萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Short Scene Talk ふたり暮らしact.2―Aesculapius act.12

2013-12-16 20:35:00 | short scene talk
二人生活@avenue
Aesculapius第2章act.1とact.2の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.2―Aesculapius act.12

「光一、帰りは反対側のホームになるからね?ホームの番号と行先も地図のメモに書いてあるから(光一は電車に慣れてないから心配だな)」
「ありがとう雅樹さん、解らなかったら誰かに聴くね?(俺が電車乗ったこと少ないから心配させてるねメモ嬉しいな大事にしよっと)」
「聴くなら駅員さんかお店の人にしてね、通りがかりの人はダメだよ?(美少女だって攫われたら困るやたら人に声かけないでほしいな心配)」
「うんっ、駅員かお店の人だね。でも雅樹さん、奥多摩では道に迷ってる人には教えろって言ってたのに、なんでココだとダメなの?」
「街中は悪い人も多いんだよ、知らない人に声かけられたら逃げてね?(逃げてもらうのが一番安全だホント全力で逃げてほしいな)」
「ん、きっちり逃げるね?雅樹さん、帰りは何時くらい?(飯の炊ける時間があるからね、)」
「7時には帰るよ、それまでお留守番よろしくね、玄関も鍵ちゃんとかけるんだよ?(田舎でオープンに育ってるから心配だな)」
「ん、きっちり戸締りするね?夕飯リクエスト決ったらメールしてね(笑顔)」
「うん、いま電車で考えてメールするよ(ああ一緒に暮してるって会話だ幸せ夕飯は光一も好きなものがいいな楽しみだな喜照)」
「うんっ、大学の話また聴かせてね?帰り気をつけてね(雅樹さんの先生やってるとこ見てみたいね?)」
「光一も帰り気をつけてね、門限は5時だよ?(笑顔)(なんか門限とか言うの幸せだな父親兼夫って感じがなんか良い萌照)」
「ん、4時には家に戻るから心配しないでね、いってらしゃい(笑顔)(早く帰ってきてほしいね、でも仕事だからワガママ我慢)」
「いってきます(笑顔)(こんな可愛い笑顔ほんと早く帰りたくなるケーキとプレゼント先に取り行こうケーキは研究室の冷蔵庫に置かせてもらえるし)」
「雅樹さん、まだ手振ってくれてる(笑顔)(ちゃんと人を避けて歩いてる人混みすごいのに雅樹さんてホント運動神経イイよね)」
「さて、(まず本屋に行こうかね、それから電車に乗ってスーパー寄って帰って洗濯モン畳んで戸締りして、)」
「おい、すごい美少女がいるぞ、」
「ほんとだ、モデルとかそういう子かな、」
「(街路樹ってちょっと可哀想だね?山に植えたらデッカクなるんだろにさ)」
「私服だけどソコの高校の子かな、声かけてみっか?」
「おう、あんな美少女めったにないし声かけよ?地図見てるっぽいからソレで行こう、」
「(あのデッカイ四角の向こうが本屋だって言ってたよね、地図もそうだし)」
「ねえ、道解んないなら教えてあげるよ?(笑顔)」
「あ、(ほんとに知らない人が声かけてきたね?ダッシュで逃げなきゃだね)」
「おっ、ちょっと待って、かーのじょっ、」
「あれ?(なんか追っかけて来てるホント悪い人かもしんないね?)」
「ちょっ…マジ脚速いぞあの子…はぁ疲」
「ホントすげえ速いな、…っは、ちょっと無理かも疲」
「ふん?(アイツらへばったみたいだね、でもダッシュでこのまま本屋に行こ逃げてって雅樹さんに言われたし)」




Aesculapius第2章act.1とact.2の幕間、昨日の続きです。
光一の初都心単独行@新宿、雅樹の心配×光一の冒険譚ってカンジで、笑

第72話「処断3」加筆校正まで終わりました、宮田@七機書庫の謀議です。
このあとAesculapius「Pinnacle6」掲載すると思います。

取り急ぎ、




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第72話 処断act.3-side story「陽はまた昇る」

2013-12-16 10:00:14 | 陽はまた昇るside story
The mind of man is framed even like the breath 呼吸する思考



第72話 処断act.3-side story「陽はまた昇る」

見つめる画面の真中、点滅が数値を要求する。

「…ココまではロック解除も出来んだけどね、ちょっと最終関門は英二に任せたいよ?」

低めたテノールが微笑んでパソコン画面から振り向いてくれる。
困ったね?そんな眼差しの向うスクリーンは24桁の空欄が浮んでカーソル瞬かす。
この24桁を埋めれば自分の目的がすこし叶う、そんな思案と現実のリスクに英二は微笑んだ。

