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渡る世間は数字ばかり 向井万起夫

作者の本は本書で2冊目。いろいろな数字にまつわる著者の思いが綴られた読みやすいエッセイで、短い文章の中にいくつも「へぇ~」という新鮮な驚きあり、独特のユーモアありで大変面白い。最初のうちは、「そこまでしなくても良いのに」と思うほどの軽い口調が少し気になってしまうが、読み慣れてくるとそれも気にならなくなり、内容の面白さに十分浸ることが出来るようになる。数字にまつわる話といっても、「数字は脇役」という章も多いが、内容にバラエティが感じられて却って好ましい。「まず数字ありき」でなければ、どんな話であれ何らかの数字は出てくるものだし、その辺の「緩さ」も、肩肘張らずに読めるという利点になっているような気がする。全部の章ではないが、とにかく随所に著者の物の見方のユニークさが感じられて面白い。
 一方、本書を読んでいると、著者の「大リーグ」好きがよく伝わってくる。私が常日頃から感じている「大リーグとは記録のスポーツだ」というアメリカ社会における野球というものの本質が鋭く語られているのには驚いた。また、バリー・ボンズの500本塁打500盗塁、ジョー・ディマジオの56試合連続試合安打、イチローの年間262安打という3つの記録のすごさが熱く語られるところは、私がいろいろサインやコレクティブルを集めていて強く感じたことと全く一緒だ。この著者の洞察力はやはり只者ではないと感じた。(「渡る世間は数字ばかり」向井万起夫、講談社文庫)
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