萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.2 ―Night Before Aesculapius

2013-12-24 22:05:08 | short scene talk
二人生活-4ヶ月半@the day before Christmas Eve 2
雅樹27歳、光一12歳の12月23日



Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.2 ―Night Before Aesculapius

「ね、オヤジ?街のクリスマスってズイブン派手だよね、あっちこっち光だらけだね?」
「イルミネーションって言うんだけどね、冬の寒いカンジを光で綺麗にしようってやってるワケ、結構キレイだろ?」
「俺は星の方がイイね、それもオヤジと見たってナンも楽しくないねっ(雅樹さんと見たらキレイかもしれないけどさ)」
「あははっ、雅樹と見たらキレイだろうって考えてんだろ?ソンナむくれてんじゃないよ、もうじき雅樹に逢えるんだしさ、笑」
「大きなお世話だね(雅樹さんと逢ったら即・笑顔だもんねっ)ふふんっ、」
「ほら光一、着いたぞ?お初コート着てけよ、セッカク買ってやったんだしね、光一は白が可愛いしさ?笑(雅樹の反応が楽しみだね笑)」
「オヤジに可愛いって言われても嬉しくないね、(雅樹さんコレ見てなんて言ってくれるかね)」
「はいはい、ほら行くぞ?(憎まれ口で素直に着るとこが可愛いねえ口悪いけどホント見てくれ天使だね笑)」
「へえ、夜の病院ってナンカ雰囲気が違うね?(ここに雅樹さん毎晩いるんだね)」
「なんでも夜と昼の貌って違うんだよ、笑(雅樹の夜の貌は光一だけが見てるんだよね別嬪だろねえ笑)」
「山も夜と昼で違うもんね、あ、(あの白衣の人ってもしかして)」
「お、いた(笑顔)雅樹!(さてサプライズの反応はどうだろね?)」
「明広さん(笑顔)用事ってな…光一?(あれ僕もしかして夢見てる逢いたくて?)」
「雅樹さんっ(極上笑顔)(雅樹さん白衣姿もカッコいいね抱きつきたいけど重箱持ってるから我慢だね?照)」
「光一、どうして?(笑顔)(ああ本物の光一だ喜すごい可愛い恰好してる白コート&リボンタイ白シャツなんて天使みたいベストスーツも膝丈ズボン可愛いな萌)」
「オヤジがパーティー行くのに同伴するとこだねっ(笑顔)」
「ど…(それなんか違うよ光一それダメ照困)同伴ってそんな言葉どこで覚えたの?」
「オヤジの本箱にあった小説だよ、めかしこんだキレイドコ連れて仕事場に行くのが同伴でしょ、オヤジも俺をめかしこませたね、」
「同伴って違う意味もあるから遣わない方が良いよ?でも本当に今日はおめかしだね、光一(照笑顔)(ほんと可愛い僕こそ連れて歩きたい萌照って変態ぽいな僕)」
「パーティ―だからっておふくろに着せられたね、でも衿のリボンとか女っぽくないかね、コンナでっかいリボンだし、」
「よく似合ってるよ?リボンの黒がソックスとズボンの黒と映えてる、膝丈のズボンも光一は似合うね(笑顔)(ハイソックスの脚すごく綺麗だな照)」
