映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「つむじ風食堂の夜」 吉田篤弘

2009年02月24日 | 本(その他)
つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘
筑摩書房

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「あなたはまだ この面白い小説を知らない」
これがこの文庫にかかっていた帯のコピー。
うん、確かに知らないなあ・・・と思いながら、
このシンプルな装丁にも惹かれて買いました。

そして、衝撃を受けました!

面白い・・・って、そんな言葉であらわすのは違うのじゃないか・・・と思いつつ、
しかし、なんと表現していいか悩みますね。

この本の言葉はポエムです。
いや、しかし、文体は平素。
気取った言葉などどこにもない。
語られる内容は、なんだか身近で温かでそして懐かしい。
摩訶不思議な出来事が起こるわけでもない。
それなのに、どこか現実を遊離した感じ。
自分もふんわりと宙に浮かんで物思いの世界をただよいたくなるような・・・。
う~ん、参りました。
こんな作家を今まで知らなかったのが、すごく損をしたような感じです。


ストーリーはこの「つむじ風食堂」に集まる人々の、ちょっとしたふれあいの物語。
つむじ風食堂の無口な店主。
月舟アパートメントに住む「雨降り先生」。
古本屋の「デニーロの親方」。
背の高い女優、奈々津さん・・・・・・
みな「必死にあくせくと」生きるのではなくて、
自己主張をしつつも飄々と生きて、そしてやさしい・・・。

さしてボリュームはない本なので、すぐに読めてしまいますが、
その満足感はたっぷりです。

この話は映画化されるそうで、撮影地は函館とのことです。
そこでまた、妙に納得してしまうのですが、
あの、函館のちょっと忘れ去られたような町の雰囲気が、
確かにこのストーリーにぴったり。

この思わぬ拾い物は、私の読書世界をぐい~っと広げたように思います。

満足度★★★★★★
(「チャイルド44」で6個★をつけたら、これにも付けないわけに行かないではないか・・・)