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号泣する準備はできていた 江國香織

かなり前に読もうと思っていたがこれまでなかなか読めなかった本書。ようやく手にとってみた。登場人物の生活の断面を切り取ったような短編が並んでいる。表面的になにげない日常の風景の裏に少し緊迫した状況が隠されているという設定の話が多いが、いずれもそれほど特殊なものではなく、このくらいの状況はどこにでもあるだろうという範囲のものだ。登場人物の心理や思いが的確な文章でつづられているのをみると、自分でもうまく説明できない病状にお医者さんがそれらしい病名をつけてくれてほっとする、そんな感じを受ける小説だ。主に女性の立場から描かれており、よく判らない部分があるので、あまりこうした物ばかり読む気にはなれないが、読んだ後に自分に何が残るかをしばし考え込むような小説も時々は良いだろうという気がした。(「号泣する準備はできていた」江國香織、新潮文庫)
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