Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

2023-10-12 | 映画(あ行)
◾️「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル/I, Tonya」(2017年・アメリカ)
 
監督=クレイグ・ギレスビー
主演=マーゴット・ロビー セバスチャン・スタン アリソン・ジャネイ マッケンナ・グレイス
 
オリンピックにも出場したフィギュアスケート選手、トーニャ・ハーディングの半生を描く物語。ライバル選手だったナンシー・ケリガン襲撃事件でその名を語られることがどうしても多いだけに、ダーティなイメージが映画を観る前からあった。おそらく多くの人も同じではないか。しかも、邦題はご親切なことに「史上最大のスキャンダル」とつけてくれている。アメリカ女子選手で初めてトリプルアクセルを成功させた偉業は知らなくても、少なくともなんか"やらかした人"という先入観を持った上でスクリーンに観客は向かうのだ。ところが全編観終わると、印象が変わる。"やらかした人"なんだけど、この2時間で彼女の不屈の姿勢を知ったら、映画のラストには何故かカッコよく見えるから不思議だ。邦題で植えられたネガティブな先入観がもたらした化学変化だ。
 
大好きな村主章枝選手が、スポンサーなしに現役にこだわり続けて親の貯金を出させたエピソードを語っていたけど、フィギュアスケートはお金のかかるスポーツ。恵まれた家庭の子供が多い中、ワーキングクラス出身のトーニャは度胸と高い身体能力を武器に手作りの衣装でリンクに立ち続ける。だから技術点は高いのだが、芸術点で劣る。「三回転が跳べるのに何故私は負けるのか」と、審判団を挑発するような抗議を続ける。しかも当時国際大会では歌詞付きの曲を使用するのは減点となっていたのだが、トーニャはZZトップのSleeping Bagをバックにリンクを駆け回る型破りな選手。平昌五輪で歌詞付き楽曲が解禁されたのは記憶に新しく、羽生結弦選手がプリンス殿下を使用したのだが、トーニャはその遥か前。イメージダウンのリスクはかなりのものだっただろうに。
 
映画は登場人物にインタビューする場面が挟まる、セミドキュメンタリー的な演出。映画冒頭からみんな持論を展開し続けるのだが、どれも身勝手な言い分でイラッとさせる。しかも本人の主張を裏付ける場面が続くかと思いきや、次の場面では正反対の行動になっていたりする面白さ。毒のある母親にしても、暴力夫とその友人にしても、かなりのクズばかりなのだが、その常識にとらわれない言動はもはや笑うしかない。事件の渦中にある娘を心配して家を訪れたはずの母のポケットにカセットレコーダーが入っていたのには、もう呆れるしかない。オリンピック前に「ロッキー」と同じトレーニングする場面には笑った。スケートから引退させられたその後のトーニャ。映画はボクシングのリングに立つ彼女を映し出す。パンチを喰らってダウンしたトーニャが、カメラ目線で不敵に笑うラストシーン。なんだ、この不思議なカッコよさ。
 
使用された音楽がいい。特に印象的なのは、ダイアーストレイツのRomeo and Juliet。暴力夫と友人が車の中で聴いていたのは、ローラ・ブラニガンのGloria。「フラッシュダンス」で主人公の友人がフィギュアスケートの試合で使ってたよね。



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悪魔が来りて笛を吹く(2018年・ドラマ版)

2023-10-11 | テレビ・アニメ


犬神家の一族」で吉岡秀隆の金田一耕助がちょっと気に入った。2018年の本作をタイミングよく再放送してくれたのは嬉しい限り。これ見逃していたし、原作も読んだことないし、西田敏行が金田一耕助を演じた映画版も観ていないのだ。恥ずかしながら、ストーリーに触れるのは今回が初めて。

うっわー…😨
こんな話だったのか。

華族制度が終わろうとしている頃。モンタージュ写真で残虐な事件の犯人とされた元子爵が自殺。何故死を選ばねばならなかったのか、娘が真相に迫ろうと金田一耕助に助けを求める。怪しげな人間関係から忌まわしい過去が見えてくる。

派手な殺害現場やトリックが出てくる訳ではない。確かに前半には密室殺人こそ出てくるけれど、それは一つのエピソードにすぎない。今起きている出来事を解き明かすだけでなく、過去にいったい何があったのかを紐解く謎解きが、本当のクライマックスになっている。他の作品とは違って犯人が解き明かされてからが見ものになっているのが面白い。

