映画と本の『たんぽぽ館』

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チェンジリング

2009年02月23日 | 映画(た行)
息子はどこにいるのか。答えを出すための困難な道。

            * * * * * * * *

1928年。ロサンゼルス。
ある日、9歳の少年が忽然と姿を消す。
5ヶ月の後、息子が見つかったと警察に言われ、
母親が行ってみると、なんと全くの別人。
しかし、その少年は自分が息子だと名乗っている。
それでも別人といい続ける母親を、
警察は精神錯乱として精神病院に強制入院させてしまう。

なんとも怖ろしい話なのですが、これは実際にあったことというので驚きです。
当時のロス市警というのは、腐敗しきっていたというのです。
汚職が横行し、ギャングと馴れ合う警察。
いつまでも子どもを探し出せないとなれば、
替え玉まで用意して、解決済みにしてしまおうとする・・・。
市民を守るはずの警察が、
自分たちの地位や権力を守るためにだけ機能している・・・というのはあまりにもひどすぎます。
しかし幸いにも、このひどい警察の有様を
なんとかしようという市民の活動があり、
それによってこの母、クリスティン・コリンズは救われるのです。

では、実の息子はどうなったのか。
そちらではまた、別の悲惨な事件が起こっているのです。
この母と息子のそれぞれの事件が交差し、増幅されていく・・・。
まさに見ごたえのある作品となっています。
結局母親は終始、息子はどこにいるのかさがしてほしい、
それだけを望んでいるのに、
まともな捜査すらしてもらえない。
この困難な道が彼女を余計に強くしたのだと思います。

クリント・イーストウッド監督は、割と淡々と物語を勧めているように思うのです。
時に狂的なまでに息子を追い求める母親を、描写は過大な感情移入をしない。
また、中ではホラーじみたシーンになりそうなところもあるのに、
あえて最悪なところは避けている。
あえてオーバーな表現を避けて、じっくりと人物を描写することで、
逆にあの母親の鬼気迫る感情が際立ってきていますね。
いぶし銀。
クリント・イーストウッド監督の力量に納得です。

ピアノのミスタッチとも思える不協和音の音楽が、
どことなく居心地悪いこの映画の状況をうまく表現していました。
・・・なんと、これもクリント・イーストウッド監督の作曲だそうで。
う~む、おそるべし・・・。

2008年/アメリカ/142分
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、コルム・フィオール


映画「チェンジリング」予告