映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

再会の街で

2008年01月20日 | 映画(さ行)

家族を失うということ。
それもある日突然に。
これは、あまりにも悲しみが大きくて、それを受け入れられない男性についてのストーリー。

ニューヨークで歯科医をしているアランは、ある日、大学時代にルームメートだったチャーリーを見かけます。
呼びかけても気づいてもらえない。
しばらくして、もう一度見かけたときには、
必死で追いかけ、話しをするのですが、ほとんど覚えていない様子。
実は、彼の家族は、あの9.11の事件で命を落としており、その後、まったく連絡を取れずにいたので、アランはチャーリーの身を案じていたのです。
何を話しかけてもうつろ。
TVゲームやロックには夢中。
亡くなった家族の保障や保険で生活しているようで、仕事にも就いていない。
以前とはまったく様子が違ってしまっているチャーリーが気になり、アランは時折彼の家を尋ねるのです。
そんな彼に、家族のことを聞いたりしようものなら、とたんに怒り出し、攻撃的になる。
彼が常に音楽プレイヤーとヘッドホンを持ち歩いているのは、彼が聞きたくないことを遮断するためなのです。
すこしでも、家族を思い出させようとする人、思い出させるものを彼は受け入れようとしない。
はじめから無かったもののようにして、心の奥底に封じ込めてしまっているのです。

アランとの付き合いや、ようやく足を向けた精神科医の言葉によって、ついに、ポツリポツリと家族との思い出を語り始めるチャーリー。
妻と、3人の娘。そして愛犬をも一度に失ってしまった。

ここは、涙涙・・・。
アダム・サンドラーはコメディー出演が多いですが、ここでは本当に泣かされてしまいました。
映画中のある人物が曰く、
「彼は悲しみでボロボロ。」
あの事件後何年を経てもその傷は癒えないのですね。
あの、同じ時に命を落としたたくさんの人の家族にも、同じような物語がつづられているのでしょうね・・・。
しかし、特効薬はどこにも無い。
まずは悲しみを受け入れること。
それから、ちょっとした環境の変化と周りの人の温かい交流。
そういうもので、時間をかけて少しずつ悲しみを薄らいで慣れていくしかないのです。
でも、この周りの人との交流というのが本当に大事なんですね。
そしてまた、一方通行の援助ではなくて、アランの方にもいろいろな気づきがある、というところがミソです。

声高に、反戦を唱える作品ではありませんが、
ごく平凡にささやかな幸せのなかで暮らしている人々に怖ろしい影を投げかける国家間の軋轢というもの・・・。
どうにもならないものなんでしょうか・・・。

余談ですが、街角に「鍋焼きうどん」と「ラーメン」ののぼりの立った店。
(実はちょっとした事件現場でしたが)
ほんとに、アメリカには日本食が浸透しているんですねえ。

2007年/アメリカ/124分
監督: マイク・バインダー
出演:アダム・サンドラー、ドン・チードル、リヴ・タイラー、ジェイダ・ビンケット=スミス

「再会の街で」 公式サイト