吉岡秀隆の金田一耕助を見るのは「犬神家」に続いて2回目。解決してから思い悩んだり、相手を気遣う優しさは好印象。倍賞美津子の大家さんがいい存在。

それにしても後味悪い。ラストの筒井真理子がめちゃくちゃ怖かった…😰。それだけうまい役者だと再認識。倉科カナのはすっぱな役柄、予想外によかった。
悪魔が来りて笛を吹く

悪魔が来りて笛を吹く

東京の元華族の屋敷を舞台にしたミステリー。過去6回にわたって映像化されたゴシック・ホラー・テイストあふれる人気作。銀座の宝石店で殺人事件が発生。容疑者とされた...

悪魔が来りて笛を吹く - NHK

 

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ヨコハマBJブルース

2023-10-09 | 映画(や行)

◼️「ヨコハマBJブルース」(1981年・日本)

監督=工藤栄一
主演=松田優作 辺見マリ 蟹江敬三 田中浩二 内田裕也

大学時代、軽音楽系のサークルに所属して、キーボードを担当していた。鍵盤弾き男子が少なかった時代だったからか、僕は先輩方のセッションに呼ばれることが多く、いろんな経験させてもらった。
😼「柳ジョージ好きだったよな」
🙄「あ、はい。」
😼「「時の流れに」演るから手伝え。カセット渡しとくから」
😀「あの曲いいっすよね。コピーしときまーす。緊張するな。」
😼「2曲目に入ってるやつも演るから。準備しとけな。」
2曲目は松田優作。YOKOHAMA HONKY TONK BLUESだった。

今思うと、どちらも大学生にはなかなか背伸びした選曲だと思う。けれど、あの頃3つ4つ歳上の先輩は、すっごく大人に見えたから、自分が中坊だった頃の大人の音楽を演奏するというだけでも妙にカッコよく見えたものだ。そこにまだ10代だった自分も加わるなんてさ。生意気だ。

YOKOHAMA HONKY TONK BLUESを劇中、松田優作が歌う映画があると後に知った。そりゃカッコいいに決まってるだろ。あれからウン十年。やっと観ることができた。

ブルースシンガーのBJは歌手だけじゃ食べていけないから、探偵の真似事めいた仕事をしている。行方不明の息子を探す依頼を受け、闇社会の"ファミリー"のボスに男娼として囲われていると知る。親友の刑事と会っている最中に刑事は狙撃される。刑事の妻はBJの元カノ。彼とコンビを組んでいた刑事から殺人の疑いをかけられたBJは、暴行混じりの取調べを受ける。やがて事態は麻薬がらみの事件に発展。BJは窮地に立たされる。

けっこう入り組んだ話なのだが、説明になりそうな台詞もない。無言の映像で結末を示す。しかしそれが不親切とは全く思えない。それは絵になるショットの連続と、全編に漂う気怠いムードが実に魅力的だから。クリエイションが演奏する音楽にかすれた優作のボーカル。友人刑事は内田裕也、店のカウンターで渋い顔してる宇崎竜童、ボスの用心棒安岡力也、殺し屋の蟹江敬三、紙を切らしたトイレで絶叫するボス財津一郎、眼鏡屋の殿山泰司まで印象的なキャラクターたち。男娼少年とBJの心の交流も心に残る。

あの曲が流れる場面。

C/E7/Am/C7
F/F♯dim/C/A/D7/G

指がコード進行覚えてた。
これを演ってた若造って、やっぱり生意気だよなぁ😅




コメント (2)
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沈黙の艦隊

2023-10-07 | 映画(た行)

◾️「沈黙の艦隊/The Silent Service」(2023年・日本)

監督=吉野耕平
主演=大沢たかお 玉木宏 ユースケ・サンタマリア 中村倫也 江口洋介

コミック原作ものは実写映画化が難しい。観る側にはビジュアル面である配役にもストーリー運びにも、原作の固定されたイメージがつきまとう。新規エピソードや独自のキャラクターを追加すれば、映画独自の試みを称されもするし、原作へのリスペクトがないと騒がれもする。一方で撮る側には、原作の絵がイメージとして付きまとうからショットが固定されたり、制約を受けたり。周知のこととして説明的な部分を省いてしまったり、原作愛が空回りしてしまったり。比べるものが明確だから、批判したい向きには格好の材料になる。人気作ほど難しい。

