水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「 「間」の感覚 」の授業 4  第3段落の読解

2015年10月20日 | 国語のお勉強(評論)

 

第三段落〈 10~14段落 〉 内と外の区別

10 ところが、はなはだ〈 興味深い 〉ことに、このように内部と外部が連続している空間の中に住みながら、それにもかかわらず――というよりむしろ、それであるからこそ――日本人は住まい方において、内と外とを厳しく区別するという行動様式を示す。最もはっきりしたその現れは、家の中に入るときには靴(または下駄でも草履でも同じことだが)を脱ぐという習慣である。今日のように鉄筋コンクリートのマンションにいすとテーブルの生活という洋式を採用しているところでも、まずほとんどの日本人は〈 この風習 〉を守り続けているであろう。もちろん、西欧社会でも、家に帰れば内履きに履き替えるということはよくあるが、それは私的な環境でくつろぐためであって、たとえばお客を迎えるときはきちんと靴を履くし、客も靴のまま家の中に入って少しも怪しまない。だが、日本ではお客に対しても靴を脱ぐことを当然のこととして要求するので、慣れない外国人は当惑するということになる。空間構造はつながっているように見えながら、行動様式では内と外は明確に区別されているのである。
11 〈 このこと 〉は、間仕切りのあいまいな家の中においても同じである。お客に対して、靴の代わりに室内用のスリッパを提供するというのは、今ではごく普通に行われている。だがそのスリッパも、板の間や廊下ならよいが、畳の座敷に上がるときは再び脱がされる。というよりも、普通の日本人なら、スリッパのまま畳の部屋に入ることには、大きな抵抗感があるであろう。あるいは、たいていの家では、便所にはまた別の専用のスリッパがあって、そこでまた履き替えるということになる。日本人にとっては、それはごく当たり前のことだが、西洋人には〈 そのような感覚 〉がないから、便所のスリッパのまま畳の部屋に入り込んで主人を慌てさせたりするのである。

Q17 「興味深い」とあるが何がか。50字以内で記せ。
A17 日本人が、内部と外部が連続している空間に住みながら、内と外とを厳しく区別する行動様式をもっている点。

Q18 「この風習」とは何か。15字以内で記せ。
A18 家の中に入るときに靴を脱ぐ習慣

Q19 「このこと」とは何か。30字以内で記せ。
A19 日本人が内と外とを厳しく区別する行動様式をもっていること。

Q20 「そのような感覚」とは何か。20字以内で記せ。
A20  スリッパのまま畳の部屋に入る抵抗感。


 具 家の中に入るときには靴を脱ぐという習慣
      ∥
 具 室内用のスリッパ  便所のスリッパ
      ∥
 抽 行動様式では内と外は明確に区別されている


12 このような家の内と外、部屋の内と外の区別は、物理的というよりもむしろ心理的なものである。つまり〈 それ 〉は、意識の問題であり、価値観の問題である。
13 どの社会にも、聖なる空間を大切にする習慣があって、そのために立派な教会堂や荘厳な神社が建てられる。だが西欧の教会建築は壁によって内外の区別がはっきりしており、壁の内部は聖なる場所で、壁の外は俗世間ということが形の上でも明確だが、日本の神社で聖なる空間を示すものは、物理的には境界として何の役にも立たない鳥居である。つまり一歩鳥居をくぐれば神の空間であるというのは、もっぱら我々の意識の問題なのである。
14 〈 似たような例 〉として、お寺や日本式料亭の庭の飛び石の上に、時に、十文字に縄をかけた小さな石が置かれていることがある。これは関守石と呼ばれるもので、ここから先は立ち入り禁止というしるしである。だがこれも、その気になれば簡単にまたいでいけるもので、物理的には何の障害にもならない。関守石の存在によって空間が区別されるのは、我々の意識の中においてである。