「光一、これってパスワード24桁を入れろってことだよな?」
「だよ?数字だけでOKなんだけどね、チャンスは1回きりって思うのが正解、」

書庫の隣室、作業台の片隅に据えられたパソコンは黒い画面が古めかしい。
現行では殆ど使用されていない旧式タイプ、それでも画面は点滅に息づいている。
白いグローブ嵌めた手に頬杖ついて底抜けに明るい目こちら見あげて、からり光一は笑った。

「忘れ去られたパソコンってコトがアクセスも解除も出来たんだけどさ、ソレだけにアシも付きやすいかもよ?中止するんなら今だね、」

中止するなら今、

そんな台詞に警鐘と忠告が自分を見上げてくれる。
ありのまま現状を告げてくれた、その笑顔に英二は穏やかに微笑んだ。

「痕跡を残す事が目的だから、」

答えて制服の胸ポケットから取りだし、感染防止グローブを両手に嵌める。
隣は椅子ごと退いてパソコン前が空く、その跡に立つと英二はキーボード叩きこんだ。

“191912181962040419810526”

この番号この並び以外は無い、
その確信ごとエンターキーを押し、画面は開かれた。

「へえ…なんで解かった?」

ため息ごとテノールが尋ねて画面のぞきこむ。
どういう魔法だろう?そんな眼差しに英二は事実を告げた。

「この24桁は一人の人間の日付なんだ。ターゲットで、それも特別な感情がある相手なら関係の深い番号を選ぶだろ、」

特別な感情、それに関係の深い番号を選ぶ。

そう告げた隣で吐息ひとつ、透明な瞳ゆっくり瞠られる。
いま告げた言葉に辿らせる「番号」の意味は酷い、それが自分には解る。
だからこそ言わせる傷みも自分が負いたくて英二は穏やかに真相を告げた。

「このファイルが作られた最初は1962年より前だ、もちろん当時はパソコンじゃなくて紙だけどな、あの男はファイル名も計画も変えていない。
最初に考えた1962年の計画通りに最初の事件を起こさせて、次の計画も19年後って決めた通りに起させてる。そのターゲットを記録した24桁なんだ、」

ひとりの人間の日付、ターゲットを記録した24桁。

それをパスワードに選んだ、その心理に思考回路が見える。
唯ひとり特定の人物に拘る、そんな固執の理由と原因は歪なままに今、真相を開く。

「じゃあ…誕生日とヤらされた日と、ヤられた日ってことかね?」

低めたテノールの質問がすこし溜息を吐く。
それが人間らしい温度に優しくて、けれど冷徹を抱いたまま英二は微笑んだ。

「あの男らしいだろ?生まれた日と、堕とした日と、壊した日なんてさ…狂ってるよな、」

1919年12月18日に湯原晉博士は生まれた。
1962年4月4日、晉の父である敦は自身の誕生日に死んだ。
そして1981年5月26日のパリ第三大学構内、晉は親友もろとも殺された。

「ソレって…最後も予定通りの日付だった、ってこと?」

問いかけに瞳だけ頷いて英二はパソコン画面に向きあった。
旧式の画面は昏く視辛い、その不鮮明な画像と文字にファイルが開かれる。
これは前にも見たことのある画面、ここからまず試すため名前ふたつ入力して微笑んだ。

「うん…人事ファイルから二人とも消えてる、」

“該当者無し”

素っ気ない検索結果が暗い画面から見返す。
確かに二人は在籍している、けれどデータは不在を示す。
現実とデータの乖離、それ自体が証拠になる矛盾に英二は微笑んだ。

「光一、最期のファイル閉鎖は逆順に閉じていけば良い?」
「…英二?」

問いかけに透明な瞳こちらを見て、細められる。
思案するような眼差しが自分を映す、その怜悧に笑いかけた。

「国村さん、執務室に戻って下さい。5分後に後藤さんから電話が来ます、」

それってどういう意味?
そう口許が動く寸前、内線電話が鳴った。

「黒木さんからの呼び出しです、出て下さい、」

予定通り笑いかけた先、細められた瞳が笑いだす。
吐息ひとつ唇の端あげて微笑んだ。

「ふん、仕組んだね?」

どうやった?
そんな眼差しの問いかけへ穏やかに微笑んだ。

「黒木さんに渡した書類、一通だけ小隊長の検印が漏れています。俺が未決済箱から出して、そのまま黒木さんに回しました、」

事実のまま応えた隣で雪白の貌が呆れたよう笑いだす。
白いグローブ外しながら立ちあがる、その端整な制服姿に英二は笑いかけた。

「鍵は皆さんの前で返却して下さい、俺は休憩場所で書類チェックします。行先は黒木さんだけが知ってますから、」
「ふん、黒木もズイブン遣われてるね、」

笑って軽やかに制服の肩を雪白の手が敲く、そして内線電話を取ってくれる。
短い言葉を交わしすぐ切って、そのまま廊下への扉開くと長身は出て行った。

「ありがとな、光一、」

遠ざかる靴音に微笑んで英二は立ち上がり、扉を鍵かけた。
かたん、かすかな施錠音はすぐ消えて静謐が廊下を鎮まらす。
もうフロアに誰も居ない、いま無人の空間で英二は微笑んだ。

