萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.5 ―Night Before Aesculapius

2013-12-27 22:10:08 | short scene talk
二人生活-4ヶ月半@the day before Christmas Eve 5
雅樹27歳、光一12歳の12月23日



Short Scene Talk ふたり暮し前 Christmas act.5 ―Night Before Aesculapius

「ね、雅樹さん?挨拶が済んだら後ってどのくらい一緒にいられるの?(もうすこし一緒にいたいねセッカク逢えたんだし)」
「ケーキひとつは一緒に食べて行けるよ?(二人っきりになれる席があるといいのにな照)」
「うんっ、一緒に茶しようね?(極上笑顔)(雅樹さんも一緒にいたいって思ってくれてるね喜)」
「うん(照笑顔)(ああその貌ホント可愛い普通にしてても綺麗な子なのにリボンタイにベストスーツ可愛すぎ膝丈ズボン膝小僧ハイソックスとか反則だよ光一どうしよう萌照)」
「雅樹さんが挨拶してる間って俺、どうしてたらいい?」
「一緒にいてくれる?ケーキのお皿持ったままでも良いから(傍に居ないと心配さっきの男みたいの寄ってきそう会場から視線が光一に向いてくるし)」
「ん、ガトーショコラと待ってるねっ(笑顔)」
「ありがとう、照 ちょっと隣で待っててね?(ほんと可愛いな今夜の光一このまま一緒に居られたら良いのに)」
「社長、ほら来ますよ?(さて光一モデルの話に雅樹の反応どんなだろね笑)」
「吉村先生、今夜はようこそ(笑顔)」
「お久しぶりです、ご無沙汰してすみません(笑顔)(ホントお会いするの久しぶりだな)」
「よくおいで下さいました、相変わらず素晴らしい研究を発表されているそうですね?(また佳い男になったな子供の頃から美形だけどモデルしてくれたらいいのにおや?)」
「こちらに費用を頂いているお蔭です(笑顔)いつも国村共々お世話になっています(高校の時から十年だな)」
「こちらこそ素晴らしい記録のスポンサーになれて光栄ですよ?(笑顔)(国村さんの御嬢さん吉村先生にべったりだな微笑そうか)国村さん?」
「はい?(おっ社長も気付いたねコンダケ光一がべったりならさ笑)」
「御嬢さんのこと、交渉相手は吉村先生という事ですか?(きっとそうだろうな懐いてる微笑)」
「ですね、ウチの子の保護者は雅樹なんです(笑顔)(さて雅樹と光一はどうするかねえ笑)」
「ん?(交渉相手ってなんだろねオヤジなにしてくれてるワケ?)」
「吉村先生、国村さんに御嬢さんをモデルにした写真を依頼してるところなんです、許可してもらえませんか?(吉村先生も一緒に写ってくれないかな)」
「光一をモデルに?(明広さんどういう魂胆かな光一をどんなふうに撮るんだろうっていうか御嬢さんって言われた?)」
「はい、山の女神をモチーフに御嬢さんがモデルをされたら佳い画になると思うんです、いかがでしょう?(先生もって言いたいけど忙しいだろうな)」
「山の女神ですか…(ホント光一は女神か天女って感じだけど照照でもいろんな人に見られるのも嫌だな僕って独占欲強すぎる困照)」
「雅樹、どう想う?笑(あんまり他人の眼に晒したくないとか考えてんだろな笑)」
「そうだね、(ホントは反対だけど)光一はモデル、してみたい?(今この会場でもモテて大変なのにモデルなんてしたらどうなるんだろ心配)」
「雅樹さんと一緒なら何でもしたいね(笑顔)」
「じゃあ僕次第ってこと?(笑顔)(僕に任せるなんて光一そんな可愛いこと言うの?)」
「ん、雅樹さんと一緒の時間なら嬉しいからね?でも雅樹さんと一緒の時間が減るならしたくないね(それに雅樹さんの写真は俺が撮りたいね)」
「社長、申し訳ありません。今は断らせて頂きます、光一も学校があるので(笑顔)(まだ小学生なんだし)」
「そうですか(溜息)でも学校のことは大事ですし、またお願いします(機会があったらまた誘ってみようこんな美少女もったいない)」
「はい、すみません(笑顔)」
「雅樹さん、早くケーキ食べたいね、(もう話済んだし雅樹さん独り占めしたいね)」
「うん、食べようね?社長、お断りしてすみません(笑顔)(光一ここから離れやすい様に言ってくれてるでも理由がケーキって可愛い萌)」
「いいえ、こちらこそ急に申し出てすみません(笑顔)ゆっくり楽しんで行ってくださいね(それにしても国村さんの御嬢さん本当に美少女だな萌)」
「ありがとうございます(笑顔)光一、お待たせ?(やっと二人でゆっくり出来るあと一時間くらいは大丈夫だし喜)」
「うんっ(笑顔)ね、アッチまで皿持ってこ?ゆっくり座れそうだよ、(ソファだとくっついて座れるね喜)」