この原作が世の中で騒がれた頃を知ってる世代なら、なおさら思い入れがあるだろう。国会で話題になったこともあったよね。僕もその一人だ。だからどうしてもキャスティングから興味を持ってしまう。首相を演ずる笹野高史。これまた弱々しいキャラクターになっている。この後の大決断をする場面とかどうなっちゃうんだろ…😥。橋爪功演ずる参与のモゴモゴした喋りに字幕が欲しくなる。女性乗組員や大臣を配置してアップデートされているけれど、2023年目線だと、この事態に反応を示すのはアメリカだけではないだろう?とも考えてしまう。

そこは原作をリスペクトする撮る側の人々が信念を貫いた印象だ。この作品に触れることは、日本の国際的な立ち位置や国防のあり方について考える契機になるに違いない。原作はエンタメ要素とシリアスな政治的要素をバランスよく理詰めに描いている好例。原作を知らない若い世代にこそ観て欲しい。また、世の中会議で動いているんだ、と「シン・ゴジラ」級に思い知らせる話でもある。

緊張感が途切れず、没入感がある作風。聴覚に頼る操艦のスリリングさと、潜水艦の動きがいい配分で描かれるから、海江田艦長の操艦技術の高さをビジュアルで見せつけ、深町艦長が付け加えるひと言がいい解説になっている。こうした見せ方のうまさが光る。戦闘シーンを第一艦橋のシーンで終わらせた、悪しき宇宙戦艦の実写版とは天と地の差だ。暗くスピード感か希薄になりがちな海中シーンも、頑張っている印象。

それにしても。悲しいかな、原作が世に出てウン十年経つのに、現実世界では核をめぐる議論が当時とさほど変わっていない。そして本作の続編があるならば、"専守防衛"の現実が描かれることになる。どんな描写になるのか今から興味をそそられる。

大沢たかおが、一回くらい「フフフフッ♡」と王騎将軍みたいに笑わないかなと期待してしまった私💧Adoが歌うB'z作の主題歌よき。




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オーバー・ザ・トップ -80's Movie HIts !-

2023-10-06 | 80's Movie Hits !

◾️「オーバー・ザ・トップ/Over The Top」(1987年・アメリカ)

監督=メナヘム・ゴーラン
主演=シルベスター・スタローン デヴィッド・メンデンホール ロバート・ロジア スーザン・ブレイクリー

◾️In This Country/Robin Zander
◾️Winner Takes It All/Sammy Hager with Edward Van Halen

この映画が公開された頃、僕は硬派な映画ファンをきどった生意気な輩だったから、筋肉を見せつける派手な娯楽作はとにかく敬遠していた。結果として後追いで観ることになる。スタローンが嫌いだった訳じゃない。「ロッキー」も「ランボー」も繰り返し観てるし。じゃあなぜ本作をスルーしたかって、アームレスリングの映画と聞いて完全にナメてたからだ。帰還兵の大暴れでも捕虜奪還でもなく、刑事でも脱獄のプロでもない。リングの上の殴り合いでもない。腕相撲で2時間なんて無理だと思った。それからウン十年後。やっと観る気になった。

あの頃この映画を観てたら、その年頃のイキがった感想だったと思う。だが涙腺ユルめの父親目線で今観ると、なんか許せてしまうw。あれだけいろいろと無茶やってるのにそれでいいのか、とツッコミどころは確かに満載。だけど息子と父親の距離が縮んでいく様子がとにかく微笑ましくて。トレーラーを運転させてもらった息子が、生き生きとした表情に変わる場面とか、こっちまでニコニコしてしまう。自分も幼い頃、父親の職場でフォークリフトを動かさせてもらって、小回りが効く動きが楽しくなったことがあったっけ。
「簡単だろ?」
「何が?」
「笑うことがだよ」
この映画のへ理屈少年もやっぱり男の子なんだよな。

手紙を見つけて息子が翻意する展開はかなりベタだし、それでいて最後まで妻子を捨てた理由とやらをはっきり示してはくれない。義理の父はもはやギャングの親分だし、ほんとに幸せになれるの?と疑問だらけであるのだが、クライマックスのアームレスリング大会の場面は気づくとこっちまで力がこもる。あれ、ナメてたのに。手に汗握ってるのは更年期だから?るせー💢

