映画と本の『たんぽぽ館』

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「有頂天家族」 森見登美彦

2008年01月05日 | 本(SF・ファンタジー)

「有頂天家族」 森見登美彦 幻冬舎

狸が主人公です。
はい、狸の家族。
・・・私は、はじめ、この物語に何かの比喩とか他の深遠なる意味を見出そうとしましたが、途中で放棄しました。
この本にも書いてあります。
「面白きことは良きことなり!」

京都1200年の開始の時から、狸は人間と共にあり、時には何食わぬ顔で人間等に姿を変え、入り混じって生活していた。
そんな狸の名門、下鴨家の一家のお話。
父総一郎は実に偉大な人物(いや、狸ですけど)であったけれども、鍋にされてすでにこの世を去っている。
長兄、矢一郎は、生真面目だけれど土壇場に弱い。
次男、矢二郎は蛙になって、井戸にひきこもり。
三男、矢三郎は面白主義が過ぎて周囲を困らせる。
四男、矢四郎は、化けてもすぐに尻尾がでる未熟者。
それでも母は皆に愛情を注ぎ、しっかり家をまもっている。
この愛情深い家族の気綱・・・。
確かにこれは人間が主人公では、今時とてもかけないお話かもしれません。

他に登場するのは、天狗の赤玉先生。
狸たちに教えを説く大先生でもあるのですが、今はすっかり落ちぶれて、空を飛ぶ妖力もなくし、うらぶれたアパートに一人住まっている・・・。
その天狗にかどわかされて来た人間の女性、弁天。
彼女は天狗の修行を受けるのですが、いつの間にやら師を越え、師を捨てて人間界でも名を馳せる謎の美女になっている。
また、狸の下鴨家とはライバルの夷川(えびすかわ)家の憎憎しい面々も登場。

空を飛んだり嵐が来たり、まことに賑々しい展開となっていきます。
何しろ、狸鍋にされ、食われるかという究極のピンチ等をおりこみつつ、スリルにとんだスペクタクル!
でも、この「京都」は紛れもなく、いつもの森見ワールド。
偽電気ブランは健在ですし。
・・・私は思いました。
このようなストーリーは歴史浅い北海道の者には到底作れないだろうと。
やはり、ながーい歴史と伝統、そして新しいものが混在する、
そのような中ではぐくまれる何かが、そこにあるような気がします。

それと、思うに、森見氏こそが、古より京都に住み着いた狸の末裔なのではないかと・・・。
そうでなければこのようなストーリーを書けるわけがありません!

この本は、宮崎アニメにぴったりな気がします。
絶対です。
空中合戦のシーンとか、最後の仙酔楼の大混乱のシーンとか、
ほとんどアニメシーンが思い浮かんでしまうくらい。
そういうことになるといいなあ・・・

満足度★★★★★