5月30日(土)
品川駅近くの 東京コンファレンスセンター品川で開催された、学術集会に久しぶりに参加する機会に恵まれました。今年の集会テーマは『登山医学の原点』、2日間の予定で開催されました。
発表は多岐にわたり、急性高山病、急性心不全、高地肺水腫、高地脳浮腫、といった低圧酸素によって生じる障害、低体温症や凍傷といった寒冷による障害、紫外線や宇宙線による障害など循環呼吸系を中心とする病態生理、登山や高所(2500m以上)で起こる運動機能や神経機能などのあらゆる障害に関する発表が行なわれました。
参加者も医師や研究者、医療従事者ばかりでなく、登山や高所での健康に関わる旅行業者、山岳ガイド、遭難対策関係者の方々が多数参加されました。
特別講演では『75歳、エベレストへ登頂への挑戦 ~アンチエイジングと不整脈の克服』 三浦雄一郎氏(冒険家・ミウラドルフィンズ)が講演。
75歳にして2回目のエベレスト登頂の栄光、その影では登頂直前に慢性心房細動がもたらす心機能障害を克服、高山守正先生を中心に計画された医療チームのサポート体制による登山や息子でもありパートナー三浦豪太氏の急性高所性心肺脳障害からの生還などを語っていただきました、最後に『夢こそ人生』と結ばれ、80歳に3度目のエベレスを目指す抱負も話され、窮地に立っても“あきらめない”、“投げ出さない”ことがどんなに大切なことか教えていただきました。
次に、三浦豪太氏の話を伺いながら、高度障害に苦しみながら冷静に下山されたこと、私も過去に同じような症状に見舞われ、数日間意識障害、半身麻痺になったことを重ね合わせながら、自分がかかった症状とその原因の糸口が少しわかりかけたような気がしました。あらためて、自分も生きて帰れてよかったなと同感しながら、聞いていました。
そして、友人Kの発表は ~登山環境と遭難対策~ 『月山における雪崩事故防止講習会について』というテーマで医師が雪崩事故防止講習会に関わることで、実際の遭難時の応急手当、救急救命の現場当事者と医療関係者の距離が狭まり、双方が同じ方向に向き合い遭難者の救命につながる良い機会と話されました。他の発表者のように臨床からの報告ではなく、対極な視線からの報告が新鮮でもあり、今回のテーマに合致した発表をいただいたような印象を受けました。
2日目は、市民公開講座『自然生活に知って欲しい“ファースト・エイド”』に参加してきました。
『救命手当』と『応急手当』の違いや知っているようで知らなかったこと、ついつい吉田先生の話に引き込まれ、講習時間2時間がとても短く感じるほど、新鮮な内容が盛りだくさんありました。
ケガや急病、突発的な事故への初期対応が“ファーストエイド”すなわち応急手当ということを再認識できた有意義な講習会でした。地方でもこのような講習会が実現いただけることを切望いたします。
最後に、主催された高山守正先生の会長講演、結びのあいさつを紹介したいと思います。
『・・・この登山医学会は決してヒマラヤスーパーアルピニストの行動を支えるだけではない。里山から超高所まで、全ての年代、全ての人へ、個人個人にあわせた適切な運動生理と医学的な指導を行い、必要に応じて治療を加えることによりアスリートも疾患既往者もなく、安全で楽しく、ちょっと冒険的な山行も出きる様に、サイエンスの目を持ってサポートしてゆくのが私たちの最大の命題である。元気に、楽しく、安全に山を登ろう!』と話されていました。
まさに、
“元気に、楽しく、安全に山を登ろう!”は、ガイドの極意ではないでしょうか。
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