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ファミリー・ポートレート 桜庭一樹
作者の最新作である本書は、第一部「ファミリーポートレート」第2部「セルフポートレート」という2部構成になっている。内容も時間軸も連続しているのだが、後半を読み進めるうちに別の作品のようになっていく。第一部は直木賞受賞の「私の男」と類似性の高い内容だ。前作が「男女の親子」本作が「同性の親子」という違いはあるものの、極めて特殊な親子関係が描かれている。そして後半の第2部では、内容が徐々に内省的になっていき、終盤になるとほとんど自伝か日記のようになっていく。ただし、第一部と連続したフィクションであり、その点で「私小説」とは全く趣は違う。少しずつ作風・想定読者を変化させ続けている作者だが、本作のなかでまた変化しているように見えるし、直木賞を受賞した路線に止まらずさらにどのように進化していこうかと試行錯誤しているようにも見える。個人的には、「赤朽葉家…」とか「青年のための…」あたりのライト・ノベル的な要素を残した作品に近いところ逆戻りして欲しいとも思うのだが、そうした期待とこの作家の思いは全く別のようだ。陳腐な言い方だが、作者は現代人の心の中の「荒野」を彷徨っている。だから作者にとってはどんな内容でも作風でもかまわないのかも知れない。以前作者の作品を読んで「大きなリスクを背負って書いている」と感じたことを思い出したが、この作品は、その点からもそのリスクの内容、リスクの大きさが良く判る。大変危ない領域に踏み込んでしまっているようにも思えるのが気になる。これまでの軌跡は良く判った。これからどこに向かって動き出すのか期待と不安を持って見守りたい。(「ファミリー・ポートレート」桜庭一樹、講談社)
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