映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

シン・ゴジラ

2016年08月01日 | 映画(さ行)
ニッポンの夏、ニッポンのゴジラ



* * * * * * * * * *

このテの作品はもう見ない、などと言いながら見てしまうというのは、
やはりこれが「ゴジラ」だから。
子供の頃から見ているゴジラには、
多分多くの同年配の方がそうであるように、ただならぬ思い入れがあります。
少し前にハリウッド版の「ゴジラ」も見たけれど、
この度本作を見て、ああやっぱりこれがホンモノの「ゴジラ」、
日本の「ゴジラ」だと思いました。
しかも監督が庵野秀明さんというのが、いかにも期待を誘います。



特にストーリーと言うべきほどのものはないんですよ。
突如東京湾に出現した巨大生物。
けれど、いきなり上陸したそれは、私たちの知ってるゴジラとは姿が違う。
なんとゴジラは、生きながら「進化」するという恐るべき生物だった・・・。
(でもなんだかこの幼生ともいうべきゴジラは、ちょっと可愛らしかったりします・・・。)



本作はこのゴジラのもたらす未曾有の災害に、
日本政府がどのように対処するか、つまりそういう作品なのです。
始めは海底のトンネルが崩れ、海底火山の活動の活性化?などと思われていた。
けれど、内閣官房副長官・矢口(長谷川博己)は、SNSに投稿された動画などから
「これは何か巨大生物なのでは?」というのですが、
他のお偉いさんたちは全く取り合いません。
けれど、そんな最中にすぐ、TVに謎の巨大生物の姿が映しだされるのです。
また、その直後には
「この生物は上陸すると自分の重さで潰れてしまうので、上陸する可能性はない」
などと有識者と称する人々が断言したのですが、
その直後に、ゴジラは安々と上陸してしまう。



既存の政府の見通しの甘さ、危機管理能力の希薄さがくっきりと浮かび上がります。
そうこうするうちに、またゴジラは姿を変え、
私たちの知っている立派なゴジラに!!
そして、当初から自分の疑問を堂々と口にしていた矢口が
対策組織のトップに抜擢されるというわけ。


この時に矢口のもとに集められたメンバーが、
様々な組織・部署の「変わり種」であり「余されもの」と言われた人たちだというのには、
ニンマリさせられました。
こんな非常識な生物には常識人では対応できないと・・・。
日頃お金儲けか自分の出世しか考えられない人には、対処不能、というのがいいですよねー。



それにしても、強いぞ、ゴジラ。
初めて「防衛」のために実際に武器を使用する自衛隊。
しかしその自衛隊の銃弾もミサイルも物ともしない。
この辺りはちょっぴりゴジラに味方してしまうゴジラファンなのであります。
とすればこれはやはり、核の力を借りなければならないのか?
しかし、日本に3度めの核弾頭が落とされるのには何としても抵抗がある。
第一それでは首都壊滅だ。
安保条約に基づき、着々と核弾頭の準備をすすめるアメリカに対して、
矢口らは、独自の対処方法を進めるが・・・。


政治家の思惑やら、様々な研究者の矜持、
核のために出現したゴジラにやはり核を使うのかという矛盾、
自衛隊のこと、安保のこと・・・
う~ん、面白いなあ・・・!!
本作は大人のためのゴジラ作品ですね。
子供にはちょっと退屈かもしれない。



本作、キャストが総勢328名という豪華版。
知っている俳優さんを見つける楽しみもあります。
斎藤工、ピエール瀧、片桐はいり、古田新太・・・ほんのちょこっとづつなんですけどね。
犬童一心監督が古代生物学者役で出演しているのもオドロキ。
そして、本作のゴジラはモーションキャプチャーによるフルCGだそうなのですが、
なんとそのモーションキャプチャーを務めたのが野村萬斎さん。
これぞ日本の伝統的「ゴジラ」だなあ・・・! 
もはや芸術。
(って、実際、美術館で「ゴジラ展」が催されたりするようです。)


おまけ
本作を見た後、チカホを歩いていたら、
ゴジラがいました!!



「シン・ゴジラ」
2016年/日本/120分
監督・脚本:庵野秀明
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、市川実日子、高良健吾

日本の危機管理を考える度★★★★☆
ゴジラ度★★★★★
満足度★★★★☆