埼玉栄高校さんの演奏を定演会場で聴くのは久しぶりだ。
ソニックシティ大ホールでの昼夜二回公演は、チケット完売。
伊奈学さんもそうだけど、プロの吹奏楽団ではありえない集客力に驚く。
「春の道を歩こう」を演奏する昼の部をくことは叶わなかったが、夜の部では、課題曲は4と3を聴くことができた。
「プロヴァンスの風」の演奏は、これまでに聴いたなかで最高のものだった。
たしかに、ナニワウインド、東京佼成というプロ奏者のそれが上手かったことは認める。
しかし(「ゆえに」かな)、逆に楽譜の物足りない部分も、そのままくっきりと演奏されてしまっていた。
課題曲は、時間と市場のなかで淘汰されて残っている他の楽曲とは異なる。
海千山千の作曲家がものにし、「売り物」として成立した作品に比べたなら、その完成度は劣っている場合もある。
それを補ってあまりあるのが、課題曲を演奏する子供達の努力の積み重ねだ。
プロに比べて技術的には劣るはずの高校生の演奏が、観客をより納得させるものにするのは、その時間と思いの総体だ。
栄さんクラスになると、バンドのDNAとして、それが備わっているのかと思わせられるような演奏だった。
課題曲3「秘儀」もしかり。個人的には、多くの「吹奏楽通」が賞賛するほどの曲とは思ってなかった。「ま、いろものだよね」と。
しかし、ちがった。一つの旋律やリズムが繰り返されることで生まれる陶酔感、取り憑かれるように祭りが盛り上がっていく土俗民のトランス状態が、こんなに表現されるとは。
本ベルがなり、校歌演奏と校長挨拶が始まったときは帰ろうかと思ったけど、この課題曲を聴けてよかった。