「雅樹さんが似合うって想うならイイね、ね、今度この恰好したらデートしてくれる?(極上笑顔)」
「うん、しようね?(照笑顔)(ああなんて可愛い貌で笑ってくれるんだろう本当に天使だ白コート白シャツにリボン可愛すぎるどうしよう萌)」
「さて、そろそろお二人さんの世界から戻ってきてね?俺も遅刻はアンマリできないしさ、笑(ほんと二人とも可愛いね雅樹デレすぎ笑)」
「ね、雅樹さん、これ差入だよ?ホントは出来たて食べさせてあげたいんだけどね、明日ムリだって言うから持って来たね(喜んでくれるかな)」
「ありがとう光一、明日は帰れなくなってごめんね?(差入すごい嬉しいどうしよう大喜)」
「仕事だから仕方ないね?でもホントは一緒にいたいからね、弁当だけでも持って来たね?」
「ありがとう、僕も光一と一緒にいたいよ?照(ほんと帰りたいよイヴは一緒にいれるって想ってたのにな溜息)」
「ん、でも正月は帰ってくるんでしょ?お社のことあるし、」
「遅くても30日の朝には帰るよ、また一緒に元旦のお祀りしてくれる?(年末年始は忙しいけど一緒にいられるから照嬉)」
「うんっ、一緒に夜明かししようねっ、ふたりっきりしようね雅樹さん(極上笑顔)(お社の夜は独り占めだもんねっ神サンも居るけど)」
「さて光一、そろそろ行くよ?雅樹、忙しいトコ邪魔してごめんな、でも良いクリスマスプレゼントだろ?笑」
「いちばん嬉しいプレゼントだったよ、ありがとう明広さん(笑顔)(休み取れたらすぐ御岳に帰ろう日付け遅れでも光一にクリスマスプレゼントあげたいし明広さんにもお礼しないと)」
「雅樹さん、休み取れたらちっとでも帰ってきてね?それまで通信簿も誰にも見せないでとっとくからね(雅樹さんに一番にみてほしいね)」
「ありがとう、帰ったらクリスマスしよう?遅くなるけど楽しいこと考えておくから(雪山でチョコマシュマロとかしてあげたいな)」
「うんっ、楽しみにしてるね(極上笑顔)雅樹さん、体とか無理しすぎないでね?」
「(笑顔ほんと可愛い照)ありがとう、光一も明広さんがお酒飲まないように監視役がんばってね?運転あるから(それより光一が呑まないか心配)」
「雅樹、俺の心配よりも光一の方がってトコだろ?(悪笑)(ちょっと煽ってやろっと笑)」
「え…明広さん?」
「今日はカメラマンと雑誌社のパーティーだからね、モデルの話とか来ちゃうかもしんない?(悪笑)じゃあまたな雅樹、行くよ光一、」
「え、…?(どういう意味?)」
「雅樹さん、弁当の感想また教えてね、(寂笑顔)またね、」
「うん、また電話するね(笑顔)(ああそんな寂しい貌されると僕ほんと今すぐ休みとりたくなるよ光一ほんと一緒にいたいよ)」
「はあ…溜息(行っちゃったな逢えて嬉しい分だけ寂しいなお弁当ちょっと食べよう)」
「あ…オムライスのおにぎり、照(これって5年前のクリスマスイヴと同じだ嬉しい光一ほんとうに僕を解かってくれてる嬉萌)」
「うん、おいしい(笑顔)(料理ほんと上手いよね光一って綺麗で可愛いし優しいしモテるんだろなって今夜パーティー心配になる)…大丈夫かな?」



