映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ストリート・オーケストラ

2016年08月24日 | 映画(さ行)
音を合わせることは心を合わせること



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ブラジル、スラム街の子どもたちによって結成された
クラシック楽団「エリオポリス交響楽団」誕生の実話です。



バイオリニストのラエルチは、サンパウロ交響楽団のオーディションを緊張のあまり失敗。
生活のため、気は進まないものの、スラム街の学校で音楽教師の職につきます。
ところがオーケストラのメンバーとして集まった生徒たちは、どうにもオンボロ。
そもそも音楽をやる気がほとんどありません。
ある時、ラエルチは襲われたギャングの前でバイオリンを演奏。
そして、ギャングは引き下がった。
このことがウワサで広がり、生徒たちは音楽とラエルチを見なおしたんですね。

カッコイイ!! 
暴力でなくてもそんなことができるのか、と。

そこで生徒たちがやる気を出したのはいいのですが、
座り方も、楽器の持ち方も滅茶苦茶で、なんと楽譜も読めない。
ラエルチは、うんざりしながらも、ごく初歩から子どもたちに音楽を教え始めます。
そしてラエルチはまた、子どもたちの生活環境の酷さも目の当たりにします。
親からネグレクトを受けるもの、カード詐欺の手先をするもの・・・。
こんな中でも必死に練習に励む子どもたちを見て、
失意のラエルチもまた、音楽への情熱を取り戻していくのです。



はじめ、聞くに耐えなかった彼らの演奏が、次第に上達し、
しっかりと聞き惚れるまでのものになっていく様子がとても心地よいです。
しかも本作はクラシックだけではなく、スラムを意識して、
ヒップホップが挿入されていたりするのも、すごく楽しい。
生徒たちにとってクラシックは堅苦しく高級なものではなくて、
一つの音楽のジャンルと、普通に受け入れている感じがします。
そういう逆の偏見がないのもいいです。
そして本作のエンディング曲がやはりクラシックではなくて、
ブラジルの伝説的ラッパー、サボタージの曲というのが、なんとも聴かせる。



実は今期のテレビドラマ「仰げば尊し」に、なんだか似ているなあ・・・
と思いながら見ていました。
が、まさか、あんな事件が起こるとは!!
予測していなかったのでショックでした。
でも、そのために皆の気持ちが一つにまとまったというところはあるのでしょうね・・・。
ステキな作品でした。



「ストリート・オーケストラ」
2015年/ブラジル/103分
監督:セルジオ・マチャド
出演:ラザロ・ハーモス、カイケ・ジェズース、エイジオ・ビエイラ、サンドラ・コルベローニ、フェルナンダ・フレイタス

音楽の魅力度★★★★☆
満足度★★★.5