誰もが孤独な自分の道を歩んでいる
* * * * * * * *
80歳で生まれ、次第に若返っていく不思議な運命の男、ベンジャミン・バトン。
予告編で観た時から、心引かれ、公開を心待ちにしていました。
2時間47分と、とても長い作品ですが、まあ、1人の男の一生を描くわけですから、長すぎるということはありませんよね。
生まれたときから老人。
しかし、彼は老人ホームで育ったため、不思議と周りと違和感なく成長するんですね。
・・・成長する・・・つまり、彼の場合、少しずつ若返っていくのですが。
そんな時に出会ったのが少女のデイジー。
それから二人は時を経て、出会いを繰り返します。
どんどん若くなり、力がみなぎっていくベンジャミン。
美しく成長し花のようなデイジー。
しかしまた、そこから次第に年をとり衰えていくデイジー。
どうあっても、結局、時は二人に同じように流れていきます。
だから二人が出会う一瞬一瞬が、かけがえのない、貴重なものなのです。
ちょうど二人が40代くらいのころ、二人の時が重なるのですね。
愛し合う二人。
しかし、それもつかの間・・・。
年をとり次第に衰えてやがて死を迎えることと、
どんどん若返り子どもになり、自分の意識も保てなくなってゆくこと・・・、
どちらが恐怖でしょうね。
いつまでも変わらないではいられない、人生の痛み。
それはどちらも同じですね。
ベンジャミンが生きるのは1918年(一次大戦の終り)から21世紀つまり現代にかけて。
舞台は大都市ではなくて、ニューオリンズ。
そのせいか、なんだか、全体にかけて不思議な懐かしさがあります。
それは、この不思議な生を生きる彼を取り巻く人々が、思いのほか温かだからなのかもしれません。
1人、他の人とは全く別の人生を送る、確かにそれは孤独だとは思うのだけれど、でも結構いい人生でしたよね。
養父母やホームの人たち、船長さん・・・。
多くの人たちに支えられて。
私はこういう「時」の不思議の話に弱いのです。
このストーリーはF・スコット・フィッツジェラルドの短篇が原作だそうですが、「ジェニーの肖像」の話にも少し似ています。
こちらは、時折現れる少女がほんの少しの間にどんどん成長し、
大人になっていくというストーリー。
このミステリアスなストーリーに魅了されて以来、この手の話が好きなんですよねえ・・・。
この映画が、このようなありえない話を題材にしていながら、
単に「世にも奇妙な物語」で終わっていないのは、
そのしっとりした叙情性もありますが、
作り物めいた感じがしない特殊メイクの技術も支えになっていますね。
本当に、自然でした・・・。
どうやってあんなふうに造るのだろうなんて、余計なことは、
観ている間ははあまり気になりません。
老け顔のメイクはまあ、これまでもいろいろありました。
でも、今回いっそう驚いたのは、若返りメイク。
(メイクというよりはCGの威力なのかも知れません)
あの、「ジョーブラックによろしく」の時みたいに若いブラピがいるんですよ!
・・・ため息が出ちゃいます。
そしてまた、この映画では見かけは老人だけれど、
実は子ども・・・という複雑な部分がありますよね。
それを、ブラピがうまく表現していたと思います。
70歳くらいの老人の目が、子どものように好奇心に満ちてキラキラ・・・いたずらっぽくもある。
また、美しい青年の彼は、しかしもう疲れ果て倦んだ目・・・。
余韻の残る作品でした。
2008年/アメリカ/167分
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン
映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」予告
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80歳で生まれ、次第に若返っていく不思議な運命の男、ベンジャミン・バトン。
予告編で観た時から、心引かれ、公開を心待ちにしていました。
2時間47分と、とても長い作品ですが、まあ、1人の男の一生を描くわけですから、長すぎるということはありませんよね。
生まれたときから老人。
しかし、彼は老人ホームで育ったため、不思議と周りと違和感なく成長するんですね。
・・・成長する・・・つまり、彼の場合、少しずつ若返っていくのですが。
そんな時に出会ったのが少女のデイジー。
それから二人は時を経て、出会いを繰り返します。
どんどん若くなり、力がみなぎっていくベンジャミン。
美しく成長し花のようなデイジー。
しかしまた、そこから次第に年をとり衰えていくデイジー。
どうあっても、結局、時は二人に同じように流れていきます。
だから二人が出会う一瞬一瞬が、かけがえのない、貴重なものなのです。
ちょうど二人が40代くらいのころ、二人の時が重なるのですね。
愛し合う二人。
しかし、それもつかの間・・・。
年をとり次第に衰えてやがて死を迎えることと、
どんどん若返り子どもになり、自分の意識も保てなくなってゆくこと・・・、
どちらが恐怖でしょうね。
いつまでも変わらないではいられない、人生の痛み。
それはどちらも同じですね。
ベンジャミンが生きるのは1918年(一次大戦の終り)から21世紀つまり現代にかけて。
舞台は大都市ではなくて、ニューオリンズ。
そのせいか、なんだか、全体にかけて不思議な懐かしさがあります。
それは、この不思議な生を生きる彼を取り巻く人々が、思いのほか温かだからなのかもしれません。
1人、他の人とは全く別の人生を送る、確かにそれは孤独だとは思うのだけれど、でも結構いい人生でしたよね。
養父母やホームの人たち、船長さん・・・。
多くの人たちに支えられて。
私はこういう「時」の不思議の話に弱いのです。
このストーリーはF・スコット・フィッツジェラルドの短篇が原作だそうですが、「ジェニーの肖像」の話にも少し似ています。
こちらは、時折現れる少女がほんの少しの間にどんどん成長し、
大人になっていくというストーリー。
このミステリアスなストーリーに魅了されて以来、この手の話が好きなんですよねえ・・・。
この映画が、このようなありえない話を題材にしていながら、
単に「世にも奇妙な物語」で終わっていないのは、
そのしっとりした叙情性もありますが、
作り物めいた感じがしない特殊メイクの技術も支えになっていますね。
本当に、自然でした・・・。
どうやってあんなふうに造るのだろうなんて、余計なことは、
観ている間ははあまり気になりません。
老け顔のメイクはまあ、これまでもいろいろありました。
でも、今回いっそう驚いたのは、若返りメイク。
(メイクというよりはCGの威力なのかも知れません)
あの、「ジョーブラックによろしく」の時みたいに若いブラピがいるんですよ!
・・・ため息が出ちゃいます。
そしてまた、この映画では見かけは老人だけれど、
実は子ども・・・という複雑な部分がありますよね。
それを、ブラピがうまく表現していたと思います。
70歳くらいの老人の目が、子どものように好奇心に満ちてキラキラ・・・いたずらっぽくもある。
また、美しい青年の彼は、しかしもう疲れ果て倦んだ目・・・。
余韻の残る作品でした。
2008年/アメリカ/167分
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン
映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」予告