映画と本の『たんぽぽ館』

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大鹿村騒動記

2016年08月04日 | 映画(あ行)
記憶に刻み込まれた村歌舞伎



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「団地」がとても面白かったので、同監督作品の本作も見てみました。
これも本当は劇場で見たかったのですが、
タイミングが合わず、見逃していたのです。



舞台は、長野県大鹿村。
実際にある村で、ここには江戸時代から300年伝わる村歌舞伎があるのです。
その村歌舞伎を中心として、ストーリーは組まれています。



ある日、この村に到着したバスから一組の男女が降り立ちます。
この二人は18年前駆け落ちをして村を出た能村治(岸部一徳)と、貴子(大楠道代)。
二人は、鹿肉料理店を営む風祭善(原田芳雄)を訪ねます。
善こそは、貴子の元・夫であり、治の幼なじみの友人なのです。
何を今さら、のこのこと二人揃って戻ってきたのか・・・?



実は貴子は認知症で、治のことがわからなくなってしまった。
何故か治に向かって「善さん」と呼びかけたりします。
これは切ないですよね・・・。
年寄りの記憶は新しいものから損なわれていき、古いものほど残るそうで・・・。
だから、はじめの結婚生活の記憶が残っているのはしかたのないことかもしれませんが。
困り切った治は善に貴子を「返す」というのです。
ムシがいいとも思えますが、貴子の幸せを思ったことでもあるような・・・。



有無をいわさず治が貴子を置いていってしまったので、
やむなく善は貴子の面倒をみようとするのですが、思った以上に、貴子は壊れている。
それでもふと、記憶がクリアになることもあるのです。
特に、貴子が以前演じた村歌舞伎のセリフなどはスルスルと出てくる。
ちょうど村では歌舞伎公演が目前に迫っています。
平家の落ち武者・景清と、源氏に嫁いだ道柴の物語。
しかし、道柴を演じるはずの人物が怪我をしてしまい・・・。



村歌舞伎のシーンが良かったですね。
私たちの知っている歌舞伎よりももっと泥臭く庶民的。
野外で行われるそれは、江戸の昔から、人々の大切な娯楽だったのでしょう。
原田芳雄さん演じる景清は、実に迫力がありました。
瑛太さんが、回り舞台を舞台下で人力で回す役。
まあ、なんて贅沢な俳優の使い方ですこと。
そうそう、三國連太郎さんと佐藤浩市さんも出演している。
二人同時に出演するシーンはなかったのですが。
三國連太郎氏、遺作からひとつ前の出演作のようです。

大鹿村騒動記【DVD】
原田芳雄
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「大鹿村騒動記」
2011年/日本/93分
監督:阪本順治
出演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、三國連太郎、瑛太、石橋蓮司
郷土性★★★★★
ユーモア度★★★★☆
満足度★★★★☆