特定の者の意図した先導こそが恐ろしい

* * * * * * * * * *
1940年代後半~50年代、
米ソ冷戦のため、米国では「赤狩り」の動きがありました。
共産主義者への厳しい弾圧です。
ハリウッドの黄金期第一線で活躍した脚本家、ダルトン・トランボも
その標的となった一人。
本作はそのトランボの波乱万丈の半生を描きます。

悪名高い下院非米活動委員会への協力を拒んだということで、
トランボは投獄されてしまうのです。
そしてようやく釈放となった後には、ハリウッドでの居場所も失っている。
しかし、彼は偽名でシナリオを量産し続けます。
多くは低予算の陳腐な作品なのですが、
家族を養うためと割り切り、とにかく「面白い」作品を書き続ける。
けれどそんな中にも、以前から温めていた良作も混ぜ込みます。
そんな中で、「ローマの休日」と「黒い牡牛」はアカデミー賞を受賞。
もちろんこれも、実はトランボ作とは知られないままの受賞となったのです。
正に、実力勝負ですね。
自由の国のはずのアメリカで、こんなことがあったというのにも
複雑な思いがこみ上げます。
ほんの僅かの人々(つまりここは「資本家」とでも言うべきか)の思惑と先導で、
こんなにも大衆を突き動かしてしまうのは恐ろしいことです。
いま、このことを言うのはちょっぴり意味があるかもしれません。

さて、けれども、人の口に戸は立てられないもので、
次第に「実はトランボが偽名で多くのシナリオを書いているらしい」
というウワサが広まってきます。
時代の流れということもありますが、
「栄光への脱出」と、「スパルタカス」で、映画界には公式復帰。
本作の副題は「ハリウッドに最も嫌われた男」ではありますが、
嫌ったのは大手映画会社の経営陣。
実は、多くの映画ファンには最も好かれた脚本家なのかもしれません。
二度のアカデミー賞受賞というのが何よりもそれを物語っています。
「ローマの休日」のファンは日本でも多いですしね。

さて、それで本作で胸に響くのはやはり、
逆境に立ちながらも信念を持って生き、仕事をし続けるトランボの姿でしょう。
全く、実話というのは様々な想像を軽々と超えてしまいます。
そして、彼を支える家族の姿も美しい・・・。

これはある意味、アメリカだけでなく日本でもそうかもしれませんが
「かつて」の家族像なのかな・・・と思いました。
今ならこんなことがあれば、あっさり離婚かも・・・。
古き良き『家族像』。
多少の子供たちの反発はありましたけれど。
それこそ、なければできすぎです。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
2015年/アメリカ/124分
監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、マイケル・スタールバーグ、ルイス・C・K、エル・ファニング
歴史発掘度★★★★☆
男の生き様度★★★★★
満足度★★★★☆

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1940年代後半~50年代、
米ソ冷戦のため、米国では「赤狩り」の動きがありました。
共産主義者への厳しい弾圧です。
ハリウッドの黄金期第一線で活躍した脚本家、ダルトン・トランボも
その標的となった一人。
本作はそのトランボの波乱万丈の半生を描きます。

悪名高い下院非米活動委員会への協力を拒んだということで、
トランボは投獄されてしまうのです。
そしてようやく釈放となった後には、ハリウッドでの居場所も失っている。
しかし、彼は偽名でシナリオを量産し続けます。
多くは低予算の陳腐な作品なのですが、
家族を養うためと割り切り、とにかく「面白い」作品を書き続ける。
けれどそんな中にも、以前から温めていた良作も混ぜ込みます。
そんな中で、「ローマの休日」と「黒い牡牛」はアカデミー賞を受賞。
もちろんこれも、実はトランボ作とは知られないままの受賞となったのです。
正に、実力勝負ですね。
自由の国のはずのアメリカで、こんなことがあったというのにも
複雑な思いがこみ上げます。
ほんの僅かの人々(つまりここは「資本家」とでも言うべきか)の思惑と先導で、
こんなにも大衆を突き動かしてしまうのは恐ろしいことです。
いま、このことを言うのはちょっぴり意味があるかもしれません。

さて、けれども、人の口に戸は立てられないもので、
次第に「実はトランボが偽名で多くのシナリオを書いているらしい」
というウワサが広まってきます。
時代の流れということもありますが、
「栄光への脱出」と、「スパルタカス」で、映画界には公式復帰。
本作の副題は「ハリウッドに最も嫌われた男」ではありますが、
嫌ったのは大手映画会社の経営陣。
実は、多くの映画ファンには最も好かれた脚本家なのかもしれません。
二度のアカデミー賞受賞というのが何よりもそれを物語っています。
「ローマの休日」のファンは日本でも多いですしね。

さて、それで本作で胸に響くのはやはり、
逆境に立ちながらも信念を持って生き、仕事をし続けるトランボの姿でしょう。
全く、実話というのは様々な想像を軽々と超えてしまいます。
そして、彼を支える家族の姿も美しい・・・。

これはある意味、アメリカだけでなく日本でもそうかもしれませんが
「かつて」の家族像なのかな・・・と思いました。
今ならこんなことがあれば、あっさり離婚かも・・・。
古き良き『家族像』。
多少の子供たちの反発はありましたけれど。
それこそ、なければできすぎです。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
2015年/アメリカ/124分
監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、マイケル・スタールバーグ、ルイス・C・K、エル・ファニング
歴史発掘度★★★★☆
男の生き様度★★★★★
満足度★★★★☆