美しさ・若さの前で臆する老いた男
* * * * * * * *
初めて予告編を見たときに、ちょっと「うっ」となりました。
ペネロペ・クルスとベン・キングスレー?
この組み合わせがあまりにも異色に思えてしまいました。
しかしです、これは結構身にしみるストーリー。
大学教授であるデヴィッド(ベン・キングスレー)は、
とうに家庭も捨てて、気ままに女友達と遊ぶ、そんな生活を続けてきていました。
もう老人といっていい年齢。
ある日学生のコンスエラ(ペネロペ・クルス)の美しさに魅了されてしまう。
念願かない、親密な関係に・・・。
二人には30もの年の差がある。
コンスエラは生きることや恋にひたむき。
彼女の若さ、美しさ・・・、デヴィッドにはまぶしいのです・・・。
卒業パーティーに招かれ、
そこで彼女の親や親戚に紹介されることになったものの・・・。
デヴィッドは臆してしまうのです。
テレビ出演もする、世間的にも評価されている人物にもかかわらず・・・。
デヴィッドは、彼女の若さや美しさ、打算の無い愛が怖いのです。
もうあまり未来のない自分が、
彼女の明るく未知数の未来を、引き受けてしまう自信がない。
また、世間も、当然そのように見て、自分を非難するだろう
・・・そのように思われて。
年をとっても自分は自分。
体は衰えても、心のありようは同じ。
・・・そんなつもりでいたはずが、
「老い」はいつの間にか心にも忍び込んでいる。
また、常に彼の愚痴を引き受けてくれていた友人が亡くなってしまうのですが、
その、取り残された寂寥感もじわじわと来ます・・・。
私は女ではありながら、
この映画中ではコンスエラよりもデヴィッドに自分を重ねていました。
私も年ですね・・・。
なんだか彼の心境の方が、良くわかる。
逆に若い人にこの作品の感想を聞きたい気がします。
それから、ここにもう1人、デヴィッドの古くからの付き合いの女性が登場します。
彼女も、彼との付き合いはセックスだけと割り切って、
これまでお互いの気持ちとか将来についてなど話したこともなかった。
でも、最後の方でほんのちょっぴりそんな話になるんですね。
デヴィッドの方が友人を亡くした寂しさもあって、彼女に寄り添おうとする。
けれど、彼女はそれをかわすのです。
ここのところも、お見事。
私はすごく彼女の気持ちがわかるんですよ。
もうずっと前から彼女は「お一人様の老後」の覚悟ができているんです。
いまさら情にほだされて、お荷物の坊やの世話なんかしたくない。
老いても夢を持とうとか、夢に年は関係ないとか・・・、
そういうテーマの映画はたくさんあるのですが、
この作品はもっとリアルに「老い」を捕らえ、えぐりだしているように思います。
だからそれに近づく私などにはとても身にしみて・・・、
「レボリューショナリー・ロード」に引き続き、物思いにふけってしまいました。
そしてこのストーリーのラストなのですが・・・。
一見ハッピーエンドなんでしょうかね?
でも、あの先はどちらとも取れますね。
ハッピーエンド好きの私が言うのも変ですが、
私は、二人はやはり別れるような気がするのです。
コンスエラの美しさが損なわれることで、
まるでデヴィッドの「老い」とつりあって収まってしまうかのような・・・、
そのような安直な結末は良くない気がする。
ここは最後までつりあってはいけないんじゃないか。
「老い」はやはりデクレッシェンド。
そのようないさぎよい終末であるべきと、私は思います。
デヴィッドがゴヤの絵画「着衣のマハ」にコンスエラが似ている、というシーンがあります。
ペネロペ・クルスは、まさにそのゴヤのもうひとつの作品「裸のマハ」の映画に出演していますよね。
そのような引っ掛けもまた、ちょっとおしゃれでした。
2008年/アメリカ/112分
監督:イザベル・コイシェ
出演:ペネロペ・クルス、ベン・キングスレー、ピーター・サースガード、デニス・ホッパー
映画「エレジー」予告編
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初めて予告編を見たときに、ちょっと「うっ」となりました。
ペネロペ・クルスとベン・キングスレー?
