Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アイミタガイ

2024-11-10 | 映画(あ行)


◼️「アイミタガイ」(2024年・日本)

監督=草野翔吾
主演=黒木華 中村蒼 藤間爽子 西田尚美 田口トモロヲ

ー相身互い
今どきはなかなか耳にしなくなった言葉だ。同じ境遇にあるなら支え合うとか、お互い様とかそんな意味合い。自分がかけた優しさは巡り巡っていつか自分に返ってくる。

親友の叶海を突然の事故で失った主人公梓。叶海の両親。梓の恋人で間が悪くてどこか頼りない澄人。梓の祖母、ヘルパーの叔母、叔母が担当する高齢女性。叶海が生前にした行動がそれぞれの人を繋いでいく。伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」や「ラブ・アクチュアリー」みたいな、縁が縁を紡ぐような群像劇が好きな人には向いてる映画だと思う。

話題になる邦画は扱うテーマが重たい作品が多くて、正直なところ映画館に行くのをためらってしまうことが多かった。現実で起きてる問題から目を背ける気はないけど、映画館で辛い思いをしたくなくて。

この「アイミタガイ」について、善人しか出てこないとか、現実味がないとか言う感想を見かける。確かにそうかも。でも、劇中図書館に勤める叶海の父(田口トモロヲ)が「今はそういう話を信じたい」をポツリと(イケボで)言うように、僕もそんな気持ちだった。毎日のヘヴィなニュースや日常にちょっと疲れているんだろう。

だからパズルのピースが次々にはまっていくように、それまでに登場した場面が関連づけられていく様子がとにかく心地良くって。そこで祖母が言う「相身互い」という言葉の意味を噛み締めているヒロイン梓の表情がとてもいいのだ。「世間は狭いよね」で片付けちゃダメ。誰かの行いがあるから、その縁につながっているんだもの。

御年90オーバーの草笛光子が演ずる女性のピアノをめぐるエピソードが素敵だ。梓と叶海の過去につながるだけでなく、時報で流れる「新世界より」の影に隠れて、老婆が弾くピアノに込められた鎮魂の気持ち。この映画の草笛光子も忘れがたい存在になりそう。

エンドロールで黒木華が歌うとは聞いていたけど、予告編を見ていなかったから何を歌うのか知らなかった。そしたら「夜明けのマイウェイ」だったのだ。え?😳荒木一郎作のあの曲!?桃井かおり主演のドラマ「ちょっとマイウェイ」(79)の主題歌で、当時マセた中坊の僕は大好きな曲だったのだ。

悲しみをいくつか乗り越えてきました♪
だからもう私は大丈夫です♪

まさにこの映画のヒロインがいろんな人の思いに背中を押され、そして背中を支えてくれる信頼できる相手がいることを感じたラストに、この歌詞がジワーッとしみてくる。

エンドロールが流れる中で、他のお客さんが出ていって場内には僕だけになった。
だからもう私は大丈夫です♪
もう一緒に歌っちゃったよ😆♪
こんな晴れやかな気持ちでシアターを出られるとは思わなかった。



コメント
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