Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

クロエ

2024-03-05 | 映画(か行)


◾️「クロエ/Chloe」(2009年・アメリカ)

監督=アトム・エゴヤン
主演=ジュリアン・ムーア アマンダ・セイフライド リーアム・ニースン

フランス映画「恍惚」のハリウッドリメイク作品。なーるほどね。オリジナルではアッサリとしか描かれなかった娼婦の気持ちを、もっともっと深掘りした結果こうなりました!というお話。こういう脚色にした気持ちは分からんでもないのだが、そもそも映画の目的が違う。人間模様こそが主眼のオリジナルに対して、感情がエスカレートした先まで示さないと気が済まないハリウッドリメイク。

フランス映画「暗くなるまでこの恋を」をハリウッドリメイクした「ポワゾン」を思い出した。サスペンス/スリラーにしないと観客にウケないとでも思っているんだろうか。本作も「ポワゾン」も脱ぎっぷりの良さが話題の映画だし。うーむ。

比較して観ると、分かりやすさは断然リメイク版。会話劇に官能小説めいた言葉選びをすることで観客の想像力を掻き立てるオリジナルだったが、その想像を具体的に映像で見せてしまう。リーアム・ニースン演ずる夫がガラスに添えた手が小刻みに震える場面でエクスタシーを表現。クロエが話す情事の様子を聞いて、妻キャサリンが悶々としてしまうのはオリジナルと同じ。だけどジュリアン・ムーアがシャワー浴びながらハァハァ言う場面まで必要だろか。オリジナルを先に観たせいか、こっちは分かりやすさが先にあるので、ヒロインの心情を考える余裕を与えてくれない。

映画冒頭のクロエの台詞が全てを言い表している。言葉も相手を夢中にさせる手管の一つだと最初に示しているから、先が読みやすくなってしまった感もある。でもその台詞は、最後に「私はあなたの中で夢のように生き続ける。そうなったら消えてしまってもいい」と結ばれる。それは娼婦としての仕事について述べているのだが、忘れられたくないという人が誰もが持つ寂しさの現れでもある。それだけに、彼女が確かにいたことを無言で示すラストシーンが強く印象づけられる。オリジナルとは映画の幕切れが全く違うけれど、リメイク版はどよんとした余韻をしばらく引きずってしまいそうだ。





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