![]() |
狐笛のかなた (新潮文庫) 上橋 菜穂子 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
一匹の傷ついた子狐が疾走しています。
犬たちに追われているのです。
これは普通の子狐ではなく、何か魔性の狐のように思われるのですが・・・。
もう力尽きて走れない
・・・そんなときに1人の少女に抱え上げられました。
しかし、女の子とて、そう速く走れるものではありません。
いつしか森の奥の禁断の屋敷の前までたどり着いてしまったけれど、
もう追っ手の犬たちがすぐ後ろまで来ている。
屋敷の塀に阻まれ絶体絶命のところへ、
屋敷の中から1人の少年が少女を招き入れてくれ、助けてくれる。
・・・これがこの本の冒頭、3人(二人と一匹?)の出会いです。
このスピーディーでスリリングな展開に、
一気に物語に引き込まれてしまいました。
上橋菜穂子さんは、私には始めての作家です。
この文庫の解説者、金原瑞人氏によれば
荻原規子、小野不由美、そしてこの上橋菜穂子は、
日本の女性ファンタジー作家の三羽鴉であるという。
前2者は読んだことがあって、とても好きな作家です。
このたび、またもう1人を知ることができて、幸いでした。
さて、物語は、このプロローグに当たる出会いの数年後から、
本当の展開を始めます。
そのときの少女が小夜で、彼女には何か不思議な力が備わっている。
大変に憎しみあっている武家の一族同士の物語に
小夜や、狐の野火がからんでストーリーが進んでいきますが、
小夜の美しくピュアな心や、野火の一途な思いが、切ない・・・。
しかし、この物語は上橋菜穂子氏の他のファンタジーとは
特に、趣が異なっているとのことですので、
やはり、「守り人シリーズ」を読んでみるべきのようです。
ファンタジーは、その独自な世界に入り込むまでがちょっとエネルギーがいるのですが、
読み始めると、今度はハマって抜けだせなくなっちゃうんですね。
しかし、この本などは、入り込むのは何の造作もなく、
ただただ引き込まれてしまった・・・。
そういうところにこの著者の力量を感じます。
満足度★★★★☆