この組み合わせがあまりにも異色に思えてしまいました。
しかしです、これは結構身にしみるストーリー。
大学教授であるデヴィッド(ベン・キングスレー)は、
とうに家庭も捨てて、気ままに女友達と遊ぶ、そんな生活を続けてきていました。
もう老人といっていい年齢。
ある日学生のコンスエラ(ペネロペ・クルス)の美しさに魅了されてしまう。
念願かない、親密な関係に・・・。
二人には30もの年の差がある。
コンスエラは生きることや恋にひたむき。
彼女の若さ、美しさ・・・、デヴィッドにはまぶしいのです・・・。
卒業パーティーに招かれ、
そこで彼女の親や親戚に紹介されることになったものの・・・。
デヴィッドは臆してしまうのです。
テレビ出演もする、世間的にも評価されている人物にもかかわらず・・・。
デヴィッドは、彼女の若さや美しさ、打算の無い愛が怖いのです。
もうあまり未来のない自分が、
彼女の明るく未知数の未来を、引き受けてしまう自信がない。
また、世間も、当然そのように見て、自分を非難するだろう
・・・そのように思われて。
年をとっても自分は自分。
体は衰えても、心のありようは同じ。
・・・そんなつもりでいたはずが、
「老い」はいつの間にか心にも忍び込んでいる。
また、常に彼の愚痴を引き受けてくれていた友人が亡くなってしまうのですが、
その、取り残された寂寥感もじわじわと来ます・・・。
私は女ではありながら、
この映画中ではコンスエラよりもデヴィッドに自分を重ねていました。
私も年ですね・・・。
なんだか彼の心境の方が、良くわかる。
逆に若い人にこの作品の感想を聞きたい気がします。
それから、ここにもう1人、デヴィッドの古くからの付き合いの女性が登場します。
彼女も、彼との付き合いはセックスだけと割り切って、
これまでお互いの気持ちとか将来についてなど話したこともなかった。
でも、最後の方でほんのちょっぴりそんな話になるんですね。
デヴィッドの方が友人を亡くした寂しさもあって、彼女に寄り添おうとする。
けれど、彼女はそれをかわすのです。
ここのところも、お見事。
私はすごく彼女の気持ちがわかるんですよ。
もうずっと前から彼女は「お一人様の老後」の覚悟ができているんです。
いまさら情にほだされて、お荷物の坊やの世話なんかしたくない。
老いても夢を持とうとか、夢に年は関係ないとか・・・、
そういうテーマの映画はたくさんあるのですが、
この作品はもっとリアルに「老い」を捕らえ、えぐりだしているように思います。
だからそれに近づく私などにはとても身にしみて・・・、
「レボリューショナリー・ロード」に引き続き、物思いにふけってしまいました。
そしてこのストーリーのラストなのですが・・・。
一見ハッピーエンドなんでしょうかね?
でも、あの先はどちらとも取れますね。
ハッピーエンド好きの私が言うのも変ですが、
私は、二人はやはり別れるような気がするのです。
コンスエラの美しさが損なわれることで、
まるでデヴィッドの「老い」とつりあって収まってしまうかのような・・・、
そのような安直な結末は良くない気がする。
ここは最後までつりあってはいけないんじゃないか。
「老い」はやはりデクレッシェンド。
そのようないさぎよい終末であるべきと、私は思います。
デヴィッドがゴヤの絵画「着衣のマハ」にコンスエラが似ている、というシーンがあります。
ペネロペ・クルスは、まさにそのゴヤのもうひとつの作品「裸のマハ」の映画に出演していますよね。
そのような引っ掛けもまた、ちょっとおしゃれでした。
2008年/アメリカ/112分
監督:イザベル・コイシェ
出演:ペネロペ・クルス、ベン・キングスレー、ピーター・サースガード、デニス・ホッパー
映画「エレジー」予告編