東京下町の、ある都立高校。
生徒数の減少が原因だと思うが、学校の存続が危ぶまれている。
服飾コースみたいなのが存在する学校という設定なのだろうか。
現役のモデルさんが在籍するクラスに、天才的なデザインの才能をもつ男子生徒が転校してくる。
なまえは美糸と書いて「びーと」。転校生が「ビートとよんでください!」と言った瞬間に、ふつうは教室中引いてしまうだろうが、なにしろイケメンだから。
で、ビートの才能がすぐに明らかになり、現役モデルのミキもいることだし、文化祭のクラス出し物は「ファッションショーをやろう」ということにすぐ決まる。
このモデルさん役が桐谷美玲ちゃんというのは、そのまますぎてちょっとずるい。
でも、自分の原作の映像化に美玲ちゃんクラスのまじモデルさんがキャスティングされるなんて、原作の原田マハさんは喜んだだろうな。
みんなで盛り上がって準備していると、学校の廃校が決まってしまう。
ミキの属するプロダクションが、ビートのデザインをミキデザインとして勝手に売り出してしまう。
なんてことがあって、文化祭はその出し物が中止になる。
しかし、やっぱ自分たちのやりたいことを実現したいと願うメンバーが立ち上がって、協力者も得ながら、学校の校庭にランウェイ(ファッションショーのあの花道みたいな所を、そう言うんですね)をつくって、ファッションショーを実現するというお話。
つっこみどころは満載です。
在学している生徒を卒業させない形の廃校が、年度の途中に決まることはまずない。
ショーをやり直そうとして押さえた会場が、プロダクションの圧力で借りられなくなることも普通はない。
ジャニーズ事務所さんクラスならひょっとして可能かもしれないけど。
ていうか、最初から学校でやろうって言えばよかったのだ。
そしてメインのファッションショーの場面。
地元の商店街の人々に手伝ってもらって手作りの舞台をつくったという設定だ。
ショーが始まる。
校舎を全部つかった照明、巨大な音響設備。
いったいどんだけお金かかってるの。
一気に手作り感なくなるでしょ。
でも、興ざめではない。
そんな設定おかしいだろと思いながら、音楽が流れて美玲ちゃんが歩いてくると、ドキドキする。
クラスの高校生、ワルたちの団結も、超まじめキャラの女の子が変身するところも、ものすごくかっこいい。
このイベントにいたるまでに若者たちの紆余曲折も楽しい。
何十年前の自分も同じだったなあと思えたから。
ショーを成功させて歓声をあげる若者たちを見ながら、ああ、俺らも昔ああやって遊ばせてもらったと思い出す。
昔は気づかなかったけど、大人の人があれこれと土俵をつくってくれて、その中で十分に遊ばせてもらった。
時に悩み、苦しみ、ぶつかり、でもそれを乗り越えて、一つのことをやりとげる、そんな経験をさせてもらった。
部活も行事も、もちろん勉強も同じだ。
若者たちに、こうやって思い切りやってもらう場をつくってあげるのが、大人の仕事だ。
できることなら、みんなにこんな思いをさせてあげたいものだ。やっぱ子供は国の宝だから。
昔の大人がそうであったように、それを恩に着せたりしなくていい。
昔の若者がそうであったように、若者はそんなことに気づかないという独尊ぶりをもってればいい。