Aesculapiusよりクリスマス譚、いま連載中の時間軸-4ヵ月半のワンシーン。
今朝の続きで光一12歳・小学校6年生の12月23日の2です。

遅くなりましたが第72話「初弾4」加筆校正も終わっています。
今夜は週刊連載『Savant』とクリスマス特別編を書きたいんですけど、日付け変わるかもしれません。
たぶん何かしら書くと思いますが、笑

取り急ぎ、





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山岳点景:紅色、冬の実

2013-12-24 14:02:43 | 写真:山岳点景


一昨日の神奈川某山にて↑見つけたモンです。
名前は調べてないんですけど、なんかよく見かけます。



コレは↑冬苺、焦点が葉っぱなんですけど、笑
この時季に野生で実っています、冬眠しない動物たちには良い食料ですね、




第72話「初弾4」オヤツ休憩に加筆校正Ver貼ります、
昼は慌しかったんで代わりにクリスマスっぽい?写真貼ってみました、笑

取り急ぎ、


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Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.1 ―Night Before Aesculapius

2013-12-24 10:40:35 | short scene talk
二人生活-4ヶ月半@the day before Christmas Eve
雅樹27歳、光一12歳の12月23日


Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.1 ―Night Before Aesculapius

「光一、せっかくオヤジサマが買って来てやったプリンをソンナ仏頂面で食うんじゃないよ、笑」
「プリンは旨いけどオヤジは余計だね、ふん(拗顔)」
「ソンナむくれてバッカいたらね、雅樹も可哀想だろが?雅樹だって好きで夜勤になっちゃったワケじゃないんだからさ、」
「そんなの解ってるけどね、6日連続ってナニさ?ふんっ(拗顔)(医者だから仕方ないけど明日だけは帰れるんだったのに)」
「あー、確かに明日の休みが無いと6日連続か、そりゃヒドイね?(ブラック企業と変んないねえこれじゃ)」
「こんなの陰謀だねっ、クリスマスの3日間全部だなんてさ、ふんっ(拗顔)」
「あー、確かに陰謀かもしれないねえ、お色気ナースもお色気事務員もいるんだろしさ、ねえ?(悪笑)(雅樹狙いの娘は多いもんねえ?)」
「オヤジ、今すぐ車出して?どうせ今から出掛けるんでしょ、途中まで乗せて(プリンどころじゃないね)」
「やめとけ光一、雅樹が可哀想だね(笑顔)」
「ナニもう行先解ってるみたいな貌だねオヤジ?(やっぱわかるんだろうけどさ)」
「職場にガキンチョが乗り込んで来たら迷惑だろが、ねえ?笑(しかもERセンターじゃ雅樹も困るだろうに)」
「オヤジは俺のこと出版社も連れてったね、雅樹さんのことだって連れてってた癖に、ふんっ(もう勝手に電車乗って行っちまおうかね)」
「あー、雅樹と雅人を出版社のクリスマスパーティーに連れてったことあったね?雅樹に聴いた?」
「だね、小6のとき連れてってもらったって言ってたね、今の俺と同じ年だもんねっ、ふんっ(拗顔)(プリン食い終ったし行こうかね)」
「奏子、ちょっと光一にめかしこませて?(あーもう俺が監視しとこオヤジの責任ってやつだね笑)」
「あら、出版社のパーティー連れてくのね、いいわよ(笑顔)(光一のおめかし可愛いから萌)」
「え、オヤジ俺のこと連れてく気?(勝手に雅樹さんとこ行こうって考えてんのバレた?)」
「勝手に雅樹のトコ乗り込まれちゃ困るからね、俺がオメツケしてる方が良いだろ?(こうなった光一は奏子でも押え利かないしさ笑)」
「だったらさ、ちっとだけ雅樹さんトコ寄ってよ?なんか旨いもん差入したいね(病院密着はダメでも顔くらい見せてよ?)」
「おふくろ、雅樹の好きなモンなんか重箱詰めてやって?(光一ほんと健気だよな雅樹にはホント可愛くなるんだからさ萌笑)」
「俺が作って詰めるね、オヤジ出掛けるの何時?(クリスマスだもんね手料理くらい食べてほしいね)」
「大学病院経由だったら30分後には出たいね、顔見て15分くらいは話す時間あるだろ?(笑顔)(あーあホント光一は雅樹ばっかりだね)」
「じゃ15分でナンカ作るから待ってて、ばあちゃん台所遣うよー(たぶん飯炊けたとこだろから握飯とかナンカ出来るそうだアレしよっ)」
「奏子、光一のオメカシだけどね、本気で可愛い別嬪に仕立ててやってよ?あのリボンタイのシャツとかさ(笑顔)」
「いいけど明さん、光一また女の子に間違われるわよ?普通に男の子の恰好させても間違われちゃうのに、笑(でも中性的ファッション似合うのよね)」
「ソレでイイね、間違われる方が好都合だからさ、イロイロね?(悪笑)」




