どうして早くこの店に来ることを思いつかなかったのか・・・・・
もう、3ヶ月近くも手頃なゴミ箱を探していたのですが、なかなかないのです。 松山あたりの雑貨屋さんを覗いてみようかなあと思案していたのですが、はたと気づきました。
あの店ならあるかもしれない。
あの店とは、その名も「○○屋商店」。 名前からして昭和30年代の雰囲気を漂わせているお店。
売っているものは、建築資材から、園芸用品、台所用品など、ないものはないくらいの品揃えで、昔で言う「荒物屋さん」、いわば元祖ホームセンターですわ。
嫁いできた頃からありましたが、創業は多分もっともっと昔でしょうね。
若い人はここへは来ませんわねえ。 なにしろ見かけが悪いです。 創業以来掛け替えたことがないと思われるはげかけた看板に、間口の狭い暗い店内。 狭い店の中に、所狭しと積み上げられた商品。 めったに売れない物はほこりをかぶっているし・・・・
お目当てのゴミ箱も、2メートルほどのたないっぱい、天井にとどくところまで占領して積まれてありました。
そして、とうとう見つけました。
旅館の和室に置いてあるような、木製のふたつきのゴミ箱。 蓋はない方がいいんだけどこれしかないから仕方ないです。高いところのを背伸びしてとっていたら、ゴミ箱がなだれ落ちてきそうでした
そして、ゴミ箱を探していたときに見つけた物。
ちょっとゴブラン織りが地味な宝石箱。 これ、なかなかいいんじゃない?
カウンターにはレトロなお店によく似合うレトロな女性、つまりおばあさんがいます。 しっかり者で、一緒にいる若い店員さんが品物の値段をのぞき込んでレジを打とうとしたら
「後で(値段を)言う!」とぴしゃり。 どうも品物を点検してからレジを打ちたいらしいです。 筋は通っているんだけど、あの言い方じゃねえ。
でも、交渉するならこの人よね。
後日・・・・・
ちょっとひらめいたことがあって、わたしは残っていた宝石箱を買い占めることにしました。 ついでにそばにあった卓上ドレッサーも。
「これだけ買うからまけてくれない?」
するとおばあちゃんは
「ちょっとまってよ、聞いてこうわい。」
あら、責任者じゃなかったのか。
連れてきたのは、わたしくらいの年代のおばさんでした。
おばちゃん 「これはちょっとまけれんけど、宝石箱はまけてもええわい。」
おばあちゃん 「なんぼ(いくら)にする?」
おばちゃん 「2個で○○円にしたげんかい(してあげなさい)。」
どうも若いおばさんの方が責任者のようでした。 年格好から推測するに、おばあさんはここの店主のお母さん、若い方は店主の奥さんでしょうか。 おばあさん、 引くところは引く、筋を通すところは通す、単にやかましいだけのおばあさんではないように見えました。
結局宝石箱は、なんと2割5分もまけてくれました。
こんな交渉の成り立つのも、客との古くからのつきあいがあるからこそ。
それにここには、昔の道具、たとえばはがまとか、もちつきの杵とか、農作業用具とか、こじゃれたホームセンターや雑貨屋さんには決して置いてない物があるのです。 お値段もけっこう安いですし、つけもきくし配達もしてくれます。 なかなか重宝な店なんですよ。
最近大型のホームセンターに追われて、同じような古い建材屋さんが店じまいしましたが、 このお店はいつまでもがんばってほしいなあ。
それでゴミ箱はこんなになりました。
「回帰」制作に当たって試作した革を貼りつけました。
それから宝石箱は、布部分をべりっとはがして、クラフトした革を貼りつけました。
宝石箱のデザインは、わたしのオリジナルではなく、先生のデザイン集からいただきました。 このインコのデザイン、大好きなんです。
磨き上げたゴミ箱の表面にペーパーをかけて荒らすとき、ゴブラン織りを剥がすときちくっと心が痛みました。 商品として完成させた物を壊すのですからね。 ごめんなさい、織物は別の形で活かします。
例によって娘二人の辛口チェック
宝石箱はかわいいとほめてくれました。
しかしゴミ箱は・・・・・
「こんなん、部屋に置きた(く)ない。」 う、う~ 洋間には似合わないだろうけどー。
「蓋があったら中にゴミ袋かぶせれんじゃろ。」 いや、それは大丈夫
「美術館巡りもいいけどねえ、たまにはきれいな雑貨屋さんものぞいてみんと~。」
ああ~、あのぅ、 レトロなお店には行ってますけど・・・・。