水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「 「間」の感覚 」の授業2  第一段落の読解

2015年10月15日 | 国語のお勉強(評論)

「 「間」の感覚 」の授業 2  第一段落の読解


第一段落〈 1~5段落 〉 日本人と西欧人の自然感情の違い


1 住居の構造や空間構成に見られる日本とヨーロッパの違いは、住まい方、すなわち日常の生活様式や行動規範にもそのまま反映している。興味深い例の一つとして、自然に対する接し方の相違をあげることができるであろう。


日本 ←→ ヨーロッパ

 住居の構造・空間構成の違い
     ∥
 生活様式や行動規範(の違い)
     ↓
  自然に対する接し方の相違


2 〈 日本人は自然の美しさを愛する 〉民族としてよく知られているが、〈 西欧世界においてもたとえば華麗な花の美を愛好する 〉ことは、恋人に花束を贈ったり、婚姻、葬送の儀礼の場を花で飾ったりする習慣が一般的であることから明らかである。日常生活においても、住居の雰囲気を盛り上げるために、人々はさまざまの花を利用した。十七世紀のオランダでチューリップの栽培が異常なまでの人気を集めたのは、投機という動機があったにせよ、花の美しさに対する愛好が広まっていたことを物語っている。だが、〈 そこ 〉で愛好される花々は、いずれも自然の環境から切り離された切り花である。外部から遮断された室内で花を鑑賞するためにはそうするよりほかにしかたがないのは当然だが、日本では年中行事となっている春の花見、秋の紅葉狩りのように、自然の中に出かけていってその美しさを楽しむという習慣は見られない。〈 そのこと 〉は、美術作品の中にも明瞭に見てとれる。


Q2 「日本人は自然の美しさを愛する」とあるが、その具体的行動例を二つ抜き出して記せ。
A2 春の花見 秋の紅葉狩り 

Q3 「西欧世界においてもたとえば華麗な花の美を愛好する」について
   a 西洋で愛好される花はどのような花か。20字以内で抜き出せ。
   b 西洋人はその花をどのように鑑賞するのか。20字以内で抜き出せ。
A3a 自然の環境から切り離された切り花
   b 外部から遮断された室内で花を鑑賞する

Q4 「そこ」とはどこか。10字以内で記せ。
A4 西欧世界の日常生活

Q5 「そのこと」とは何か。25字以内で記せ。
A5 西欧人が自然の中の花を楽しむ習慣を持たないこと。(24字)


生花への接し方の違い

日本 … 自然の中に出かけていってその美しさを楽しむ(a1)
          花見 紅葉狩り
  ↑
  ↓
西欧 … 外部から遮断された室内で花を鑑賞する(b1)
     花束 切り花


3 西欧の絵画史において静物画というジャンルが明確な形で登場するのは、いち早く市民社会を成立させた十七世紀のオランダにおいてであるが、その〈 静物画 〉の中でも花の絵はとくに好まれ、もっぱら花ばかり描く専門の画家が多く輩出されたほどである。市民たちは、その描かれた花を壁にかけて生活を豊かに飾り立てたのである。同じころ、日本においても、琳派の画家たちが屏風や襖に華麗な〈 草花図 〉を描き出していた。多彩華麗な花の絵で生活空間を飾るという点では、両者全く同じである。しかしオランダの花の絵は、例外なしに花瓶に生けられたものである。それに対して、琳派の草花図は、池の中に咲き誇る燕子花や生け垣にまとわりつく朝顔、あるいは雨に打たれる百合などのように、いずれも自然の中の花である。現実の世界とは違って、絵の上でならどんな状態の花も描けるはずなのに、西欧と日本ではこれだけ際立った対照を見せるということは、〈 自然感情の違い 〉を明白に示すものと言ってよいであろう。


Q6 「静物画」に描かれる花はどのようなものか。10字で抜き出せ。
A6 花瓶に生けられたもの

Q7 「草花図」に描かれるのはどのような花か。6字で抜き出せ。
A7 自然の中の花

Q8 「自然感情の違い」とほぼ同じ内容を表す部分を12字で抜き出せ。
A8 自然に対する接し方の相違


絵画の中の花の違い

 オランダの花の絵 … 花瓶に生けられた花(b2)
  ↑
  ↓
 琳派の草花図 … 自然の中の花(a2)
          ↓
     自然感情の違い
     ∥
     自然に対する接し方の違い


4 十七世紀のオランダにおいては、新しいジャンルとして都市風景も数多く描かれた。フェルメールの名作「デルフト眺望」のような町全体の眺めを描いたものから、著名な教会堂の外観や内部、あるいは大勢の人々の集まる市場、広場などの情景である。〈 この傾向 〉は、ヨーロッパの他の諸国にも広まり、カナレットやグァルディのベネチア風景のように、観光客に人気のある都市の景観を描き出した多くの作品が生まれた。それらは、市民たちに愛好されたと同時に、ちょうど今日の名所絵はがきのように、旅行者たちの土産物として広く流通した。描かれる主題は、これも現在の絵はがきと同じく、宮殿、教会堂、記念碑などの人工のモニュメントである。

5 ところが同じように観光土産として大量に作られた広重の『名所江戸百景』のシリーズを見てみると、〈 建造物は主役としてはほとんど登場していない 〉。描き出されるのは、亀戸の梅屋敷や藤棚、堀切の花菖蒲、千駄木の桜、その他もっぱら自然の情景である。当時すでに百万都市であった江戸においても、人々の目は何よりも自然に向けられていたのである。


Q9「この傾向」とは何を指すのか。30字以内で記せ。
A9 オランダで都市風景が数多く描かれるようになったこと。

Q10 「建造物は主役としてはほとんど登場していない」とあるが、その理由にあたる箇所を25字以内で抜き出せ。
A10 人々の目は何よりも自然に向けられていたのである

  ※ ~のだ。~のである。 … 何らかの事情・理由を表す文


風景画のちがい

 フェルメールらの都市風景画 … 人工のモニュメント(b3)
  ↑
  ↓
 広重の『名所江戸百景』 … 自然の情景(a3)


Q11「自然感情の違い」(4段落)とあるが、どのように違うのか。60字以内で説明せよ。

   自然感情の違い = 自然に対する接し方の違い

   どうちがうのか … a1 ←→ b1
                             a2 ←→ b2  → 一般化する A ←→ B
                             a3 ←→ b3

A11 日本人は、生活と一体化した自然そのものを楽しもうとするが、
     西欧人は、自然に人為を加え一定の距離を置いて接しようとする。

コメント
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