Q21 「それ」とは何か。
A21 家の内と外、部屋の内と外の区別

 
 現象  家の内と外、部屋の内と外の区別
        ∥
 本質  意識の問題であり、価値観の問題 … 心理的区別


Q22 「似たような例」とあるが、どういう点が似ているのか。40字以内で記せ。
A22 物理的に何の障害にもならないものが境界を示すものとして用いられている点。


〈聖なる空間について〉

 西欧の教会 壁 … 壁の内部は聖なる場所で、壁の外は俗世間 … 物理的境界
   ↑
   ↓
 日本の神社 鳥居 … 鳥居をくぐれば神の空間 … 意識上の境界


Q23 日本人にとって「鳥居」とはどのようなものか。
A23(a)意識の中において神の空間と俗世間とを隔てる境界の役割を果たすもの。(33字)
A23(b)神の領域への境界であることを象徴的に表し、
     日本人の意識において、聖俗の区別を生じさせる役割を担うもの。(50字)

☆ 「水の東西」で学んだ「象徴」という言葉は、こういう時につかえますね。
     象徴  …  抽象概念 → 具体物  … 感覚的な理解


Q24 問題(ジャジャン)。京都の街でのお話です。あるお屋敷で、自宅の塀に、いつも粗相(立ち小便)をされるスポットがありました。「しないでほしい」という張り紙をしても効果はありませんでしたが、思い立ってある方法をとったら、いっさいなくなったそうです。さて、そのお屋敷の主人はどんな方法を用いたのでしょうか。フリップに書いてください。では、全員フリップアップ。
A24 正解は … 。「鳥居を立てる」です。正解の○○くんに拍手。おめでとう。
 そうなんですね、小さな鳥居を、スポットとなっている塀の前に立てたところ、粗相をする不心得者がいなくなりました。京都の街では、電柱とか、駅の壁とかいろんなところに、小さな鳥居が立てられたり、鳥居のシールが貼られたりしています。最近は、ゴミの不法投棄が目立つ場所にも、この小鳥居が立てられることがあるそうです。

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クロエの流儀(2)

2015年10月20日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「クロエの流儀(2)」


 試験おつかれさまでした!
 試験一週間前になり、部活が休みになった日に考えたことを思い出してみてほしい。
 一学期に今一歩だった○○は今回しっかり挽回しておこうとか、○○は単位がとれるかどうかの心配がないようにしようとか、○○の苦手意識を克服しておこうとか、様々な目標を立てたはずだ。
 毎日5時間は勉強しよう、数学だけは完全に理解しようという目標もあったかもしれない。
 今こうして試験が終わってみて、そのときの決意と現状にどれほどの差があるだろう。
 思ったほどにはやれなかった、科目によっては一学期以上にさぼってしまった、との感じている人もいるのではないかと、みなさんの様子を見てて思う。
 答案がかえってくる。案の上の結果を目にしながら「次こそはちゃんとやろう」と思う一方で、言い訳を探している。
 とある都立高校の教室でも、同じような会話がなされていた。
 「お前テスト何点だった?」「お前よりいいくらい」
 「は? 見せてみろよ。うわっ、ヤバくね?」「赤点じゃなきゃいいんだよ」
 「はは、ハードル低いなー」
 「オレ真剣に野球やってんだよ。家でも勉強より素振り筋トレやってさ。そもそも、学校に勉強  って社会に出て使えねーんだろ? 意味わかんねーし! こんなの真面目にやったってさ、将  来クイズ王にしかなれねーだろ。 とにかく! オレは野球が一番で、他に時間はとられたく  ねーんだよ!」
 そこにクロエが話に割って入る。


 ~ 「大事な野球が、言い訳とならぬようにな。勉強、友人、家族、時にそれを退ける「野球のため」と言うは容易い。だが、安易に使うと、お前の大事な野球を汚すぞ。いずれは、ほとんどの者が、仕事や家庭や育児を両立させていく。学生の内に、勉強と部活を両立させる、それくらいの器は、育てといて、損はないと思うぞ」 (今井大輔『クロエの流儀』ニチブンコミック) ~


 体調を優先した、家の用事があった、どうしても気になることがあった … 、それらはみな仕方ないことだったと、私達は実に言い訳を考えるのがうまい。
 日常的にやってなかったのだから、試験前だけやっても意味ないとか。
 しかし、それが言い訳にすぎないことは、自分自身が一番知っている。
 すべてが万全の状態で物事に臨めることなど、ふつうはないのだ。
 何事も自分の責任と位置づけるところからしか、器を大きくする手立てはない。
 まず、今日のうちに今後やるべきことを紙に書き出しておこう。

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