知的好奇心
* * * * * * * * * *
水を飲むように本を読む"私"は、編集者として時を重ね、
「女生徒」の謎に出会う。
太宰は、"ロココ料理"で、何を伝えようとしたのか?
"円紫さん"の言葉に導かれて、"私"は創作の謎を探る旅に出る―。
時を重ねた"私"に会える、待望のシリーズ最新作。
* * * * * * * * * *
北村薫さんの「円紫さんと私」シリーズ、16年ぶりに出たという新作。
この度ようやく図書貸し出し予約の順番が回ってきて、読むことができました。
お馴染みの「私」の立ち姿のイラストの表紙。
これがいいんだなあ・・・。
このシリーズ、女子大生の「私」が編集者の職を得た辺りで終わっていたはず。
(その内容は、なにも覚えていなかったりする・・・)
そして本作、年齢を重ねた彼女は、編集の仕事もベテランの域。
そして、結婚していて中学生の子供もいる。
え~、そこのくだりはバッサリ省略ですかあ。
そこのところが一番気になるところではあるのですが・・・。
さて、彼女の知的好奇心は若いころのまま。
彼女が太宰治の「女性徒」を読んで、気になるところが出てくる。
太宰は実際の女子高生の日記を元にして、本作を書き上げたのですね。
その中に「ロココ料理」という言葉がある。
当時あまり一般的ではなかったはずの「ロココ」という言葉。
太宰はどういう意味を込めてこの言葉を用いたのか。
当時太宰が愛用していたという「辞書」を探り当て、
実際に現存するその「辞書」を探し求めて、ちょっとした旅にまで出ます。
別に論文を書いたり、どこかに発表しようとしているわけではない。
あくまでも自分の興味、知的好奇心に駆られて行動する彼女。
これだけの年令になっても、そういうふうに行動できる彼女が眩しく感じられました。
確かに、あの女子大生の「私」の、年齢を重ねた姿だと思います。
彼女の行動原理は、
「こうして調べたことを円紫さんに報告する。
そして幾ばくかの評価をいただき、さらなる課題をいただく」
こういうことに尽きるのではないでしょうか。
一生を通しての師匠がいるというのもいいですよねえ・・・。
何か一つのことに興味を持つと、
そのことに連鎖するように、色々と関係したことが耳に入ったり、起き上がったりする。
身の回りにもたまにあるように思います。
つまりは、ふだんは耳に入ってもそのまま抜けていくようなことが、
何かを気にしている時には、急に引っ掛かりを持つ。
脳の中で無意識のうちに検索機能が働いているのでしょうね。
さて、ということで興味深くは読んだのですが、
本作について言えば、あまりにも「文学」でした。
文学の講義でこれを聞けば面白いと思うでしょうけれど、
わざわざ本で読みたい内容ではないかも・・・と、思えてしまいました。
私の知的好奇心はかなり劣化しているのかも・・・。
「太宰治の辞書」北村薫 新潮社
図書館蔵書にて
満足度★★★☆☆
![]() | 太宰治の辞書 |
北村 薫 | |
新潮社 |
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水を飲むように本を読む"私"は、編集者として時を重ね、
「女生徒」の謎に出会う。
太宰は、"ロココ料理"で、何を伝えようとしたのか?
"円紫さん"の言葉に導かれて、"私"は創作の謎を探る旅に出る―。
時を重ねた"私"に会える、待望のシリーズ最新作。
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北村薫さんの「円紫さんと私」シリーズ、16年ぶりに出たという新作。
この度ようやく図書貸し出し予約の順番が回ってきて、読むことができました。
お馴染みの「私」の立ち姿のイラストの表紙。
これがいいんだなあ・・・。
このシリーズ、女子大生の「私」が編集者の職を得た辺りで終わっていたはず。
(その内容は、なにも覚えていなかったりする・・・)
そして本作、年齢を重ねた彼女は、編集の仕事もベテランの域。
そして、結婚していて中学生の子供もいる。
え~、そこのくだりはバッサリ省略ですかあ。
そこのところが一番気になるところではあるのですが・・・。
さて、彼女の知的好奇心は若いころのまま。
彼女が太宰治の「女性徒」を読んで、気になるところが出てくる。
太宰は実際の女子高生の日記を元にして、本作を書き上げたのですね。
その中に「ロココ料理」という言葉がある。
当時あまり一般的ではなかったはずの「ロココ」という言葉。
太宰はどういう意味を込めてこの言葉を用いたのか。
当時太宰が愛用していたという「辞書」を探り当て、
実際に現存するその「辞書」を探し求めて、ちょっとした旅にまで出ます。
別に論文を書いたり、どこかに発表しようとしているわけではない。
あくまでも自分の興味、知的好奇心に駆られて行動する彼女。
これだけの年令になっても、そういうふうに行動できる彼女が眩しく感じられました。
確かに、あの女子大生の「私」の、年齢を重ねた姿だと思います。
彼女の行動原理は、
「こうして調べたことを円紫さんに報告する。
そして幾ばくかの評価をいただき、さらなる課題をいただく」
こういうことに尽きるのではないでしょうか。
一生を通しての師匠がいるというのもいいですよねえ・・・。
何か一つのことに興味を持つと、
そのことに連鎖するように、色々と関係したことが耳に入ったり、起き上がったりする。
身の回りにもたまにあるように思います。
つまりは、ふだんは耳に入ってもそのまま抜けていくようなことが、
何かを気にしている時には、急に引っ掛かりを持つ。
脳の中で無意識のうちに検索機能が働いているのでしょうね。
さて、ということで興味深くは読んだのですが、
本作について言えば、あまりにも「文学」でした。
文学の講義でこれを聞けば面白いと思うでしょうけれど、
わざわざ本で読みたい内容ではないかも・・・と、思えてしまいました。
私の知的好奇心はかなり劣化しているのかも・・・。
「太宰治の辞書」北村薫 新潮社
図書館蔵書にて
満足度★★★☆☆