後にF1番組で使われたIn This Countryはやっぱりいい曲だ。歌うのは、チープトリックのボーカル、ロビン・ザンダーである。

あれ?エンドクレジットでは、
Performed by Eddie Money
と表記されてるぞ😕❓。サントラのクレジットはチープトリックのロビン・ザンダー。大人の事情でもあるのかな。

そしてサミー・ヘイガーとエディ・ヴァン・ヘイレンがデジタルビートの上で暴れまくる名曲、Winner Takes It Allはやっぱり最高。当初エイジアのジョン・ウェットンでレコーディングしたが、プロデューサーがお気に召さなかったらしく、サミー・ヘイガーにオファーがあったのだそうである。この曲で観客をアゲまくって、決勝戦へ。なんて憎い使い方👍。







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オー!ゴッド

2023-10-04 | 映画(あ行)

◼️「オー!ゴッド/Oh ! God」(1977年・アメリカ)

監督=カール・ライナー
主演=ジョージ・バーンズ ジョン・デンバー テリー・ガー ラルフ・ベラミー

初めて映画館で観た一般の外国映画は何だろう🤔。記憶を辿ると、おそらく小学生の時。母親が連れて行ってくれた「モダンタイムス」のリバイバル、夏に「スターウォーズ」を観たはずだ。そして確か秋に「アバ・ザ・ムービー」。その二本立てだったのがコメディ映画「オー!ゴッド」だった。クラシック、ドキュメンタリー映画、当時誰もが観たSWを除いたら、初めて映画館で観たリアルタイムの一般的な外国製劇映画(死語?)は、「オー!ゴッド」ということになるのかな。

TSUTAYAが発掘良品でDVD化してくれたのをレンタルして、2023年9月に再鑑賞。1978年の公開後、テレビで一度観た記憶がある。

主人公はスーパーマーケットの主任ジェシー。ある日彼を呼び出す変なメモが届く。友人の悪戯に違いないと思ったが、捨てたはずのメモが何故か彼の前に蘇る。不思議に思った彼は指定された場所に行くと、存在しない階にある部屋でゴッドだと名乗る声から人間へのメッセージを届けるように頼まれる。そして半信半疑の彼の前にゴッドは小柄な老人の姿で現れた。新聞社に話を持ち込むが狂信者扱いされるが、神と話した男としてマスコミが取り上げ始め、やがて宗教界を巻き込む大騒動に発展する。

「カントリーロード」で有名なカントリー歌手、ジョン・デンバーが主演を務めたのは注目すべきところ。代表曲の中では「緑の風のアニー」が好き。本作以外で映画出演したのは観たことがないが、誠実そうなキャラクターが好印象。しかも得意の歌を封印して神に振り回される男を熱演している。監督は後にスティーブ・マーチンと組んで怪作コメディを連発するカール・ライナー。脇役だけど、ギリシア正教の宗教家でドナルド・プリーゼンスが登場。

ジョージ・バーンズ演ずる神様の言動の面白さでクスッと笑えて、画面に登場するだけでほっこりした気持ちにさせられる。
「Oh, God !」
「呼んだか?」
しかし、上司にクビを言い渡されたり、宗教家と訴訟になったり、トラブルがどんどん大きくなる主人公への同情が先に立って、心から笑えるコメディかと言われたらちょっと違うかも。だが、クライマックスの神が見せる小さな奇跡と言葉はなかなか胸に響く。
「争うことはやめなさい」
神様、プーチンに言ってやってくれませんかねぇ。

旦那の行動がエスカレートするのにオロオロしながらも、寄り添ってくれる妻を演ずるのはテリー・ガー。同年製作の「未知との遭遇」も同じような役柄というのも面白い。好きな女優さん。「トッツィー」もそうだけど、困った顔する彼女にキュンとしてしまう。あ、そっか。初めて観た一般外国映画に出てきた金髪美女が、小学生男子の心に刻まれてたのかも!😂




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アリス

2023-10-03 | 映画(あ行)

■「アリス/Alice」(1990年・アメリカ)

