蘇生する魔術をもつバーサーカーと、エクスカリバーの連打が可能になったセイバー・オルタの圧倒的迫力のバトルは、この映画のハイライトのひとつ。最後はもはや痛々しく感じてしまうのだが、そうしたバトルを経て追い込まれるのは士郎や凛たちだけではなく、観客である僕らもだ。どうしたらこの劣勢を覆せる?と思いながらも、ストーリーは次々に絶望的な展開を示してくる。こんな桜が観たかったというファンもいそうなメルヘンチックな場面が続いたかと思いきや、僕らはさらなるダークサイドに突き落とされる。あっ、あっ!ギルさま!えーっ!?
このラストシーンを突きつけられて、身体に染みつくようなAimerの歌声を聴かされて、シアターを後にする…。これを映画館で初めて観た人の感じたワクワクとモヤモヤの入り混じった気持ちは計り知れない。さらにコロナ禍で第3作の公開日は焦らされ続けた。結末、見届けたくなるよね。
劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 Ⅱ.lost butterfly 本予告 | 2019年1月12日(土)全国ロードショー