Aesculapiusよりクリスマス譚、いま連載中の時間軸-4ヵ月半のワンシーン。
一昨日掲載の続き、雅樹27歳&光一12歳小学校6年生の12月23日@出版社主催パーティーです。

Aesculapius「Pinnacle不尽の燈 act.9」加筆校正まで終わりました。
第73話「残像1」加筆まで終わっています、読み直し校正する予定です。

取り急ぎ、






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第73話 残像act.1-side story「陽はまた昇る」

2013-12-27 08:40:22 | 陽はまた昇るside story
shadowiness 影法師の視線



第73話 残像act.1-side story「陽はまた昇る」

冷水に、沁みる。

ふりそそぐシャワーに髪かきあげて体幹の芯から眠りを醒ます。
肌弾く飛沫は昨日より冷たい、そんな感覚に季節が進んだと知らされる。
いま十月、もう奥多摩は黄葉すこし染めだすのだろう、そして一ヵ月経てば懐かしい日が来る。

「…周太、もうじき誕生日だな、」

ふっと微笑んだ声はシャワー砕けて誰も聴かれない。
ただ水音だけが独り響く浴場は自分だけ、それでも皮膚から警戒は始まっている。
この場所に異動してから続く緊迫感はもう馴染んだ、その現実に英二は微笑んだ。

―今日で決まる、俺が自由に動けるかどうか…周太からの疑いも逸らしやすくなる、

『嘘を吐かないでって前も言ったよね、さっきも言ったでしょう?家族に秘密は要らないの、なのに嘘吐いたから』

数日前そんなふう周太に言われてしまった。
もう自分が何をしているか気付いている、それを諌めて止めたい。
そんな意志が黒目がちの瞳に真直ぐで自分の肚まで見透かされそうだった。

「周太…もう少しボンヤリしてくれていて良いのに、」

そっとシャワーから呼びかけて微笑んでしまう。
元来ひとりっこで呑気な周太はいわゆる天然癒し系、のどやかな穏健が明るい。
それでも聡明な視線は気づいてしまう、その眼差しは優しさの繊細に捕まえて自分すら逃げ難い。

―しかも純粋だから誤魔化し難いんだよな、裏表が無くて…発想から俺と逆だ、

自分と逆の視点に立っている、そんな周太だからこそ自分の動きが見えてしまう。
自分が隠してきた狡猾も孤独も幸福も全て周太だけは真直ぐ見つめ受けとめてくれる。
そう認めるたび途惑いながらも嬉しくて真直ぐな純粋が愛しくなる、だから今日も自分は闘う。

そのために昨日、罠を仕掛けた。

罠の主舞台は書庫、そして第七機動隊全てが仕掛け人、そこに今日「あの男」が訪れる。
あの男の息吹を受けた者が繰られてくるか、それとも「書庫」である事を理由に本人も出向くのか?
この可能性を懸けられる舞台として書庫を選んだ、その意図を多分あの男は気づいても正義の傲慢に訪れる。

あの男は自分と同じ独善者、それを法の正義という箱庭に正当化する、そんな虚飾の男に自分は捕まえられない。

「おまえには渡さない…壊してやる、全て、」

水飛沫に微笑んで髪かきあげる、その指先すこし凍えだす。
けれど水を止めて拭えば全身から発熱する、そしてクリアになる頭脳と意識が冷静を克つ。
いま廻りだす血流に鼓動は規則正しい、脈打つ感覚と浴場の空気に時刻を見ながら英二は蛇口を締め、微笑んだ。

「本番だな、」




窓の雲が速い。

ハムエッグきらめかす明滅も速い、そんな食卓はいつもと同じ席に寛がす。
もう常連席になった食堂の窓際、テーブルの誰もオレンジとカーキ色の救助隊服で笑っている。
けれど自分ともう一人だけは白いシャツと濃灰色のネクタイが目立つ、この違いに先輩が笑った。

「やっぱ宮田さんは救助隊服より制服の方が似合うよな、貌からフォーマルが良いよ、」

貌からフォーマルってなに?
そんな質問したくなった前、白皙の笑顔が言ってくれた。

「高木、その貌からフォーマルって正統派とか上品って意味?」
「それだ、浦部ナイスアシスト、」

笑って丼飯を掻きこむ仕草から高木は明るい。
からりとした空気に懐かしくてシャワーに想った記憶ふれる。

―藤岡は元気かな、皆も、

明るい同期の笑顔が先輩の軽妙な貌に映って、奥多摩が浮ぶ。
連なる稜線、碧い渓流、仄暗い森と木洩陽の道、あの場所に初めて立ってから一年が経つ。
山ヤの警察官として生き始めた、その誇りに毎日を仰いだ空は遥かに高く広くて、晴天も曇も雨も大好きになった。

そして何より惹かれたのは雪、真綿に白い虚空から降る静寂は愛しくて、だからこそ雪峰の世界を自分は選んだ。

―また雪山のシーズンだな、あと一ヶ月もしたら谷川岳とか雪だ、

いま風が速い窓、そこに流れる雲の白から銀嶺の夢を見る。
昨冬から歩きだした世界は何より強く自分を惹く、その記憶に今冬も願ってしまう。
谷川岳一ノ倉沢、穂高滝谷、剱岳、そして冬富士と哲人北岳、あの青と白の世界に今年も立てるだろうか?