Aesculapiusよりクリスマス譚、いま連載中の時間軸-4ヵ月半のワンシーン、光一12歳・小学校6年生の12月23日です。

今日明日は『Short Scene Talk』クリスマス譚を幾つかUP考えています、
誰視点の読みたいとかリクエスト頂ければソレ書くんでコメントにでも。
コメントは管理者認証するまで非公開なのでコッソリ出来ます、笑

第72話「初弾4」冒頭だけUPしてあります、昼休憩に加筆校正Verチェックして貼れたらなと。
今日は週刊連載『Savant』とクリスマス特別編を予定しています、UP時間は合間にチェックしてなので未定です、笑

取り急ぎ、




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第72話 初弾act.4―another,side story「陽はまた昇る」

2013-12-24 00:10:07 | 陽はまた昇るanother,side story
In one society. that all



第72話 初弾act.4―another,side story「陽はまた昇る」

とさり、ベッドカバーに寝転んで吐息こぼれる。

まだ洗い髪は湿ったまま、けれど疲労感は乾くのも待てない。
とにかく横になりたかった、その欲求通り横たわって周太は微笑んだ。

「でも発作は出てない…」

安堵の声と寝返りうった視界、窓はカーテン閉じられる。
開いても星の無い夜空と街の灯がまぶしいだけ、そんな今に去年の秋が映りだす。

―雲取山、楽しかったな…英二のブナに会えて、山小屋に泊って…星とココアと、

懐かしい時間ごと静かに呼吸して気管支の感覚を探る。
咳の予兆も無い胸は休暇の養生が良かった、そう解るから先が少し不安になる。
あんなふうに穏やかな日々を過ごせば治るだろう、けれど叶わない現実に去年の秋を懐かしむ。

―あのときヤクシソウが咲いてた、綺麗な沢の畔のところ…落葉松の金色まぶしくて、英二の髪が金色に透けて…きれいで、

霜月の奥多摩は錦秋、あの眩い記憶が大好きな笑顔を映す。
黄金の森で深紅のウェア姿は白皙を輝かせた、あのとき笑顔は唯ひとり自分だけに贈られた。
あの秋は幸せだった、互いに唯ひとつ想いあえると信じていた、けれど今もう違う現実に自分は居る。

―本当に僕は英二を待たせて良いのかな…いつ帰られるのか解らないのに、

周太、来年の夏は北岳に行こう。

そう約束してくれたのは数日前、まだ一週間も経ってない。
実家の自室で静かな時間は幸せで、告げてくれる言葉すべてを信じたいと願った。
あの言葉たちを今も信じていたい、それでも今日一日に見つめた現実は檻のように思える。

『もう4年の後期だから講義数も少ないしな、大学の通学許可が貰えたから入隊テストを承諾したんだ』

真昼の食堂、あの言葉と笑顔が見あげる天井に映りこむ。
いつもどおり箭野は爽やかな笑顔だった、声も低く透って落着いていた。
あの落着きは覚悟の現れだろう、そう解るから言葉の意味も見えてしまった。

―きっと箭野さん、何度も入隊テストを断っていたんだ…大学を卒業するために、

東京理科大理学部第二部、そこに箭野は夢と未来を描いている。
いつか理学の道だけを進みたい、そう願うからこそ警察官としての今を実直に務めている。
そんな箭野の姿は自分の森林学に抱く進路と似ていて、それ以上に父と重なって他人事に想えない。

―箭野さんは本当はSATに入りたくないんだ、でも今回は断りきれなくて…だけど警察を辞めることも出来ない、ご家族のために、

古本屋を営む祖父と大学生の弟、二人きりの家族を支えるため箭野は高卒で警察官になった。
今年25歳の箭野は7年間を大黒柱として生きている、そんな責任感が辞職を思い留まらせるのだろう。
きっと父も同じ想いだった、その過去を父の友人は涙と教えてくれた、だからこそ「檻」なのだと見える。

