ピアノの旋律も心地よく、しっとりと、そして、楽しい作品でした。
主人公ヴィトスは、知能指数からしても天才の域。
その上音楽の才能にも恵まれ、ピアノについても、モーツァルトを思わせる、まさに神童の少年。
誰しもうらやむそのような立場なのですが、それはそれでまた、悩みはある。
幼稚園では、地球温暖化で、まもなく地球は滅びるという話をして周りの園児を慄かせたという・・・。
周囲から浮き上がり、溶け込めない。
しかし両親はその才能をうまく伸ばそうと使命感に燃え、必死。
そのため、大好きなピアノの先生からも引き離され、音楽学校に入れられる。
楽しく遊んだベビーシッターとも引き離される・・・。
そんなヴィトスにとって唯一心が休まるのは、田舎のおじいちゃんの家。
おじいちゃんだけが普通の子供に接するように、相手をしてくれる。
おじいちゃんは子供の頃からパイロットになるのが夢で、その空を飛ぶ憧れについても語ってくれる。
物語は幼少期から少し飛んで、ヴィトスは12歳。
12歳ですでに高校へ通っていますが、そこでも周りに溶け込めず、
授業そっちのけで新聞を読んだり、教師を馬鹿にした言動をするので、教師にまで嫌がられてしまう。
なおかつ、ピアノについても毎日毎日練習を押し付けられるのにいささかうんざり。母親に、高名なピアノの先生のところに連れて行かれるのですが、「弾きたくない」と、精一杯の抵抗。
高校卒業の資格試験を受けて見ないかという話も持ち上がるのですが、
将来についての方向性を考えるにも、何しろまだ12歳なのです・・・。
ある夜、ついにストレスが高じたのでしょうか、
ヴィトスはマンションから作り物の羽をつけて飛び降りてしまい・・・!
そこから先が、実はもっと面白いのですが、まあ、実際にご覧になった方がよろしいようで・・・。
結局いろいろなことがあった後、彼はやはりピアノに帰っていく。
そのピアノへの情熱はとめることができないもので、将来へもつながるもの、
その気づきのストーリーなんですね。
誰に言われたからでもなく、自分自身で選び取ったもの。
映画の冒頭に、ヴィトスが一人飛行機に乗り込んで飛び立ってしまうシーンがあります。
それが、ラストのシーンでようやくそのシーンに一致。
そして、彼が飛行機で乗りつけた場所!
なるほど~、なんてステキな展開なんでしょう。
人生、これだからやめられない、と思える作品ですね~。
ヴィトス役のテオ・ゲオルギュー君は実際にもピアノの天才少年。
「若いピアニストのためのフランツ・リストコンクール10~13歳部門」の優勝暦あり。
実際にオーケストラとの競演も経験しているという・・・この先が楽しみですねえ。
いつか日本へも公演に来ることがあるといいなあと思います。
・・・まあ「のだめ」とは違って実際に本人がピアノを弾いているので、迫力があります。
そうそう、それからホームパーティーのシーンで、ご馳走の中にお鮨があるのを発見しました。
マグロの握りらしいのと何かの海苔巻き。
近頃アメリカ映画では日本食が出てきても驚かなくなりましたが、これはスイス映画ですもんねえ。
こんなところでもお鮨が食べられているのは、ちょっと感動です。
ハイジも真っ青。
2006年/スイス/121分
監督/フレディ・M・ムーラー
出演/テオ・ゲオルギュー、ブルーノ・ガンツ
「僕のピアノコンチェルト」公式サイト