学年だより「エア・ラーメン」
「アツい」とは、具体的にどういうことか――。諦めないこと、粘ること、妥協しないこと、勇気をもつこと、こだわること、リアクションが大きいこと … 。
いま日本でアツい男と言われる松岡修造氏を特集した「金スマ」をみながら、その本質は「対象に対する思いの強さ」ではないかと感じた。
そして、その「強い思い」は、対象に対する「徹底した準備」という形に具現化する。
食べる物にもアツい松岡氏は、自宅で天ぷらを食べるときも、一品ずつ揚げたてをもってきてもらう。食卓で箸をかまえてそれを待ち、自分の皿に置かれた瞬間に天つゆにつけて食べる。
マックでさえ気を抜かない。まずレジ近くの席をとる。ポテトが揚がる瞬間を計算し、そのタイミングで注文する。ラーメンを食べるときも、こうふるまう。
~ まず複式呼吸を何度か繰り返します。次に空気を吸い込んだ瞬間、食べ物が入ってくる胃を意識しながら「ハッハッ、ハッハッ」と声を出して息を吐き出します。そうすると、胃の中がおいしく食べるための最高の状態になります。
ラーメンの食べ方も独特だといわれます。食べる前から割り箸を握って、麺をすする動きを繰り返すエア・ラーメンをしています。 (松岡修造『人生を変える修造思考』アスコム)
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アツいにもほどがある。みなさんも、今日学食でチャレンジしてみたらどうだろう。
想像したら、笑ってしまう人もいるかもしれない。
なぜ、そこまでやらないといけないの? ネタじゃないの? と思った人もいるかもしれない。
この本を一冊読み通してみたなら、多分笑えなくなるはずだ。
そして、自分も何かやらなきゃという気持ちがわいてくる可能性もある。
ここまでやったら、修造氏は食べる前に勝っていると思わないだろうか。
「おいしく食べることは僕にとっての勝負です」と修造氏は言う。
その店との勝負ではない。自分が、いかにいいコンディションで食べることができるか、いかにいい食事ができるかの勝負をしているのだ。
一週間後にフランス料理を食べる機会があったとしたら、その日に向けて体調を整える。
当日は、朝食、昼食には脂っこいものをひかえてお腹に負担をかけないようにしておく。
一食にかける準備さえ、ここまで徹底する。
況わんやテニスの試合において、修造氏がどれだけの準備をしてきたかは、想像するまでもない。
翻って、自分はどうだろう。
エア・ラーメンまでせよとは言わないが、たとえば授業を受けるにあたって、せめて割り箸を割って待っているくらいは出来るのではないか。
授業が始まって初めて「おれは何を食べようとしてるんだっけ?」という人があまりに多いように見える。それでは、おいしく味わえない。自分の実にならない。
試合がはじまった瞬間に、勝つか負けるかはすでに決まっているのだ。