「…ほんと幽霊だな、俺は」

この部屋の鍵を光一が指定場所に戻す、そして執務室に戻り黒木が訪れる。
検印して会話し、すぐ後藤から電話が来て合同訓練と自分の資格取得について話すだろう。
いま責任者の光一が退室し施錠された、だから自分は「休憩場所」で書類チェックしている。

だから今この書庫室も作業室も無人、そんな設定の空間でキーボードを叩いた。

―きっと確かめに来るだろな、明日か明後日か、早ければ今すぐに、

誰もいるはずの無い場所、そこに忘れ去られた古いパソコンからアクセスされる。
そんな事実が「あの男」たちの行動を惹き起す、それを待っている。

この場所から誰がファイルにアクセスしたのか?

それを探りに来るだろう、そして意図を知りたがる。
そして意図する人間が誰なのか調べるだろう、そのとき自分が疑いに挙がれば良い。
今このとき自分だけが七機の誰とも接触していない、自分だけアリバイ証言者がいない、だから疑われる。

それでも今このアクセス時間帯に誰もこの場所に居るはず無かったら?
誰もいるはずの無い時間、それなのに「別」の痕跡が発見されたら被疑はどうなる?

―今の俺はノーマークだ、だから今マークさせて完全に外してやる、

マークされて探られて「潔白」とされたならマーク対象外になる。
この潔白を証明するチャンスを今この時にほしい、だから自分からマークされに行く。
そのためにも無理なファイルアクセスで痕跡を残したくて「国村小隊長」に協力させた。

―光一のことを妬む人間はいても疑う人間はいない、警視庁でも山でも、

警視庁と山と二つの世界で卓越したカリスマ、しかも後藤副隊長と蒔田地域部長が保証人になっている。
そんな光一が書庫を開扉して訓練計画と遭難対策の為に過去データを閲覧した、それは職務上の権限で業務にすぎない。
そして書庫の鍵を返却する姿を何人か目撃した後すぐに執務室の席で検印し、電話もとったなら光一のアリバイは完全に成立する。
ファイルがアクセスされた時間帯の国村小隊長は書庫から戻り執務室に居た、それが自分にとってもアリバイ成立させる鍵になる。

「…鍵の存在が鍵になる、って皮肉だな、」

ひとりごと微笑んでロック解除されたファイルをチェックする。
暗い画面に並んだ日付と年齢、氏名、体格特徴、能力適性、経歴、配属先を追ってゆく。
そこに共通点が幾つかあるだろう、それを思案しながらメモリー媒体を接続させてコピー操作した。

「よし、」

正常に作動、そんな反応を見て次のファイルへ進む。
そこでもパスワード要求が現れて7桁、黒い画面で空欄は点滅し始める。
今度はアルファベット全角7文字、その表示に感染防止グローブの指は即応した。

“FANTOME”

この7文字から自分は連鎖の鍵を掴んだ。

紺青色の表紙くるまれた一冊を手にしたのは去年の夏、新宿の書店が最初だった。
あの一冊を陳列棚から取って周太に手渡した、その日に自分は恋慕を自覚した。
そして叶えた恋愛の秋、湯原家の書斎で見つけた同じ本の古書は欠落していた。

『Le Fantome de l'Opera』

いつ、誰が、何の目的でページを切り落としたのか?
なぜページを切り落としてまでも本を棄てなかったのか?
切り落としたページの行方はどこなのか、現存するのか?

この疑問に答えを探すまま書斎机の抽斗にも「鍵」を見つけ、その鍵は自分に託される。
残されたページは冒頭とラストだけ、その欠落部分は連鎖の原点を抹消しながら示してくれた。
この謎に踏み込んだ最初のパスワードでエンターキー押し、そして半世紀のファイルが目覚めだす。

「はっ…ほんと似てるかもな、」

呟きは微笑んで等身大の自分を見せる。
いま開かれたファイル内容には作成者の意志と性質まで現す。
それが自分と似ている、そう見とめざるを得ない事実が可笑しくて疎ましい。

―緻密で理詰め、でもパスワードは感情的だ…俺と似てる、

整備されたファイルは生真面目、データの精度は勤勉、分析は冷徹なほど適確。
どこかデジタルじみた緻密さが画面から見える、それは明晰な頭脳だと教えさす。
冷徹で明晰、そのくせパスワードは感情が燻ぶるままターゲットを妄執ごと捉まえる。

そんな頭脳と性向は自分と似ているだろう、けれど大きな違いへと英二は穏やかに微笑んだ。

「でも俺はもっと我儘だ、」

声にしながら感染防止グローブの指がキーボードふれて、証拠は記憶媒体に墜ちた。







(to be gcontinued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする