映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ディファイアンス

2009年02月21日 | 映画(た行)
戦うユダヤ人にモーゼの奇蹟はあるか

            * * * * * * * *

1941年、ナチスドイツがユダヤ人狩りを始めた頃です。
ポーランドの田舎町。
ユダヤ人のビエルスキ兄弟、
トゥヴィア(ダニエル・クレイグ)、ズシュ(リーヴ・シュレイバー)、アザエル(ジェイミー・ベル)。
彼らがドイツ軍に襲われ両親を亡くしたところから映画は始まります。
彼らはとりあえず森の中に身を潜めることにするのですが、
そこへ他から逃れてきたユダヤ人が続々と集まってくる。
トゥヴィアは人々のリーダーとなり、そこにユダヤ人のコミュニティーを形成してゆきます。

これは実話を元にした作品で、オスカー・シンドラーにも匹敵する偉業。
結局1200人ものユダヤ人がここで3年ほども暮らして、
命が助かったというのは驚きです。
実際、楽なことではありません。
ドイツ軍は執拗に彼らを探し回り、攻撃をしかけてくるし、
この大勢の人々の食料の調達もままならない。
飢えた人々は次第に気が立って、不満分子も出てくる・・・。
彼らは武器を手に取り、ドイツ軍を迎え撃つこともするんですね。
そういえば、これまで映画の中で「闘うユダヤ人」というのは観たことがなかったように思います。
大抵は、迫害されるばかり・・・。
生きるために闘う。
考えてみればあっておかしくはない。
チェ・ゲバラでなくとも、武力闘争はやはり時には必要か・・・。
ただし、そうしなければ自分の命や人間としての尊厳が損なわれる、
という緊急避難的な場合に限る・・・と、一応言っておきましょう。

このトゥヴィアは、突出したヒーローというわけではなく、
悩み、逡巡しながらも、皆のまとめ役になっていきます。
また、きれいごとの人道主義を排し、時には非情な決断もします。
このあたりは本当に、行き抜くための厳しさを表していると思います。

それにしても、それまで全く普通に生活していた人々が、
ある日突然財産を取り上げられ、家を追われる。
さらには収容所に送られ、ガス室へ・・・。
こんなことが実際にあったというのは、何度見聞きしても憤りを感じます。
この森に集まったのは、ごく一般的な人々で、
教師であったり、ジャーナリストであったり。
なれない手で木を切ったり、家を建てたりするんです。
収容所ではない、というだけで、
実際の暮らし向きはほとんど収容所と変わらなかったのかも。
しかし、彼らには自由と誇りがありました。
これが生きていくためには必要ですね。

007でおなじみのダニエル・クレイグ。
これがまた、野性味たっぷりでかっこよかったですねえ・・・。
リーヴ・シュライバーというのも、私は結構好きな俳優さんで、今回たっぷり出番があったのでよかった。

2008年/アメリカ/136分
監督:エドワード・ズウィック
出演:ダニエル・クレイグ、リーヴ・シュレイバー、ジェイミー・ベル、アレクサ・ダヴァロス

映画「ディファイアンス」予告