―今年も登れるのか決めるのも、今日だ、

今日、

今日という日に全てが懸ってしまう。
そう想っても緊迫感は毎日と変わらず落着いている。
この冷徹も毎朝の水浴に保たれ心地良い、そんな想いごと箸運ぶ前で先輩が微笑んだ。

「宮田は冷静だな、ポスター撮りなら普通すこし舞い上がるだろうに?」
「黒木さんでも舞い上がりますか?」

質問を訊き返し笑いかけた先、精悍な瞳が意外そうに考えこむ。
謹厳、そんな言葉が似合う先輩は何て応えるのだろう?
楽しみで見つめた日焼顔はストレートに回答した。

「まず引き受けんな、」

やっぱりそうなんだ?

そんな予想通りに可笑しくて笑ってしまう。
つい口許ほころんだ周りも笑いだして、陽気なテノールが言った。

「宮田の訓練風景ショット、黒木と組ませて撮るツモリなんだけどね、コレ任務だけど断っちゃう?」

上司が放りこんだ爆弾に精悍な瞳が止まる。
途惑いかすかに見せながら、それでも謹厳な貌は口開いた。

「国村さんの指示なら断れません、」
「じゃ、決まりだね、」

唇の端あげて光一はハムエッグへ箸つけた。
端整に箸さばきながら部下たちを見、飄々としたトーン微笑んだ。

「9時に広報が来ます、密着取材でポスター写真撮りながら消防庁で10時に表彰式、で、現場1係からの書庫利用が午前ドッカで来るよ。
このサポートに直近使用者をご指名だからコレも宮田が対応します、それ終わり次第で宮田も訓練入って撮られるから黒木もよろしくね、」

澱みない説明から予定通りなのだと解ってしまう。
きっと黒木のことも想定内、そんな空気に微笑んで英二は湯呑を啜った。




かちり、

施錠した自室に独り、クロゼットの登山ザックを開く。
常備してある救急ケースを出してデスクに据え、中身の確認をする。
七機に異動してから使う回数が減った、それでも毎日のチェックは欠かさない。
道具の調子や精製水の劣化を確かめていく、その指先が器具ケースふれて英二は微笑んだ。

「…晉さん、一緒に行きますか?」

古い写真の俤を想いながらケースひとつずつ手にとり、また納める。
最後に楕円形のケースを握りしめると胸ポケットから守袋を出した。
赤い錦織が窓の光に艶めかす縫い目は丁寧で、その俤に笑いかけた。

「周太、ちょっとごめんな?」

守袋の創り手に笑いかけて紺青色の紐を解く。
そっと開いた中は極小さなカードが見える、この傍に楕円のケース入れて紐を締めた。

きゅっ、

かすかに絹紐が鳴り元通り綴じられる。
小さな赤い袋そっと握りしめてケースの感触が遠い時間を知らす。
掌の中ふれる錦織やわらかい、その中にプラスチックの楕円形は硬い重厚を伝える。

楕円形のケースには晉の遺品が、軍用銃から分解したトリガーひとつ微睡む。

―このトリガーを引かなければ周太も馨さんも、

Walther P38 

ドイツで開発された軍用自動式拳銃を晉は戦時中から持っていた。
今は分解されケース納められた金属片でしかない、けれど半世紀前この引金が運命すら壊した。
この引金を半世紀前に引かなければ?そう詮無い仮定を見つめながら救急具ケースを閉じた時、開錠音に扉が開いた。

「英二、そろそろ行くよ?」

軽やかなテノール笑って扉閉まり、底抜けに明るい目がデスクを見る。
その眼差し躱すようケースを登山ザックへ仕舞うと英二は笑いかけた。

「光一、ノックぐらいしろよ?ここで不意打ちは焦るだろ、」
「ふうん、焦るようなコトしちゃってたワケ?」

軽妙に笑って制服姿が伸びをする。
いつも通り明るい空気は緊張もない、変わらない伸びやかなパートナーに笑いかけた。

「黒木さんと訓練で組ませてくれてありがとな、」
「ふん、今日には最適だろ?」

さらり相槌に微笑んで雪白の指をデスクに伸ばす。
一冊ファイルを引き出し広げてゆく、その涼しい横顔に英二は微笑んだ。

「ああ、第2小隊でいちばんの堅物が証人なのは助かるよ、」






(to be continued)

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