監督=ウディ・アレン
主演=ミア・ファロー ジョー・マンテーニャ ウィリアム・ハート アレック・ボールドウィン

 80年代のウディ・アレン作品は素敵な映画ばかりだけれど、なんか生真面目な印象がある。イングマル・ベルイマン調に物語を哲学的に掘り下げてみたり、お子様を主人公に懐古趣味に走ったり。そんなアレン先生が当時の奥様ミア・ファローを主役に撮ったのが「アリス」。都会で不自由なく暮らしてるお金もちの奥様が主人公。ある日背中に何とも言えない違和感を感じて、友人や夫がよいと勧めてくれる漢方医ヤン先生を訪れた。「心に問題がある」という先生が処方した薬は、控えめな彼女を大胆に変えてしまったり、透明人間体験をさせてくれたり。子供の学校で出会ったサックス奏者との恋、家庭、夫婦の問題をめぐる彼女の不思議な体験を描くコメディ。

 自分に自信がなくてカウンセリングに通う神経質な主人公といえば、アレン映画ではお馴染みのものでアレン先生自身が演じていることが多い。本作はその役割がミア・ファローに置き換わっている面白さ。医師に持論を早口でしゃべり続ける様子といい、相手を見ずに言い訳めいたことを言う様子といい、これはいつもならアレン自身が演じているもの。透明になる時間が切れてソファの陰に隠れる場面は、「SEXのすべて」に似た場面があったよなぁ・・と思えて実に楽しい。

 この映画は、いわばウディ・アレン版「不思議の国のアリス」。性をめぐる不思議の国に迷いこんだ人妻アリスが、様々な薬を使って冒険をする物語だ。ジョーと二人で透明になって街に繰り出す場面。アリスは友達の噂話を聞くのだけれど、ジョーは女性の試着室に忍び込むというのに大爆笑。男ってなんて情けない生き物(笑)。媚薬のエピソードはアレン映画らしいオチが楽しい。そして映画の最後、アリスは新しい人生を選択する。80年代のアレン映画ではミア・ファローに素敵なハッピーエンドは訪れなかった。うちひしがれた彼女は、映画館で笑顔を取り戻すくらい。「アリス」はその穴埋めであるかのような幸せな結末。でもこの映画はそうした成長物語的な結末であることが望ましいのだ。不思議の国から戻って来た少女アリスがちょっとだけ成長したように。



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お嬢さん探偵 ときめき連発!

2023-10-01 | 映画(あ行)

◼️「お嬢さん探偵 ときめき連発!」(1987年・日本)

監督=黒沢直輔
主演=西脇美智子 水島裕子 内藤剛志

80年代に"ボディビル界の百恵ちゃん"と呼ばれて人気のあった西脇美智子と、グラビアアイドル水島裕子を主役に据えたロマンポルノ作品。にっかつが続けてきたこの路線も末期の頃だから、誰を脱がせたって話題に注目が集まっていた時代。今と違ってセクシー路線も表現の場が少なかったから、演技は二の次で映画出演ということになっちゃうのかな。されど美形の西脇美智子は、ヌードばかりでなくプチアクションもこなすし、肝の据わったヒロインはなかなかいい。

帰郷やお見合いを拒否するために、大学院生の主人公が探偵事務所の看板を掲げる。冗談だから依頼を受けずに看板を外したのだが、失踪した女子大生を探して欲しいとの依頼が舞い込んできた。二人は探偵ごっこを始める。それは闇社会がからむ危険な事件だった。ヒロイン危うし!。ストーリーもそれなりに面白い。

脚本を担当したのは柏原寛司。この後「あぶない刑事」シリーズで大活躍することになる。本作は75分で、劇場映画としては短い尺。にっかつ作品お約束の見せ場も押さえた上で、サスペンスドラマとしても楽しい娯楽作になっている。黒幕が現れるクライマックスなんて、ちょっとした刑事ドラマ。蒸気が吹き出す裏町の舞台づくりはギャング映画ぽいし、ヒロインを助けるジャーナリスト青年の活躍も楽しい。ジャーナリスト青年を演ずるのは、若き日の内藤剛志。今の目線だと、「科捜研の女」でマリコの窮地を救うのを見慣れているから、若い頃からこんな役やってるんだなと思ってしまうw。ラストのカッコつけた写真には、ヒロインと一緒に笑うしかないw🤣

お色気だけを期待して観るには物足りないかもしれない。しかしヌードがどれだけ出てくるかの条件さえクリアすれば、様々なテイストの映画があったのが当時のロマンポルノ。低予算ながらもお色気サスペンスに挑んだのは、個人的には好印象かと。あ、水島裕子好きである私的な加点があることを申し添えておきまする😜。


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