「異邦人 上・下」 パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
検死官シリーズ最新刊。
やっと出た、という感じです。
これがもう15作目。
私は実は読み出したのは最近なのですが、すべて読みました。
事件の猟奇性と、あらゆる科学的捜査方法を駆使し、推理する手並みの鮮やかさ、もちろんそういうところが眼目ではあるのですが、
おなじみの登場人物が織り成すドラマに、つい、目を離せなくなってしまうのです。
法医学者、検視官のケイ・スカーペッタ。
その姪であるルーシー。
元警官で今はスカーペッタの助手のような仕事をしているピート・マリーノ。
そして元FBI心理分析官、ベントン・ウェズリー。
当初から随所で登場し、スカーペッタに事件の解決上あるいは私生活上大きな影響を与える面々。
スカーペッタとベントンとは愛人関係であるのですが、
途中、彼は捜査上の理由で死んでいた(!)期間があり、
その真相はスカーペッタにも知らされていませんでした。
そのあたりのストーリーは、まるで火の消えたようで、読むのもつらかったのですが・・・。
今回の「異邦人」では、冒頭に、事件の発端となる凄惨な拷問シーンがあり、
そのあとまもなく、ベントンがスカーペッタに指輪を渡すシーンがあります。
この、見逃せない展開。
でも、このことはまた、ピートにとって心穏やかでなく、これもまた、ショッキングなシーンへと続くのです。
また、ルーシーをむしばむ病・・・。
この4人の関係がまた大きく変化しようとしています。
ともあれ、まだまだ先は長そう。
私は時々スカーペッタが気の毒になります。
仕事のことで悩むのならともかく、これら人物関係はいつまでたっても、重荷で悩みの種・・・。
心穏やかに過ごせる日は来るのでしょうか・・・。
今回は、全米女子テニスプレイヤーが、休暇先のローマで惨殺されたという事件。
遺体はひどく傷つけられ、くり抜かれた眼窩には砂が詰め込まれている・・・。
誰が、何故?
そんな中、スカーペッタは子供の遺棄死体の検視も担当。
虐待を受けた末、命を落とし、打ち捨てられたと見られる死体に、憤りを見せる。
そしてまた、同一犯と思われる事件が次にはアメリカの地元で・・・。
最後にはこれらがつながりを見せます。
事件的にも、スカーペッタの身辺上も、見逃せない一作です。
満足度★★★★