映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アミスタッド

2008年01月07日 | 映画(あ行)

(DVD)
19世紀半ば、アメリカでの実話です。
スピルバーグ監督が、迫力で見せてくれます。

アミスタッドとは、船の名前。
そこに載っていた輸送中の黒人奴隷が氾濫を起こした。
彼らは船を奪い、故郷へ帰ろうとしたのですが、着いたのはのはアメリカ。
コネチカット州ニューヘヴン。
まだ、奴隷解放以前の話です。
しかし、人々の中には、奴隷制度をよくないと思っているものもいた。
そんな時代。
黒人たちは海賊行為と船員の謀殺容疑ということで牢につながれ、裁判を受けることになります。
奴隷としての所有権を名乗り出るものや、スペインとの利権、はたまた奴隷制の是非に関連して
アメリカ南北の争いにも発展しかねない大きな政治的問題となっていく。
果敢に弁護を務めたのは弁護士のボールドウィン。
しかし、なにしろまず奴隷たちと話が通じない。
港で働く黒人たちを捜し歩いて、ようやく通訳のできる者を見つける。

黒人たちのリーダー格であるシンケが語りはじめたこれまでのいきさつに、
皆は心打たれるのです。
彼らは西アフリカ、シエラレオネから拉致され、無理やり船に詰め込まれて連れてこられた。
鎖につながれ家畜同様の扱い。
途中、食糧不足のため、何十人もが生きたまま海に落とされ・・・。
その船は一度キューバに到着。
そこで売られてアミスタッド号に乗せられ、アメリカにわたるところだったもののようです。
言葉は偉大です。
それまでまったく意思が通じず、相手の知能程度まで低く見てしまう。
やはり奴隷は奴隷でしかない・・・そんな雰囲気ですらあったものが、
言葉がわかってみると、相手がきちんと意思も感情もある同じ人間だとすぐに理解できるのです。
自分たちと同じく自由を求める権利のある「人間」である、と。

この時点での法律によれば、
「奴隷の子として生まれた者のみ売買ができる」、
ということになっていました。
であれば、アフリカ生まれの彼らを売買することこそが法を犯すことになるのです。

この裁判は結局南北戦争の種の一つとなるようですが、そのような悲惨な歴史を踏み越えてある、自由と平等の精神を、大切にしなければね・・・。

シンケ役のシャイモン・フンスーは、「ブラッド・ダイヤモンド」のソロモンをやっていましたね。
あの話も、確かシエラレオネが舞台ではなかったでしょうか?
・・・うーん、昔も今も白人の食い物にされている国・・・。
どこが自由と平等だい!と、いいたくもなりますか・・・。

1998年/アメリカ/155分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:アンソニー・ホプキンス、マシュー・マコノヒー、モーガン・フリーマン、シャイモン・フンスー