―お父さんも理由があって警察官になってSAPに入隊したんだ、他の道もあったのに辞められなくて…たぶん小説の通りなんだ、

廻らす想いに立ち上がり、クロゼットの鞄で手探りする。
そこに入れたままのハードカバーを取りだして、ソファに座りこんだ。
紺青色の表紙はタイトルを銀文字きらめかす、この一冊に祖父の想いを開いた。

“Pour une infraction et punition, expiation” 

印字されたフランス語の意味は「罪と罰、贖罪のため」この言葉に現実がある。
それを伝えたくて祖父が書残した小説は父が警察官になった原点「事件」を示す。

―この事件は仕組まれた罠だったんだ、でも、どうして仕組んだの?

小説に記された「事件」と同じ惨劇が、たぶん実家で起きた。
そうだとしたら曾祖父の死因から全てが隠匿されたのだと解かる、けれど証拠はまだ無い。
それでも少し調べたら「事件」の現実を探せるだろう、その方法は図書館に行けば容易い。

でも疑問は残る、なぜ「彼」は祖父を標的に選んだのだろう?

―この小説はお祖父さんの視点だけど原因は解かるよね、でも、あの人の理由は解らない、

この小説通りなら祖父は戦時中に狙撃手を務めていた、その才能を「彼」は惚れこんだ。
けれど祖父は戦後すぐ留学してしまった、そのまま「彼」の求めを断り学問の世界を選んだ。
そんな祖父を裏切りのよう「彼」は感じたのかもしれない、そのことは祖父も小説に記している。

けれど、裏切りの報復だけで「彼」は父まで巻き込むだろうか?

「…どうしてそこまでしたんですか、あなたは」

そっと言葉こぼれて白いページのフランス語を見つめてしまう。
“Pour une infraction et punition, expiation” 罪と罰と贖罪
この言葉に祖父は告発の意志を籠めた、そして個人的にも伝えたい相手がいる。
その一人は祖母の従妹である顕子だろう、けれど他にもいるから印刷したのではないだろうか?

―おばあさまだけに伝えたいならサインで書くよね、でも印刷なら複数の相手に向けてるってことなんだ、

告発、懺悔、そんな想いが異国の言葉あふれくる。

それは祖父自身が犯した罪のため、その罪は殺人だろう。
けれど他にも罪を犯してしまった、そのことを祖父自身が無意識にも知っている。
だからこそ小説という形で出版に遺した、そこにある祖父の遺志と父の運命ごと周太は本を閉じ、抱きしめた。

「おじいさん…僕にどうしてほしいの?」

独りきりの部屋、自分の聲ひとつ響いて静謐になる。
この小説を、この言葉を、この現実を祖父が記した想いはどこにある?
その全てを知るために今もう佇んでいる場所、そこにある現実が一つの声になった。

『伊達東吾です、』

今日、初めて会った貌は真直ぐ名乗った。

浅黒い精悍な貌は眼差しが強い、その強靭は聡明に真直ぐ鋭くて穏やかだった。
いつも冷静でいるのだろう、そんな空気は仕草ひとつ無駄のない身ごなしが機敏に静かだった。
身長は自分より少し高い、たぶん171cm位だろう、けれど身長以上に大きく見える体躯は端整で際だつ。

―同じ制服を着てるのに目立ってた、すこし英二と雰囲気が似てる、ね?

