■「ムード・インディゴ うたかたの日々/L'Ecume Des Jours (Mood Indigo)」(2013年・フランス)
●2013年セザール賞 美術賞
監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ロマン・デュリス オドレイ・トトゥ ガド・エルマレ オマール・シー
世代を超えて読み継がれるボリス・ヴィアンの恋愛小説「日々の泡(うたかたの日々)」。僕はセルジュ・ゲンスブールの大ファンで、彼を見いだした重要人物としてボリス・ヴィアンを知った。ヴィアンの手掛けた音楽や小説などに触れる機会はなかったが、5年程前に「日々の泡」を初めて読んだ(こちら)。人気があるのがよーくわかった。前半は文章を追っていくにつれて、恋愛のワクワクする気持ちが伝わってくる。対してクロエが病に苦しむ後半は大事な人を失う切なさとコランの荒れていく気持ちが突き刺さってくる。
恋人たちが二人だけの世界に浸ってしまう様子を、"薔薇色の雲"に包まれると表現する。これを映画化ではどう表現するのだろう。そしてミシェル・ゴンドリー監督による映画化のニュースが知らされて、僕の期待はmaxに。ところが僕の居住地の映画館は上映されることはなく、結局DVDでの鑑賞となってしまった。残念。ゴンドリー監督の旧作には大好きな「エターナル・サンシャイン」がある。「恋愛睡眠のすすめ」などビジュアル面での表現に特徴ある作風だけに、今「日々の泡」を映画化するには最適な人選かもしれない。
予想通り「ムード・インディゴ」はあの小説独自の世界観を見事に映像化するのに成功していると言える。カクテルピアノやコランの部屋の数々の仕掛けにもワクワクするし、オドレイ・トトゥとロマン・デュリスのキャスティングは原作よりちょっと年齢高め?とも思えるけど申し分ないし、いい仕事をしてくれる。僕が気にしていた"薔薇色の雲"はクレーンで吊られた遊園地のゴンドラみたいな乗り物となって描かれた。なるほど、これはこれで十分ロマンティックじゃない。クロエが病に苦しむ後半は、映像から色彩が失われることでコランの失意が視覚からも伝わってくる。ただファンタジー色の強い作風を好むかどうかで、この映画への評価は分かれてしまうかもしれない。
この映画はボリス・ヴィアンの原作へのリスペクトがあってのもの。原作に描かれた、読んでいて気恥ずかしくなる程の恋する気持ちと、周りが見えなくなる程に二人の事しか考えられないわがままな気持ち。それをゴンドリー監督流のイマジネーションで描き出したものだ。そこを知って観るのと観ないのとで、ゴンドリー監督のこだわりに共感できないのではなかろうか。原作ファンの為に製作した映画とまで言うつもりはないが、ゴンドリー監督自身も原作ファンの一人として自分のイマジネーションを世に示したかったのだろう。それがそもそもファンタジー色が強い監督だけに、過剰に乙女チックに感じられた人には受け入れがたい映画だったかも。
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