顔立ちも身長も全く違う、けれど眼差しの底が似ている。
聡明で真直ぐな瞳は鋭いほどに澄んで、綺麗で、どこか陰翳が深い。
あの瞳を見つめるたび自分は想いだすのだろう、そんな予兆にコール音が響いた。

「…あ、」

声ひとつ手を伸ばして携帯電話を開き、着信人名に鼓動が弾む。
この名前を今も想っていた、そんな自分に気恥ずかしいまま通話を繋げ微笑んだ。

「こんばんわ、今日もお疲れさま…電話ありがとう、」

笑いかけて、途端に胸迫り上げて送話口を握りしめる
そのままクッションに顔埋め咳き込んで、緊張がこみあげた。

―英二の電話に緊張してるんだ、余計なこと話したらいけないって…だから気管支が驚いただけ、

警視庁警備部警備第一課 Special Assault Team 警視庁特殊急襲部隊狙撃班

いま自分が所属する部署は全てが秘匿、何もかもが守秘義務を課されてしまう。
それは他愛ない会話にも洩らせない、その緊張ごと咳を治めた電話越し英二が笑った。

「周太こそ電話出てくれてありがとう、初日お疲れさま、」

初日、

この言葉にクッションから顔あげて、そっと溜息こぼれる。
こんな質問は今の自分には意地悪、そんな想いに綺麗な声は続けた。

「先輩とは仲良く出来そう?」
「ん…そうだね、」

頷きながら微笑んでも途惑ってしまう。
こんなふう訊いてくる意図、それを見つめる向う問いかけられた。

「周太、今日は飯、何食った?」

他愛ない質問、けれど答えに守秘義務の壁が遮らす。
朝と夜は単身寮で独り食事する、けれど昼食は職場に佇む秘密が鎖してしまう。
どうしたら巧く隠せるのか、そう思案するまま裂かれる傷みごと周太は微笑んだ。

「朝はパンとココアだよ?お昼は…焼魚の定食でね、夜は昨夜しといた肉じゃが、」

今日は何を食べたのか?
そんな会話すら自由を奪われる現実を突きつけられてしまう。
それでも食べていない夕食に想い伝えた電話越し、大好きな声は笑ってくれた。

「周太の肉じゃが食いたいな、こんど食べさせてよ?」

ほら、解かってくれてる?
いま制限される会話、それでも約束を笑いかけた。

「ん、また肉じゃがしてあげるね?…最初に作ったの、いつだったか憶えてる?」

ごく普通の家庭料理、けれど自分には特別な料理になっている。
その幸せな記憶と理由に大好きな声は笑ってくれた。

「周太の誕生日の昼飯だよ、俺、七杯は食べたよな?」
「ん、あのとき俺ね、五合炊いて…次からもっと炊こうって決めたんだ、」

答えながら幸せな秋の記憶が笑ってくれる。
いま十月、もう11ヶ月前になる時間は今もまだ優しいまま温かい。
この温もりに勇気ひとつ約束を見つめて、そっとシャツの胸ポケット握りしめ笑いかけた。

「あのときより美味しい肉じゃが作ってあげる、だから…信じて待っててね、」

今は出来ない、それでも「いつか」を信じてほしい。

去年の秋に初めて唯ひとりの為に料理した、あの想いは今も枯れてなどいない。
あれから冬、春に夏、幾度も自分は英二のために泣いて、それでも枯れない想いは今も温かい。
もう幾度も泣いた、だからこそ永遠になってしまった想いごとシャツ握らす向こう恋人は微笑んだ。

「うん、待ってるな?周太、もう寝るとこ?」
「ん、すこし…本読んだら、」

また言葉を呑みこんで、それでも答える。
このあと今日の仕事手順をノートにまとめて、それから救急法と鑑識のファイルを読む。
そんな予定をしている、けれど言えない沈黙の電話越しから綺麗な低い声は笑ってくれた。

「あまり無理するなよ、体よく休めてくれな?おやすみ周太、」
「ん、ありがとう…おやすみなさい、また明日ね、」

また明日、

明日、この言葉に喜びと現実が自分を見つめる。
明日が来る、そして次の明日が来る、その先には「いつか」の時へ辿り着く。
いつか疑問も檻も全てを解く、そう信じるまま微笑んで周太は電話を切った。







【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

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